九州を本拠地として活動する企業の雄として,西鉄の名前を忘れることはできない.軌道線こそ廃止されてしまったものの,大牟田本線では鹿児島本線とともに,福岡県の交通を支えている.路線バスネットワークは全国有数(日本一?)の規模だし,僕たちの馴染みのない分野としては流通業,とりわけ国際物流では大手の一角を占めている.西鉄グループの事業の中では物流が大黒柱といえるのである.
 本拠地が福岡ということもあって,これまでは僕の頭の中に占める割合は,失礼ながら大きくはなかった.それでも福岡と北九州市内線はなんども訪問したし,大牟田線の流線形1300形(初代600形というべきだろうか)や連節車500形,甘木線の卵形200形は,憧れの電車だった.

そんな西鉄…今年で創業110周年となる西日本鉄道が,東京で事業計画発表と,来年春に運転開始予定の新しい観光電車についてのプレゼンテーションを催すというので.かつて鉄道趣味界の大御所だった高松吉太郎さんのお住まいとお店があった日本橋本町のすぐそば…日本橋室町まで出掛けてきた.
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最初は,西日本鉄道の倉富純男代表取締役社長による,各事業部門の現況や今後の展望,本拠地である福岡市の持つポテンシャルについての状況分析,そして事業計画の説明が行なわれた.


今年度の事業計画では,天神地区の再開発推進,ニュージーランドに現地法人設立,バス事業で“SUNQパス”と呼ばれる九州各地のバスや船舶に乗ることができるシステムの利用促進,そして新型観光電車“THE RAIL KITCHEN CHIKUGO(ザ・レール・キッチン筑後)”の投入が挙げられた.
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アペリティフとして,福岡名産のブランド苺“あまおう”を使ったスパークリングワイン“あまおうプレミアム”が振る舞われた.なんだか頭の中がすっきりする味わいで,手近にあれば病みつきになるかもしれない…….列車内でも,ウェルカムドリンクとして提供される

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新型観光電車の説明は,担当者である吉中美保子課長(左)が担当.全体プロデュースを担当した,トランジットジェネラルオフィスの甲斐政博プロデューサー(中)と内装デザインを担当したランドスケーププロダクツの片山貴之さん(右)も同席.

外観
福岡南央子(ふくおかなおこ)デザイナーによる外観は,白をベースにしてキッチンクロスの赤いチェック模様を配している.片側4枚の側扉は1枚を残して埋められる.側窓も新たにデザインされている.写真;西日本鉄道


種車は6050形電車.先ごろ惜しまれつつ引退した8000形を使っていないのは,6050形の方が一世代新しいから,ということだそうである.そのほかに,既に2編成が観光電車に改造されていたこと(それも廃車となったが)や,6輛編成を短縮するのに3連化が難しそうだというのも理由なのかもしれない.
車内レイアウト
モダン,なおかつカジュアルをテーマとしている.両先頭車はそれぞれ22席の客席がある,床にはバラストを加工した人造大理石を敷き詰める.また,西鉄電車としては初というトイレを設備.うち,大牟田方は車椅子対応である.中間車のオープンキッチン内には電気式ながらも“窯”を中心に据えている.写真:西日本鉄道


そのキッチンからは,地元産の材料を積極的に採用したメニューを揃える.メインディッシュは“窯”で焼き上げたピザ.価格帯は,“ちょっといいレストランでお食事”をイメージしてほしいとのこと.正式発表は9月頃の予定である.
春メニュー
春のメニュー.筑後産の小麦,八女市産のたけのこ,大木町産のアスパラガスを使ったピザ(左上).福岡県産のあまおう,北野町産のラディッシュ,福岡県産のバターを使ったアミューズ(左下).右側は前菜で,博多和牛と有明海柳川産のお刺身海苔を使った肉のプレート(上)と,大木町産のアスパラガス,うきは市ゆむたファームのたまご,みやま市産のセロリ,大木町産の王リンギを使った野菜のプレート(下).いずれも二人分.写真:西日本鉄道


運転日は,毎週末,金・土・日曜と祝日.ランチ列車とディナー列車がそれぞれ片道で一日1往復ということになる.
 ランチ列車は西鉄(福岡)天神を11時半頃発車して柳川で停車(下車のみ),大牟田までの74.8kmを,約2時間掛けて運転する.ディナー列車は大牟田を17時頃発車して柳川で途中乗車客を受けて西鉄(福岡)天神まで,やはり2時間掛けて運転する.これは,同社の通常の普通列車より少し早く,急行・特急よりだいぶ遅い.
 また,西鉄(福岡)天神と太宰府との間でモーニング列車も検討中とのこと.時間,料金が気になる.

さてこの列車,5年以上前から構想があり,3年前から急速に具体化し,昨年4月の発表に至ったとのこと.お客様のターゲットは,まずは地元の人たち.鉄道への親しみを持っていただくことを大きな目的としているのだそうだ.
 加えて,各地からの観光客に,デイトリップのひとつとしてアピールしてゆきたいとのことである.

 現車の改造は既に着々と進んでいる.一日も早いお披露目を期待したい.
※2018.05.21:一部語句修正