2年前の量産先行車登場以来,折りに触れてここ誌面でご紹介している,JR東日本のE235系電車.
 そのスタイルについては多くの人の間で好みについて意見が出ているが,なにはともあれ,次世代山手線を担う電車であり,バリエーションが関東地方の各線区で標準タイプ車となることに,ほぼ間違いはない.であるからには,僕の仕事としては関心を持たざるをえないし,また,身近な存在として,個人的な興味としても動静が気になるわけである.
 そのE235系が,今年度の鉄道友の会ローレル賞を受賞した.
 同時に受賞したのは静岡鉄道のA3000形電車と,えちごトキめき鉄道のET122系1000番代気動車.
 ちなみにブルーリボン賞はといえば,JR九州のハイブリッド電車BEC819系である.

そのE235系のローレル賞受賞式が,先週の土曜日に大井工場…ではなくて,東京総合車両センターで催されたので,出掛けてきた.
 目的の第一は,もちろんのこと式典そのものであるのだけれど,各地の鉄道友の会の方々や,鉄道事業者…この場合はJR東日本の車輛部門の皆さんにお目に掛かること.ゆっくりとお話ができるわけではないのだけれど,ともあれご挨拶というのは,長いおつきあいの中で,大切なことである.
Q7B_1961
受賞式で表彰状授与,記念盾授与,挨拶のあとのテープカットでポーズを取る関係の皆さん.手前から,東日本旅客鉄道東京支社東京総合車両センター 齊藤庄一 所長,JR東日本鉄道事業本部運輸車両部 照井英之 担当部長,鉄道友の会 柚原 誠 副会長,総合車両製作所 橋爪 進 常務取締役生産本部副本部長兼新津製造部長,鉄道友の会 須田 寛 会長,KENOKUYAMADESIGN 平田洋一 ディレクター,鉄道友の会 久保 敏 副会長,JR東日本 市川東太郎 執行役員鉄道事業本部運輸車両部長,JR東日本 東京支社 鈴木 均 運輸車両部長の各氏.


このE235系,今年度に入ってからは予定通りに増備が続き,この日の時点では第8編成まで営業運転に就いていた.折りしも,出掛ける途上の代々木駅で遭遇した.例によって列車後部の表示狙いで撮影したのが,
Q7A_1926
この写真.9月の花は菊.もっといえば,ヒナギクとかデイジーとか呼ばれる種類のようにも思う.10号車はサハE235-4609のようである.


50編成中の8本がE235系で占められるようになると,出会うのにもそれほど苦労しなくて済むようになりつつある.しかしそれでも,タイミングが悪いと数編成が続行で過ぎ去った後で,しばらくは目の前に現われてくれなかった,ということもあるから,まだ気を抜くことはできない.
 そんな,観察のチャンスが増えたところで,これまで写真を掲載していなかった屋根上の変更点について,ようやく記録することができた.
 それは両先頭車と隣接する車輛の屋根上.
DSCN4182
これが量産先行編成のクハE234とモハE234の屋根.クハE234の連結面寄りに見える2本のアンテナは車輛制御情報伝送システムINTEROSの,外部との情報交換用WiMAXアンテナ.モハE234の屋根に台座はない.
DSCN4188
これは第2編成のクハE234とモハE234の屋根.モハE234の屋根に,2基分のアンテナ取り付け台座が見える.

DSCN4187
こちらは量産先行編成のサハE235-4620の屋根.ラジオ受信装置を撤去した台座が残るだけ.

DSCN4194
そして第3編成のサハE235-4603の屋根.こちらにも新しいアンテナの台座が取り付けられている.クハE235のGPS用アンテナ取り付け準備用台座は量産先行編成と同様に設けられている.


ということで,先頭車に隣接する車輛に,アンテナ台座が2基ずつ増えたことになる.これは,JR東日本から提供され,9月号の“いちぶんのいち情報室”に掲載した形式図に,“ATACS準備工事”とある.
 ATACSとは,平成23/2011年から仙石線の205系で試験運用され,いよいよこの11月4日から埼京線の池袋と大宮の間で実運用が始まると発表された信号保安システムのことで,Advanced Train Administration and Communications Systemの略称.
 最大の特徴は,無線装置を使って指令拠点と列車を有機的に結びつけた上で,保安装置などを制御することにある.信号は地上信号機に拠らず,運転室内の車上信号機に現示される.
 加えて,列車の運転状況に応じて閉塞を移動することができること,踏切制御やポイントの連動装置も総合的に制御することができること.それによって,輸送効率を向上させることができる他,信号機などの地上設備のコスト削減が可能となること,総合的な制御によって工事など臨時的なことがらにも対応可能となって安全性がさらに高まること,などが挙げられている.

山手線への導入はまだ発表されていないが,準備工事が始まったということは,採用が決まった,ということなのだろうか.今後の動きに注目したい.

なお,常磐緩行線への導入を目的としてフランスのタレス社に設計開発を委託していた無線式列車制御システムは,当面開発を断念と発表された.

注:無線式列車制御装置のことはCBTC(Communications-Based Train Control)と呼ばれ,ATACSもCBTCの一種である.

※2017.10.06:加筆修正