京浜急行電鉄…最近は京急電鉄と呼ぶそうだが…のデハ230形といえば,昭和一桁のころに誕生し,京浜間から三浦半島を駆けた,電車ファンの記憶に残る名車のひとつ.大阪生まれの僕も,子供のころから大きな窓と浅い屋根という軽快なスタイルのこの電車の存在を認識していて,強く憧れたものである.
 昭和53/1978年の現役引退後は,関水金属本社社屋前のデハ268のほか,数ヵ所で保存された.それらのうちの1輛が,埼玉県川口市の児童文化センターに引き取られたデハ236.大切にされていたものの,同センターの移転に伴って管理者不在状態となり,一時は解体撤去のための予算が計上されるなど,行く末が案じられていたものである.
 事態が急展開を見せたのは昨年のこと.京浜急行電鉄へ里帰りすることになったのである.同社では既に久里浜工場…京急ファインテック久里浜事業所敷地内に,湘南電鉄開業時の姿に復元したデハ248…本来ならデ18となるべきところデ1に改番…を保有しているので,どのような扱いとなるのか…….と思ったら,平成31/2019年秋に新築移転する京浜急行電鉄本社社屋内に展示するのだそうだ.
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創立80周年記念事業のひとつとして,久里浜工場…京急ファインテック久里浜事業所で京浜電鉄デ51とともに大切に保存されている,湘南電鉄デ1形.現車の標記は1だが,実際には元デ18であるデハ248.平成24/2012-3-18


里帰りに向けての実作業は今週月曜日,22日の朝9時から始まった.80トンクレーン2基での吊り上げ,トレーラーへの積み込み作業は極めて順調に進み,2時間弱でほぼ完了した.
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手際よい作業の模様.背後にチラリと見えるのは,一緒に保存されている9687.大宮機関区に配置されて長らく関東地区の蒸機ファンにおなじみだった機関車である.


保存場所からトレーラーまで距離があって,しかもその間にクレーン車が陣取っているという体制.そのため,車体を吊り上げてから90度向きを変え,元に戻して…という作業に感心していたら,担当の人からは“いえ,そうでもないですよ”と言われて,ちょっと拍子抜け.
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車体吊りという作業のなにが興味深いかといって,モデラーにはとにかく台枠を下から覗くことができる貴重なチャンスということ.連結器の腕がとにかく長いこと,そして首振り角度を確保するために台枠の梁が大きな三角形上に組まれていたことが,今回のさまざまな発見のうちのひとつ.インターバン的鉄道の電車の特徴のひとつであるわけだが.

この日の深夜から翌日にかけて,まずは国道298号線,17号線,笹目通り,環状八号線を経由して,中継地である川崎市内へ.そしてきのう24日午前1時過ぎには,国道357号線,横浜ベイブリッジ,国道16号線を経由して横浜市内の総合車両製作所横浜事業所https://www.j-trec.co.jp/へ無事に到着した.

総合車両製作所では,やはり午前9時に作業を開始し,前々日と同様,あっけないほどに順調な作業の末,めでたくトラバーサーによって建屋の中に収められたのであった.
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クレーンで車体を吊ってトレーラーを抜く.

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仮台車に載せられたデハ236.仮台車は1,067mmゲージだった.そして4軸のうちの2軸は松葉スポーク付きという貴重品.
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そしてめでたく,トラバーサーによって工場建屋の中に収容されたのだった.


新本社落成は平成31/2019年秋の予定だから,その半年ぐらい前には整備が完了すると思われる.時代設定は現役最終期を予定しているという.完成が待ち遠しい!