このところ,各地で模型製作向きの小編成車輛が続々誕生している.本誌でも上信電鉄7000系やJR東日本のハイブリッド車EV-E301系をMODELERS FILEで詳しく紹介したが,富士急行にも,新しい“フジサン特急”として3輛編成の電車が落成し,一昨日の午後,お披露目会が催された.
これは元小田急RSEこと20000形で,“あさぎり”がMSEこと60000形に置き替えられた結果,2編成のうち1編成を富士急行に譲渡したものである.
富士急行の“フジサン特急”は,元JR東日本の“パノラマエクスプレスアルプス”が2編成あったのだが,そのうちの1編成を,この元小田急の電車に置き替
えたわけである.RSEも2編成なので,両方とも一新されるのかと思っていたのだけれど,実際には第2編成が1本だけの譲渡で,第1編成は小田急で保存さ
れた.
だから,“フジサン特急”は,当分の間,2種類の編成が併存することになる.趣味的にはとっても楽しいことではあるのだが.
構造的な部分の改造は日本車両で行ない,外部塗装仕上げと内装は富士急行技術センターで施工している.
これまでの“フジサン特急”と新しい“フジサン特急”の顔合わせ…といっても,置き替えられるわけではないから,もっとまともな出会い風景を,これからも楽しむことができる.
さ
て,本来の7輛編成のうち,どの部分を使って3輛にしたのかといえば,まずは両先頭車.幸い両方とも電動車だったから,それほど手間は掛らない.問題は中
間車.本来なら2階建車を使えばセールスポイントになったのだろうが,片側の貫通路の高さが通常の平屋の車とは異なるのだから,それを揃えるだけでも大改
造.ということで,パンタグラフ付きの付随車が選ばれた.小田急の形式ではサハ20050形である.
この3輛を使って,富士山方から大月及び河口湖に向かってクモロ8001+サロ8101+クモロ8051という編成を仕立てた.
まずクモロ8001は,運転室直後を展望スペースとし,さらに隣接の客室は腰掛けの配置を1/2人として“ゆったり感”を演出している.この1人掛け腰掛
けはRSEの2階建車から階下の普通車用を活用したものである.その後ろには4名分二組のセミコンパートメントを設けている.定員は60名(内座席45
名).
2輛目のサロ8100は,大月・河口湖方約1/3の高床を撤去して側扉からステップレスで出入りすることができるように改造された.富士
山に向かって左側には向い合わせ3名分の座席を設置,通路の反対側には車椅子スペースを設けている.腰かけ側の側窓は下辺を下げて窓面積を拡大する改造を
実施している.そして,この下げた床部分にあった空調装置の代わりに,2階建車用の空調装置を屋根上のパンタグラフがあった位置に新設した.定員は72名
(内座席55名).
3輛目のクモロ8051は,小田急時代の面影をもっとも色濃く残している.定員73名(内座席60名).
パンタグラフは富士急仕様のFPS33Fに取り替え.床下では抑速ブレーキ用として抵抗器を増設したのが目を惹く.
車体外部色は先代2000系のイメージを踏襲したイラスト.なお車体側面に車号表記はなく,妻板にひっそりと記されている.
富士山方から見た編成.手前が展望スペースを持つクモロ8001.2輛目はモロ8101,3輛目がクモロ8051.空気圧縮機と補助電源装置(SIV)は8001と8101に,パンタグラフは両先頭車に搭載.
展望席.ブルーリボン賞のプレートは健在.仕切り窓右手に模擬運転台が見える.
展望席の反対側.指定席とセミコンパートメント.1人掛けの腰掛けは種車の2階建車階下席からの転用.2階建車は解体されたものの,このほかにも空調装置など活用されている部分は少なくない.
8101の大月・河口湖方は床が下げられて車椅子スペースの向かいに3名分の腰掛けが設けられた.側扉も新設で,この部分のみ引戸.側窓は腰掛側だけ下辺が下げられた.構造的にもっとも大きく手が入れられた部分である.
この8000系“フジサン特急”は,明後日12日に出発式を行ない,営業運転が始まる.その後は平日2往復,土休日に4往復の運転が予定されているが,7月26日以降はN'EXことE259系の乗り入れが始まるので3往復となる.
公開当日は天候が心配されたが,幸いにして晴れたり曇ったりの撮影日和.技術センター(車庫及び工場)と駅の間を2往復もさせ,できるだけ編成を綺麗に撮れるよう配慮してくださるなど大サービスだった.ありがたいことである.