東京の芝浦工業大学(芝浦工大…正確には芝浦工業大學)といえば,数多くの鉄道技術者や趣味人を輩出している学校として,ここの読者の皆さんにもおなじみの学校名だと思う.
 とれいん誌上でも,JAMコンベンションや鉄道模型コンテストで附属中学高等学校鉄道研究部の活躍振りをご記憶の方も多いだろう.最近では昨年10月号に掲載されている.

さてその芝浦工大附属中学高等学校だが,この春に豊洲の地へ移転した.
 それを機に開設されたのが“しばうら鉄道工学ギャラリー”というわけである.
 この附属中学高等学校は,歴史を繙けば大正11/1922年に東京駅に隣接する永楽町に設立された東京鐵道中学にたどり着く.大正13/1924年に池袋へ移転,昭和17/1942年に学校法人として独立,昭和57/1982年に板橋区志村へ移転という道を辿る.だから鉄道工学ギャラリーの設置は極めて自然なことなのである.
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新校舎の正面玄関.面している道の頭上にはゆりかもめの高架橋がある.そしてその下の道路には,かつて東京都港湾局専用線の線路が敷かれていた.

東京都港湾局の線路は芝浦方と豊洲方の2地区に分かれていて,こちらは越中島からの豊洲・晴海地区.越中島までの国鉄線については,レイルのNo.83で小野英晴さんが語ってくださっているので,新たに興味をもたれた方は,ぜひご覧いただきたい.

ギャラリーは正面玄関を入って右手に設けられている.入り口にはゆりかもめ線の駅名標を模したデザインの表札が掲げられている.
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綺麗なケースの中に展示品が収められている.出入口には改札のラッチも.その上が駅名標風の表札.画面左手にはカフェテリアと購買部があり,撮影者の背面には100台近くものPCを備えるコンピュータ室が.残念ながらギャラリーの来訪者は立ち入ることができないエリアだが.

収蔵されているのは学校あるいは鉄道研究部部員のコレクションのほか,国鉄技師長だった星 晃さんや,やはり国鉄の技術者だった関 長臣さんが所蔵しておられた車輛関係の図書や資料類.そして,日本文学研究者で東京大学名誉教授だった築島 裕さんの乗車券コレクション,ベテラン趣味人だった三谷烈弌さんの写真類,岩手・宮城内陸地震で遭難してしまった岸由一郎さんの私鉄関連資料類,方向幕などの製作会社である羽深製作所の歴史的製品がある.
 さらに,とれいんの古い読者なら忘れることができないモデラーである菊地文夫,正雄父子の16番作品群も一角を飾っている.
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星 晃さんのコレクションの一部.画面左下に見える,池袋と御茶ノ水の間の乗車票は,昭和17/1942年発行.星さんが25歳のときのものである.あまりの綺麗さに“17”という年がどの元号なのか西暦なのか,すぐには解らなかった.
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古くからのモデラーには忘れられない,菊地文夫さんと菊地正雄さんの作品群.タバコのパッケージで作った貨車も収蔵品に含まれているものの,劣化が著しくて展示には耐えないのだそうだ.ちょっと残念.
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ギャラリー奥から入り口方面を望む.中央に敷かれた線路には,特製の移動式書架が載る.必要に応じて入換作業ができるように転車台もちゃんと用意されている.ちなみにゲージは実測値で325mm,

線路に載った移動式書架には鉄道趣味雑誌や書籍が収納されていて,とれいん誌も閲覧可能.当面は1990年代のバックナンバーが用意されていた.書架は各朱電車の塗り分けなどが再現されていて,とれいん誌は湘南色.
 画面左にみえる腰掛は新潟にいた485系R編成普通車用と新潟地区の115系用.道路に面しているのでゆりかもめを見上げることができるが,港湾局の線路が残っていれば…というのは妄想が過ぎる.
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Nゲージレイアウトも,鉄道研究部部員の手によって建設中.コントローラーは,全体はやや縮小されているものの,各パーツは本物の201系用を再用した逸品.

さて,貴重な文献類の多くは図書管内に収蔵されていて,今のところそれは学校関係者と江東区民に限定しての公開となっている.いささか残念.しかし,なにはともあれ,廃線跡ハイクを兼ねて訪問してみるのは,意義深いことと思う.

一般公開は5月21日から.当日は10時から,大坪隆明校長からの設立趣意説明や,レイルで国鉄客車公式写真解説で筆を揮ってくださっている藤田吾郎教授からのギャラリー詳細解説,5インチゲージ乗車体験,201系風運転台によるNゲージ操作体験などが予定されている.

その後は,下記の通りの要領で公開されることになっている.

施設情報:
所 在 地:〒135-8139 東京都江東区豊洲6-2-7
開館時間:火曜日から土曜日 10時から12時半及び13時半から16時.ただし最終受付は15時半
休 館 日:毎週日曜日・月曜日・祝日 ※学校行事などの都合により臨時休館もあり 詳しくはWEBの開館カレンダーでご確認ください
入 場 料:無料
電話番号:03-3520-8516
WEB:http://www.shibaura-rtg.com

※2017.05.12:誤字修正

※2017.05.24追記:本文で“
劣化が著しくて展示には耐えない”と記した,タバコのパッケージで作った貨車が,整備の上,6月末までの期間限定ながらも展示されることになったと,芝浦工業大学のご担当から案内を頂いたので,追記としてご案内する次第.