一昨日,JR東日本の定例社長会見が行なわれ,“伊豆エリアへ新たな観光特急列車を運行します”と題して,E261系電車構想が発表された.
 東京から伊豆方面への直通特急といえば,古くは157系の“あまぎ”があり,その引退後には183系1000番代や185系が“踊り子”として使われた.185系は登場後30年以上を経てなお,現役である.251系だって,デビューは平成2/1990年4月だから,もう28年も前のこと.充分に“ベテラン”の域に達している.けれど,いまもなお斬新なイメージは失われてはいない.名作のひとつだと,僕は思っている.

さて新しいE261系電車.8輛固定編成で,オールグリーン車なのだそうだ.“観光特急”ということで,現今流行の“ツアー方式”列車なのかと思ったら,そうではなくて,普通に駅で切符を買って乗ることができる“定期列車”とのこと.これを聞いて,なんだか安心したのは,なぜだろう.
 “オールグリーン”とはいえ,その中にクラス分けがあって,伊豆急下田方先頭車…旅客案内上の1号車は“プレミアムグリーン車”となる.2輛目と3輛目は個室グリーン車.4輛目は“ヌードルバー”で,5輛目は大型車椅子対応トイレや車椅子スペースなどを備えたグリーン車.6~8輛目が“一般の”グリーン車となる.
※今回はいつもより大きな画像が開くことがあります.ご注意ください.
E261系見付図
編成図.左が東京及び新宿,右が伊東及び伊豆急下田となる.プレミアムグリーン車の腰掛や個室は海側に寄せられ,“ヌードルバー”のカウンター席も,すべて海側を向いている.写真:JR東日本
エクステリア1
編成外観.251系ほどのインパクトはないけれど,スマートにまとめられたという印象.デザインは,近年のJR東日本の車輛の多くを手掛けている,奥山清行代表のKEN OKUYAMA DEGIGNが担当している.写真:JR東日本

車体塗色は“伊豆の海と空”の紺碧色をベースにし,窓廻りに“溶岩地形である城ヶ崎海岸の黒黒とした岩石”のグレーを配し,正面裾から車体側面幕板上部に掛けては“伊豆の砂浜が太陽の光を受けて金色に輝く様子”をイメージしたホワイトのラインをあしらっている.
 251系の大胆な大型窓の替わりに,幕板上部のホワイトラインの上に天窓を設けて開放的な室内空間を演出している.

編成外観図は,窓配置から推察して,伊豆急下田方先頭車,すなわちプレミアムグリーン車を前にして描いているようである.となれば2輛目と3輛目は個室グリーン車.その次が“ヌードルバー”そしてグリーン車…となる.パンタグラフは4輛目と6輛目に描かれている.とすれば,編成は伊豆急下田方からクロE260+サロE260(またはサロE261)+サロE261+モシ(食堂車扱いになるならば?)E260+モロE261+モロE260+モロE261+クロE261だろうか.

客室に入ってみよう.
プレミアムグリーン車
1号車プレミアムグリーン車.ひとりずつ独立した腰掛が海側に寄せて10列20名分並ぶ.シートピッチは1,250mm.荷物は腰掛下及びデッキ脇の大型荷物置き場に収納する.編成外観図ではガラスのようにもみえた運転室屋根肩部は,どうやら窓ではないようだ.写真:JR東日本
グリーン個室
2号車と3号車はグリーン個室.4名部屋と6名部屋が1輛に2室ずつ用意される.定員はともに20名だが,付帯設備のレイアウトが違い,側扉の位置も異なっている.写真は6名室.写真:JR東日本
4号車その1
テーブル席を山側に配し,海に向かってカウンターを設けた4号車“ヌードルバー”.料理は客席から見えるオープンキッチンで調理される.“ヌードルバー”のデザインは,“TOHOKU EMOTION”の飲食プロデュースなどに携わった,中村貞裕代表のTRAINSIT GENERAL OFFICEが担当している.写真:JR東日本

“ヌードルバー”とは,説明によれば“日本人が愛してやまないめん文化のすばらしさと奥深さを,新たな観光特急列車から世界に向けて発信”するのだそうだ.プレス資料には参考としてうどん,蕎麦に加えてラーメンらしき写真が添えられていた.
 さてこの4号車の車種記号は,電動車とすればモシ?付随車ならばサシ?それとも“シ”ではない新たな記号がつくのだろうか.
グリーン車
そして5~8号車はグリーン車.海側に2人,山側に1人の腰掛を1,160mmピッチで並べている.定員は付帯設備によって各車異なり,大型車椅子対応トイレや多目的室,車椅子スペースを持つ5号車が14名,6号車が36名,トイレ・洗面所がある7号車が30名,東京・新宿方先頭車である8号車が24名となっている.これらグリーン車には,大型荷物置き場のほか,幕板部にガラス製の荷物棚が設けられている.写真:JR東日本

各車に共通の設備は,全席への電源コンセント,無料Wi-Fiがある.

さて,このE261系電車,運転開始予定は2020年春.運転区間は東京及び新宿と伊豆急下田の間.製造されるのは2編成とされている.
 現在の251系電車はどうなるのかといえば,この列車の運転開始とともに引退の予定と発表された.251系の4編成に対して2編成だけでどのように運用するのか,製造はどこの会社が担当するのか.はたまた車体はアルミ合金製なのかステンレス鋼なのか,それとも普通鋼なのか….最初に記したような車種記号や電動車・付随車の配置具合など,そして列車名がとうなるのかも含め,さまざま興味は尽きない.