昨年は8月18日のここで展覧記をご紹介した鉄樂者写真展.今年は記念すべき第10回目.
 今回,入り口のすぐ左側には,杉 行夫さんの“機関車が翔んだ”.と題する写真が並ぶ.日本の山陽本線,函館本線に始まり,米国のチャレンジャー,豪州の28形パシフィックで試みた,豪快な“流し撮り”が見るものの目に迫る.
 全線電化前の山陽本線でのC59のクロスヘッドクローズアップなどは,昭和30年代の,あの時代にこういう写真を……と思ったのだけれど,“だって,次から次ぎへとやってくるから”.
 確かに.普通列車でも牽引機はC59なのだから,存分に実験的な写真を撮ることができるわけだと,
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自らの作品の前で,お元気そのものの,杉 行夫さん.米国と豪州ではレンタカーで“大追跡”を敢行し,そのルートなども作品の周囲に地図で示されており,その熱の入りようを知ることができる.

会場を時計回りに進むと,蒼弩舎の売場入り口右側の壁面に,野口信夫さんの中国四川省芭石鉄道の情景が展開する.Part IIと題された今回は,この鉄道沿線でハイライトともいうべきオメガループの周辺を展示.レイルのNo.48で紹介した時点では,“間もなく廃止”とされていたのに,今や大観光地.野口さんの作品は,観光化が始まる直前の,素朴だった時代の情景である.
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芭石鉄道の情景の数々.展示写真は,開場前夜の短時間で掲出できるように,事前に緻密な寸法計算がなされた上で,プリントされている.ご自身を含め,ほとんどの写真は野口さんがプリントを担当しているという.


芭石を辿って会場を奥へ進むと,突然ラテンの世界が出現する.リスボンの市電である.撮影は蔵重信隆さん.ずっと蒸気機関車探訪が中心だった蔵重さんに,どのような心境の変化があったのだろうか……もっとも,レイルNo.95では,昭和40年代前半の神戸市電を披露してくださっているから,“蒸機一本槍”というわけでもない.ほとんど今回の写真展のために2度も現地を訪問している蔵重さんを駆り立てたのは,なにが切っ掛けだったのだろうか.
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中身はインバータ制御化されているとはいえ,外観は古典単車そのもの.それがリスボンの古い町並みを縦横に巡る.“こんなところに電車が?”という細い路地や急な坂道を走り回る電車を,モノクロにプリントしての展示


そして会場をほぼ一周した一角には,金澤 忠さんの“尾小屋奇譚”.かろうじて現役最終期に間に合った尾小屋鉄道訪問を振り返る.その後の保存状態も含めて,この鉄道に惚れ込んだ金澤さんの気持ちが満ち溢れた展示.
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初訪問の経緯から,ロータリーによる除雪列車運転,廃止後の保存活動まで,何度も訪問したこの鉄道の情景とそれを取り巻く人々を,金澤さんの感性で写し込み,きっちりと記録,整理されているのに感服.


ということで,今度の日曜日まで.地下鉄丸ノ内線新宿御苑前駅が最寄りである.

会期:平成29/2017年8月21日(月)~9月3日(日)
会場:
ギャラリー蒼弩舎
160-0022
束京都新宿区新宿1-3-5
新進ビル3F
電話・FAX:03-3358-3974
http://www.sokyusha.com/
オープン13時~19時
会期中無休