事業計画決定から54年,最初の区間の着工から29年.最初の区間の高架複々線完成から21年…小田急電鉄複々線化工事の最後の区間が,3月3日に完成する.
 今回の開通区間は東北沢から世田谷代田まで.距離にすればわずか1.6kmだけれど,土地が狭く,主要都道の環状七号線との立体交叉逆転化があり……と,難工事であった.
 この区間,地下化は既に5年前の3月23日に完成していて,線増工事が引き続いて行なわれていたわけである.今回は,3月3日に複々線での運転を開始し,17日にダイヤ改正を実施して大幅増発とスピードアップを!という目論見.

地下化寸前の模様は,2013年3月28日のここでもお伝えした.
 その時に
“梅ヶ丘駅はまだ姿を変えることになる.だから,切り替え寸前の姿を記録し,後日,切り替え後を撮っても,まだ“途上”ということになるのだ.”
 と記した.
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画面左端,ホーム上屋にぶら下がっている出発信号機が特徴的だった梅ヶ丘駅の新宿方.渡り線で身をくねらせて到着するのは,3000形の各停本厚木行き.前頭に取り付けているのは“3月17日運行開始 複々線による新ダイヤ”アピールのステッカー.


新ダイヤの宣伝ステッカーは,通勤車のすべての形式に及んでいた.小田急の力の入れようがうかがい知れる.それもそのはず,多摩ニュータウン方面で競合する京王電鉄では,この春から座席指定列車“京王ライナー”が走り始めるし,加算運賃の一部撤廃による“値下げ”も実施される.
 京王電鉄こそ,小田急の複々線化完成による増発とスピードアップが脅威なのだ,ということ.

さて,梅ヶ丘駅の現状観察を終えたところで,世田谷代田へ移動.
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梅ヶ丘を発車する間際の先頭車から新宿方を見る.×印の付いた信号機が,少なくとも3本は見える.新しい緩行線のホームのすぐ先にも1本.やはり,今のホームの信号機は姿を消すのだろう.


世田谷代田のホームは,いかにも仮設という構造.壁も然り.ここは上下2層の複々線で,開業後の現在の線路は急行線になるから,ホームは要らないのだ.
 このあたり,さも,前もって詳しく知っていたような書き方をしているけれど,実は,いつも有力な情報源として活用させてもらっている“鉄道フォーラム(有料会員制)”の小田急関連掲示板で駅構造のユニークさが話題になっていたことが,今回の訪問の,大いなる“背中押し”となった.
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仮ホームを通過する新宿行きの3000形.エスカレータこそなかったが,エレベーターは各ホームに1基ずつ設けられている.ホームを撤去した跡地やエレベーターは,どのように活用されるのだろうか.

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階段を上がったところが地下2階の“連絡通路階”.その下には2層構造の複々線の説明図が貼られていた.

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その連絡通路階…,ここが3月3日以降のホーム.ここから地上へ向けては,エレベーターとエスカレーターが設けられている.もちろん本設の.

長いエスカレーターで地上へ出てみれば 目の前に!
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大きな富士山が! その下には梅ヶ丘駅に発着する電車もしっかり見える.地元にお住まいと思われる人たちも,カメラ…スマートフォンを取り出して写真撮影に勤しんでいた.


“小田急のくらし”というウェブサイトの,2016年7月の記事に“富士山が眺められる新スポット「代田富士見橋」”というのがある.やはり新しい“富士見”スポットであるようだ.(出典としてのURLはここ.今後変更になる可能性がありますのでご注意ください)

ひとしきり富士山と小田急電車の組み合わせをカメラに収め,まるで高級ホテルのようなトイレに驚いたりしながら東北沢駅へ移動.ここは同一平面で複々線が並ぶのだけれど,梅ヶ丘と違って,外側が新設の急行線で,既に完成している線路は内側で緩行線となる.ということは,どんなホームが?という興味.
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答えは,こんな構造.新しいホームから桟橋のように板を張り出して仮設ホームに達するわけである.その桟橋の下に線路を敷設したということ.


工事完了後は,ホームのない線路を優等列車が通過していくわけである.そのこと自体は西武鉄道の池袋線で見慣れた風景だが,“地下線で”というのは,もしかしたら珍しい?

すべては,計画通りであるに違いない.しかし,一般の人たちは,きっと工事が進捗するたびにその変化に驚かされただろう.もっとこまめに観察に来るべきだったかと,ちょっとだけ後悔しながら,家路についた僕であった.