東武博物館が譲り受け,昨年11月14日にはるばる北海道から南栗橋へやってきた元雄別炭礦鉄道のC111,元を辿れば江若鉄道のC111である.到着の模様は,11月22日付けのここで“南栗橋にC111がやってきた”と題してご紹介した.とれいんの新年号,東武特集でもMODELERS FILE+保存車輛めぐりとして掲載している.
 3月末,車抜き作業を報道関係者に公開するというご案内を東武鉄道からいただいた.分解作業は,C11 207の定期検査が無事に完了した2月12日から着手していたのが,ようやく上下分離の段階に達したのだ.
 なにはともあれ,南栗橋のSL検修庫へ駆けつけた次第.4月4日のことである.
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すべての準備が完了して,いよいよクレーンで吊り上げる寸前.検修庫の中は緊張で満たされていた.

車抜きや車入れの作業では,完成状態では見ることができない,しかし模型製作には欠かせない,主台枠の肉抜きの形状や軸箱守,火室や灰箱などの形状や寸法を確認することができる.とても貴重なチャンスである.

作業は,慎重にワイヤーを掛ける作業から始まった.続いて少しだけ上回りを上げて先台車のピンを抜き前方へ引き出す.これで準備は完了し,いよいよボイラーと主台枠を本格的に持ち上げる段階に達した.
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ボイラーと主台枠が動輪と従台車から完全に離れるまでに要した時間は,およそ40分だった.
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主台枠後部に載ったボイラー…火室部.既に外観検査は終えていて,各所にマーキングが施されている.

次は持ち上げた上回りを海側に移し,ウマに載せる作業.待ち受けるウマは高さを微調整することができる構造になっていて,主台枠を完全に水平な状態で支えることができる.主台枠が少しでも捻じれたりしたら,走行時にすぐさま軸焼けを起こしてしまう.
 きめ細かな調整が終わって,ワイヤーが主台枠から外されたのは,作業開始から1時間ほど経過したころだったろうか.
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各パーツに囲まれた動輪と従台車,主台枠とボイラー.画面右の棚には蒸機ドームカバーや砂箱,左手の床には主連棒やキャブなどが置かれている.動輪の車軸端などが磨き出されていたのに気づいて近寄ってみると…….
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第2動輪右側.シ21-8,NO1,20の刻印を読み取ることができる.
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第1動輪右側.シ21-8,NO1は同じで,28という数字だけが異なっている.

この刻印から,動輪は新造時から振り替えなどが行なわれていない可能性が高いことが推定できる.その他にも,戦時設計のまま残されている部品をいくつも確認することができた.これらが復元作業に際してどのように扱われるのか,興味津々,見守ってゆきたい.
 抜かれた動輪は日本製鉄(=にっぽんせいてつ=先日までの新日鐵住金)へ,ボイラーは大阪のサッパボイラへ送られて入念な検査の上で修復作業が行なわれることになっている.
 なお,完成見込みは引き続いて“2020年冬”と発表されている.