今日の午後2時,近鉄…近畿日本鉄道から,かねて長期計画で触れられていた,新しい特急車についての概要が発表された.
 この新特急車,名阪特急に投入することを目的としている.そのため,観光列車的な要素は少なく,“ビジネス特急”の性格が強い.
 今日発表されたリリースにも,冒頭で“大阪と名古屋間を運行する次世代特急”と記されているほか,別紙の第二項では運行区間として“大阪難波~近鉄名古屋間”と限定されている.となれば,現行の“アーバンライナー”の行方と,最古参である12200系“スナックカー”グループの行く末が気になるところだが,アーバンラーナ-は停車駅の多い名阪間“乙”特急に転用,そこから順に玉突き的に,12200系の廃車,ということは,明白なことであろう.
 編成は6輛と8輛.違いは中間のレギュラー車輛の数.製造輛数は,6輛が8編成と8輛が3編成の合計72輛.通常時は6輛で充分でもピーク時には足りないので,組み替えではなく最初から8輛編成を用意することにしたのだそうだ.ちなみに投資額は約184億円と発表されている.
④イメージ図2(背景あり)
編成外観イメージ図.“透明感のある深い赤”で全体を装い,これまでの近鉄にはない丸味の前頭部が最大の特徴だろう.両先頭車はハイデッキのハイグレード車輛ということである.写真:近畿日本鉄道


前頭下半分の平面と曲面の組み合わせは,他にはないラインに思える.でもどこかで見たことが…と思ったら,“しまかぜ”に相通ずるデザインなのかもしれない.あちらはもっと先鋭的なエッジの利いたライン取りだが.そういえば両端をハイデッキにするというのも,同じコンセプトである.

提供資料には6輛編成の平面図が添えられているが,それによれば名古屋方1号車のハイグレード車が定員21名でトイレを連結面寄りに設備.2号車以下がレギュラー車で,2号車にはロッカーとユーティリティースペースを備えて定員52名,3号車にはユーティリティスペースを喫煙室として定員は同じ52名.4号車は多目的と入れと車椅子対応座席を設けて定員41名.5号車は2号車と同じ設備で定員52名.6号車は1号車と同じ設備で定員21名となっている.
 8輛の場合はどうなるのか予想すれば…6輛編成の総定員が239名であるのに対して8輛では327名とある.そのさは88名.1輛は定員52名のユーティリティスペース+ロッカーの車輛となるのだろうが,そうするともう1輛の定員は36名…….両先頭車に備えられているのと同様の,洋式トイレ2ヵ所と小便所,ロッカーを備えるとこのぐらいの定員になるのだろうか.
⑥6両編成レイアウト案
6輛の場合の編成平面図.編成両端は,いわゆる展望席ではないものの運転席が低い位置に設けられているので前面の眺めはよさそうである.
写真:近畿日本鉄道
⑧先頭車両(ハイグレード車両)イメージ2
というところでハイグレード車の車内イメージ図.これならば前面の眺望はビジネス特急としては充分で,観光目的の乗客も満足できることだろう.
写真:近畿日本鉄道
⑦先頭車両(ハイグレード車両)イメージ1
座席を回転させると,このようになる.側窓は紫外線と赤外線をカットするガラスを使用.
写真:近畿日本鉄道

ハイグレード車の特徴は,全席3列シートで,背摺りは背の高い“バックシェル”構造を採用.その腰掛の表地は本革.アーバンライナーより25cm広いシートピッチ130cm.リクライニングは電動でレッグレストも電動.ヘッドレストは高さと角度を調整できる機能付き.乗り心地確保のために電動式のフルアクティブサスペンションを装備する.
⑩ハイグレード車両 座席イメージ(前)
バックシェル座席とは…….背摺りが貝殻(シェル)のように固く,リクライニングしても後方座席の空間を減少させることがない構造.
写真:近畿日本鉄道
⑨ハイグレード車両 座席イメージ(後)
背面からみれば,それがより理解しやすいだろうか.
写真:近畿日本鉄道

そしてレギュラー車.シートピッチは近鉄のレギュラー席としては最大の116cm.腰掛はやはりバックシェル構造を採用している.
 荷物棚とデッキ仕切り扉はガラス製として開放感のある室内空間を演出している.
⑪中間車両(レギュラー車両)イメージ
レギュラー車といえども,側窓は充分に大きく,このあたりは近鉄特急の伝統が守られている気がする.普通車も赤外線お呼びし外線カットガラスを使っている.
写真:近畿日本鉄道

客室以外の設備としては,座席以外で寛ぐことができる空間としてのユーティリティスペースを設けること.全車に空気清浄機を設置すること.デッキと大型荷物置き場に防犯カメラを設置すること.全席に電源コンセントを設置すること.客室に無料Wi-Fiを設備すること.などが挙げられている.

車体は普通鋼製で,衝突事故時の安全に配慮した車体設計の採用が謳われている.制御方式は?主制御装置の種類は?電動車と付随車の比率は?…….興味津々だが,それらは,もう少し先までのお楽しみ.
 その“もう少し先”とは具体的にいつごろなのか.営業運転開始が2020年春とのことだから,各種性能試験や訓練運転,事前のお披露目などを考えれば,2019年の秋には現車が落成することになるだろう.
 そういえば形式は…….愛称とともに未定,だそうである.これも発表が待たれる項目のひとつである.
 お楽しみは,これからだ.

※2018.01.14:一部誤字修正