今を去ること37年前,不定期刊として再スタートした“レイル”の第1回目の特集として採り上げたのが,小田急のロマンスカーだった.
 その時の思い出はいろいろあるけれど,新宿と小田原との間の表定速度…到達時間の変遷を読んで驚いたことも,その一つ.刈田草一さんに書いていただいたその稿には,昭和11/1936年の小田原急行電鉄による週末温泉列車に始まる,新宿と小田原の間の運転史が詳細に綴られている.
 その中で,当初はノンストップで1時間30分だったのが,第二次世界大戦後には100分で運転再開.その後は順次スピードアップしてSE車投入で70分となり,昭和38/1963年には62分まで短縮した.ところが昭和40年代以降は逆にスピードダウンばかりで,昭和48/1973年には最速でも69分まで後退したと記されている.

なんでそういうことになったのかといえば,偏に通勤輸送の影響.線路容量が圧倒的に足りなくなった結果である.そのことを見越して昭和30年代には東京都内区間の高架複々線化事業の計画が策定され,着々と……のはずが,実際には種々の事情で遅々として進まず,最初の区間である和泉多摩川と喜多見の間が完成したのが,ようやく平成9/1997年のこと.その後は平成16/2004年に世田谷代田と喜多見の間が,平成21/2009年には多摩川橋梁が複々線になった.引き続いて東北沢と世田谷代田との間の工事に着手,まずは地下化が完成したのが平成25/2013年春のことだった.
 来年の3月,この区間1.6キロの複層地下化による複々線が完成して線路容量が大幅に増えるから大増発とスピードアップを実施します……という内容の記者会見が昨日,行なわれたのだった.
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記者会見は西新宿のハイアット・リージェンシーが会場だった.開会前には,昨年暮からTVコマーシャルでも使われているPR動画がスクリーンに映しだされていた.
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東北沢から下北沢を経て梅ケ丘手前までの地下線開業前日.3000形の本厚木行き各停が到着する.今回はもう1本の地下トンネルが完成して複々線区間が11.7キロとなるわけである.


その成果のひとつが,ノンストップの“スーパーはこね”の新宿から小田原までの所要時間が最も速い列車で5分短縮されて59分となること.ようやくにして,念願の“1時間以内”を達成することができたわけである.

というのは,沿線住民でない者の感想だろう.地元の人々にとってはロマンスカーよりも,毎日の電車事情が切実.そちらも画期的で,朝の混雑時間帯の町田から新宿までの到達時間を,49分から最速37分に短縮するのだという.具体的には“快速急行”の大幅増発によるものであるのだが,線路容量がそれほどに増加するということなのだ.
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今は昼間時間帯にだけ運転されている“快速急行”が,混雑時間帯にも運転される.それにしても,停車駅が少ないとはいえ,町田から新宿までの間で12分も短縮できるとは…….写真は今年の初夏,複々線の多摩川橋梁を渡る8000形10輛の“快速急行”,後方に各停が見える.


12年ぶりという制服のモデルチェンジも併せてお披露目となった.たまたま更新時期が一致したのかもしれないが,やはり複々線完成による白紙ダイヤ改正を機に,ということでもあるのだろう.
 発表によれば,特に名の通ったデザイナーの作品というわけではなく,製作担当会社と小田急との間での地道なやり取りで決定したとのこと.僕の目には,けれん味のない素直なデザインで,とても好感が持てた.皆さんの感想は如何に?
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新制服.社長の左は男女現業長,その左が男女乗務員,左端が男女駅係員.画面右端は発表する小田急電鉄の星野晃司社長.6人のモデルはすべて実際の小田急電鉄社員である.


この日,ちょっと残念だったのは,ダイヤ改正実施日が“3月”としか発表されなかったこと.週末の実施だとすれば10日から11日,あるいは17日か18日ということなのだろうが,さて.
 そしてもうひとつ,このダイヤ改正から投入される予定の新ロマンスカー7000形については,従来の発表が確認されただけで,注目の愛称は“お楽しみに!”だったことも,残念ではあった.“お楽しみはこれからだ”ということなのだろうか.