11月29日から12月1日まで,幕張メッセで“第5回鉄道技術展”が開催されていた.2年に1回の催しで,前回の模様は一昨年11月12日のここでお伝えしている.主催はフジサンケイビジネスアイ(日本工業新聞社).
 普段は近くに寄って見ることができないさまざま部品の観察や,担当者による最新技術解説などが楽しみで,前回の訪問で,取材や原稿執筆にも大いに役立つことが解ったので,なんとか時間をやりくりして出向くことにした.そのレポートは,本当ならばすぐ翌日に……と思ってていたところが,東急2020系の搬入及び最初のお披露目取材のご案内をいただいたものだから,そちらの速報を優先して1週間遅れとなってしまった次第.
 今年も,興味深い展示が目白押しだったのだけけれど,今日はその中かから,日本車両のブースで一際目立っていた台車をご紹介しようと思う.
 その他は,また折りに触れてということで…….
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人の波に呑み込まれてしまいそうな,日本車両のブース.なにしろエントランスの真ん前にあるのだから,それも無理からぬところだけれど,理由はそれだけではなかった.

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これがその,問題の台車.一見,普通のボルスタレスのようだけれど,少し目を凝らすだけで特異性が見えてくる.
説明板によれば,台車形式はNS-101TA.設計速度は120km/h.軸重は10.7t,軸距2,100mm,車輪径810mm,質量5,400kgとある.側梁は一体成型・ハットプレス構造,横梁は上下分割・モナカプレス構造…ん?“モナカ”って?
 説明の方への僕の質問攻めが始まった.
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これですよと指差されたのが,この部分.これまでは2本のまっすぐな円筒が左右の側梁を結んでいたボルスタレス台車だが,これは中央部が湾曲して中央部に空隙が.しかもその横梁は上下同じ形のパーツを重ねて熔接されている.その様子が“モナカ”ということだそうだ.


この構造を採ることで横梁の剛性が高まり,無駄な振動を抑制することができるのだそうだ.加えて,主電動機の取付梁を短くすることができるから,剛性向上にも軽量化にも寄与する.
 さらにさらに,ブレーキ装置のユニットを車輪と横梁の間に置くことができるから,必要に応じて軸距を短くすることができる.それによって床下機器の艤装スペースを拡張できる…軸距が短くなることで失われるかもしれない“ふんばり”は,剛性向上と差し引きできるのだという.
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特徴はそれだけではない.側梁の“ハットプレス”とは,梁を山形にプレスし,底面に別板を丁寧に熔接することで,側梁の剛性と強度が高まり….バネ帽が上から見て紡錘形になっているのにも秘密はありそうだ.



それは,側梁と一体でプレスし,さらに底板を熔接することで,応力が集中する部分の強度を高め,亀裂を防止する効果があるとのこと.
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そのバネ帽の下にある軸箱とその支持装置.さきほどの説明板には“タンデム式”と記されている.直列二頭立の馬車という意味のタンデム.その名の通り,軸バネを直列に二組並べることでレールへの追随性が高まる.


この,積層ゴムとコイルバネを併用し,それを二組並べたタンデム式軸箱支持装置は,既に小田急MSEこと60000形のND-739で採用されている.

で,一昨日,相模大野で配布された資料には,形式こそ記されていないものの“鋼板溶接構造、タンデム式(円筒積層ゴムタンデム配置)ボルスタレス台車”とあった.
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小田急70000形の台車に使われていたというわけである.


というより,展示されていた台車そのものが,小田急70000形用だったというのが,種明かし.展示されていたのは先頭台車で,第2編成に使われることになっている.