“箱根につづく時間(とき)を優雅に走るロマンスカー”をキーコンセプトとして開発,製造された小田急電鉄の新ロマンスカーが披露された.
 現車は12月3日の午後に日本車両工場のある豊川を出発し,御殿場線経由で松田に到着したのが日付の変わった直後.その後,小田急電車に牽引されて相模大野へ到着している.この行路について,種々の都合で本誌には掲載することができなかったのが,残念極みではあったが.
 それにしても,つい先日の東急2020系といい,到着風景を含め,日を措かずに披露するというのが,近ごろのトレンドなんだろうか.
 さて,編成は新宿方からクハ70051+デハ70001+デハ70101+サハ70151+デハ70201+デハ70301+クハ70351の4M3T.
 車体外部の色はバラの色を基調とした“ローズバーミリオン”とし,屋根はそれより一段深い“ルージュボルドー”.小田急ロマンスカーの伝統色である“バーミリオンオレンジ”は窓下にストライプとしてあしらっている.車体下部のカバーと先頭車部展望室隅のピラーは30000形EXEαと同じムーンライトシルバー.
 展望客席はVSEこと50000形よりも約35cm前方に配置し,展望窓の天地寸法を約30cm拡大してより広い前面眺望を確保している.
 一般部の側面窓も天地寸法をVSEの70cmから100cmに拡張している.ガラスは車体外板とほぼ同じ,約7,000mmの半径を持つ曲面ガラス.
 車内サービス設備としては無線LAN(Wi-Fi),全座席の肘掛け部に電源コンセント,
 編成定員は400名である.
 主制御装置はシリコンカーバイド(SiC)の1C8Mで,デハ70001とデハ70201に取り付け.
 台車はボルスタレスで軸箱支持装置は円筒積層ゴムタンデム配置.フルアクティブサスペンションを備える.主電動機は全密閉式外扇式三相誘導電動機で定格出力は190kW.
 パンタグラフはデハ70001の新宿方,デハ70151とデハ70301の小田原方にPT7113-Bを搭載.
 設計最高速度は120km/h.
 運用は,3月に予定されているダイヤ改正でスタートする.充当されるのは3往復の“スーパーはこね”のほか,“はこね”,朝間の“モーニングウェイ”,夕夜間の“ホームウェイ”.3種の運用の組み合わせで,小田急のウェブサイトで予定が発表されることになっている.

 そして注目の愛称はGSE.Graceful Super Express“優雅な特別急行”とでもなるだろうか.
DSCN6410
配布資料の数々.編成表によれば,展望席は16席.4号車には大型車椅子対応トイレや乗務員室,車内販売準備室などの設備がある.走る喫茶室の復活は,残念ながら,なかった.

DSCN6426
ロマンスカー乗務員の新しい制服も発表された.デザイン担当はファッションデザイナーの小篠ゆまさん.キーワードは“心の豊かさ”.そして“お出かけの高揚感を高めるかっこよさ・憧れ”を表現しているという.写真左からアテンダント,女性乗務員用,男性乗務員用.右端は解説する小篠ゆまさん.


そして発表会会場である小田急ホテルセンチュリー相模大野から,相模大野総合車両所へ移動して現車とのご対面.
 感想,印象はさまざまだろう.僕の第一印象は,写真も模型も,ちょっと手ごわそうな造形とカラーリング,だった.仔細の観察はこれからとして,まずは時間に追われつつ撮影した,各部分をご覧いただくことにしよう.

なお台車については,12月7日付のここで紹介しているので,併せてご覧いただければ幸い.
R7A_5526
相模大野総合車両所の89番線で姿を見せたGSE,70000形.横で見守るのは左から五十嵐 秀 小田急電鉄取締役交通サービス事業本部長,星野晃司 小田急電鉄取締役社長,岡部憲明 岡部憲明アーキテクチャーネットワーク代表,小篠ゆま ユマコシノアソシエイツ代表取締役.

R7A_5567
今日公開されたのは,小田原方先頭車クハ70351と,その隣りのデハ70301の2輛.車体外部はバラの色を基調とした“ローズバーミリオン”,屋根“ルージュボールド”.窓下には小田急ロマンスカーの伝統色であるバーミリオンオレンジがあしらわれているのが判るだろうか.車体下部のカバーは30000形EXEαと同じシルバー.

DSCN6496
注目したいところは限りなく存在したが,もっとも目を惹いたのが,デハ70301の海側スカートに開けられた,インバータ素子冷却用の空気取り入れ口.まるでレーシングカーやスポーツカーのエアインレットのようだ.


このエアインテークのほかに注目したのは,円筒積層ゴムタンデム配置など新機軸を採り入れた台車,各連結面と先頭部台枠上に装備されたアンチクライマー,VSEやMSEに引き続いて取り付けられた窓下のウィンドシル状帯材.
R7A_5754
デハ70301の客室見通し.大型荷物置き場は全車に用意されている.腰掛の下には国内線飛行機機内持ち込み可能サイズの荷物を置くことができるスペースがある.全席に電源コンセントを備え,無料のWi-Fiが利用可能.車椅子対応席は大型車椅子対応トイレとともに4号車に用意.

R7A_5794
クハ70351の一般客室.デハ70301と似ているが,頭上の荷物棚がない.両先頭車はすべて展望室,という考え方のもと,ダイナミックな眺望を確保している.

R7A_5804
そして展望室.必要な強度を確保しつつ,できる限り窓をを大きくし,VSEの視界を上回る展望を実現している.LSEのイメージに近いような気がした.

小田急電鉄ではこの電車のための特設サイトを公開している.

SEに始まりNSE,LSE,HiSE,RSE,VSE,MSEに続く8代目の“スーパーエクスプレス”.ロマンスカーとしては9代目のこの車輌,またもや“詳細取材が待ち遠しい”電車の登場である.

※2017.12.06:一部人名及び語句など修正・加筆