9月14日付けのここでお話した,東急電鉄5050系5177編成の床下機器.西武鉄道の沿線にいると,なかなか遭遇できるチャンスは多くなくて,調査が進まなかったのだけれど,ようやく機器箱の銘板から“慣性軌道検測装置”と読み取ることができた.JR東日本のE235系量産先行編成のサハE235-1に搭載されている“慣性正矢軌道検測装置”と同じ,あるいは同類の装置ということになる.E235系では“正矢慣性”という言葉になっているが,これはこのシステムを開発した鉄道総研の軌道技術研究部 軌道管理研究室の開発グループが考えた造語であるという(出典).それで慣性測定法というのは“「加速度の2回積分が変位になる」という物理法則から軌道変位を求める方法を「慣性測定法」といいます。(出典)なのだそうだ.
 とにかく,かつては極めて剛性の高い台枠に3組のボギー台車を履かせ,その位相変化からデータを採取し,紙に記録して分析するという手間を要していた…それでも昭和30年代には高速で走行する車輛上で検測が可能になるということで,画期的な技術開発だった.
 東急電鉄でも平成10/1998年にサヤ7590という軌道検測車を新造して,当初は7200系アルミ車改造の電気検測車デヤ7200とデヤ7290に挟まれ,現在では平成24/2012年に新造のデヤ7500とデヤ7550の間に挟まれて検測を行なっている.
 東急サヤ7590と同じ年に落成したJR東日本のE491系電車East iやキヤE193系East i-Dでは台車が2基で済むようになり,平成16/2004年のJR九州の新幹線800系では営業編成に組み込むことが可能になっている.
  JR東日本では,鉄道総研とともに平成20/2008年以降209系電車改造の試験車MUE-Trainで新しい軌道検測システムの研究を続けてきた.その成果のひとつが,E235系への搭載といえる.

ということで,5177編成のサハ5577である.
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石神井公園の駅で出会うことができた東急電鉄5050系5177編成.
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西武池袋線での1側(池袋と所沢の間では概ね北側)に白い円筒形のデータデポ車上子と,非常用梯子を挟んで取り付けられているデータデポ収納箱.
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手前の四角い箱がデータデポ収納箱.梯子の向こうがデータデポ車上子.

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池袋線での2側(池袋と所沢の間では概ね南側)には慣性軌道検測装置制御装置箱と,非常用梯子を挟んで台車脇に取り付けられた,測定装置ユニット.


東急電鉄でも,東横線系統の軌道検測に関してはサヤ7590ではなくこの5177編成に委ねることになるのだろうか.
 5050系が入線できない田園都市線系統や支線区ではどうするのか….
 一方では,この5050系が日常的に走る東京地下鉄の副都心線や西武池袋線の検測も引き受けることが,技術的には可能であるわけだ.

電気検測に関しても,E235系ではモハE235-3の屋根に,新しいシステムを搭載しており,東京圏のほかの線区にも拡大されようとしている.そちらはどうなるだろうか.

今後どのようになるか,それは東急電鉄からの発表,あるいは日常的な観察から明らかになってゆくことだろう.