中央快速電車にグリーン車を組み込むという構想は,既に平成27/2015年2月4日に2020年度からサービス開始予定の施策として,JR東日本から発表されている.それを記憶しておられた読者は,きっと,“何故に今?”と首を傾げたことだろう.実はちょうど1年前の3月28日に開始時期を延期する発表されていた.その理由は,バリアフリーなど他の施策との工程調整や関連箇所との協議調整に想定以上の時間を要することが判明した…とあり,延期は“数年程度”と記されていた.
“数年程度”ってどのぐらい?と思っていたところへの,今回,4月3日付での“中央快速線等へのグリーン車サービス開始時期及び車内トイレの設置について”というリリースの発表だった.
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現在の中央快速電車用E233系.写真は6+4分割のH53編成クハE232-53.日野-豊田 2017-12-23

現状の10輛編成に2輛の2階建グリーン車を組み込んで12輛編成として運転するという骨子は変らない.付け加えられたのは次の通り.
 まず隣接する6号車(モハE233-201~)に車椅子対応トイレを新設するということ.2番目が,グリーン車の側扉を1,300mm幅の両開きとすること.
 最初から決まっていたのだろが,今回の発表で明らかとなったのが,2輛のグリーン車のうち4号車にトイレを設けること.こちらには“車椅子対応”とは記されていない.
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編成組み替え概念図.通例とは逆で,左が高尾・大月方となっているので注意.写真:JR東日本

趣味的に眺めてみれば,新造のグリーン車は,トイレ付きの4号車がサロE233,車掌室付きの5号車がサロE232となるだろう.番号区分は……山手線E231系6扉車置き替え劇のひそみにならえば4600番代?
 高尾方にトイレを新設するモハE233-201~は,全車改造されることになるわけだから改番なし?それとも?
 設置されるトイレは,リリースに添付されているのがE233系3000番代の写真.それと同等ということになるのだろうか.
“全車”というところで気になるのが,改造されるのが,現有の10輛貫通T編成と6+4分割H編成の合計59編成のうちの58編成だという記述.残り1編成は……青梅・五日市線で使われている“青編成”に繰り入れられるのだろう.
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完成予想図.どうやら手前がサロE232で,奥がサロE233のようだ.手前の車輛では,在来のサロE233では3枚だった平屋部分の側窓が1.5枚に減り,位置もやや車体中央よりに移動している.サロE233の平屋部には車掌用窓だけで客室の側窓がない,そこがトイレなのだろう.また,2階建部分の側面から半幅の窓が姿を消し,全幅窓が1枚増えている.写真:JR東日本

余計な心配としては,平成18/2006年が製造初年である元の10輛に,12年以上車齢の異なる中間車を新造して組み込んだ上に在来車も改造するという点がある.車齢の差ということからは,113系にステンレス鋼製の2階建車サロ124・125を組み込んだようなものだろうか.サロ124と125は最初から211系に組み替えることが考慮されていて,ちゃんと20年以上働いたが.

さて,2階建車への両開き扉採用は,日本では初めて(追記:近鉄20000系“楽”の両先頭車とJR東日本クハ415-1901がありました)珍しいかもしれないけれど,欧州大陸ではずっと前から当たり前のことであった.むしろこれまで片開きにこだわっていたのが不思議と思えるほどである.例として,ドイツ鉄道ミュンヘン地区で使われている2階建車の写真をご覧いただこう.車体長は26.4mで,両開きの側扉の幅は,なんと2.2mもある.
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数多くのバリエーションのうち,側扉が台車上の平屋部分にある,今回のE233系にもっと近いイメージの,スイス製グループ.1993年製である.この次のグループから空調装置付きとなった.形式はDBz 750.車体塗色は1980年代の西独国鉄地域輸送列車用ミントグリーン濃淡で,現在は鮮やかな赤一色に変更されている.ミュンヘン中央駅 1995-1-28

普通車用のトイレはどのように取り付けられるのか.
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リリースに添えられていた在来車の車椅子対応トイレ.車内銘板はクハE232-3019と読むことができる.だとすれば小山車両センター配置の車輛である.左が扉を閉じた状態で右が開いて中をみた状態を示す.写真:JR東日本

既存の窓はどうなるのだろうか.ステンレス鋼製の車輛にトイレを追加設備した例は,JR東日本の仙石線用205系や房総地区用209系,JR東海の213系,JR西日本各地のキハ120形などがある.いずれも外側からステンレス鋼板で窓を塞ぐ方法が採られている.今回もそのようになるのではないだろうか. 普通車のトイレは,来年度末以降に使用開始の予定だそうである.
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ということで,房総地区に転用される際にトイレが新設された,モハ208-2104の埋められた側窓.ステンレス鋼の板をネジ止めしているように見える.幕張車両センター 2009-8-24

停車する44駅ではホーム延長が行なわれるが,具体的にどのような工事になるのか.とりわけ御茶ノ水や東青梅などは難易度が高そうである.これから5年間,車輛だけでなく施設面の変化にも注目である.
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最後に,グリーン車の運行区間概念図をご覧いただこう.破線で示されているのが,分割編成の4連運用区間と,“青編成”運用区間でグリーン車は入らない.写真:JR東日本

※:2018.04.07:クハ415-1901の存在を追記
※:2018.04.10:近鉄20000系“楽”を再追記