4月に発売したレイルNo.110だが,ついおとといまで,うちの会社の在庫が切れてしまうという事態が続いていた.
 企画の段階で,“もしかしたら……”と思わないではなかったものの,完成して世に出してみれば,予想を大幅に上回るご好評をいただいたようで,追加のご注文が殺到し,手元の在庫が,たちまちのうちに売り切れてしまったのだった.こんな勢い,正直なところ半世紀近くも出版に関ってきた経験の中でも初めてのことで,うまく情勢を読み取ることが出なかった.多くの皆さまに,お詫びを申し上げる次第である.
 そしてようやく追加の手配が完了し,ご予約をいただいていた販売店に出荷できたというのが,ことの顛末である.
 ということで,店頭に並ぶのは一部のお店に限られてしまうが,本屋さんでも模型屋さんでも,ご注文いただければ,多くのお店で取寄せが可能である.お店まで出向くのが不便な方は,うちの会社へ直接ご注文いただければ,代金が到着次第,すぐにお届けすることができる(お申し込み方法によっては荷造送料をご負担いただくこともあるが).

さて,そんなにご好評をいただいたレイルのNo.110とはどんな内容なのか.それは

20系寝台客車の魅力

である.

この客車をテーマとした書籍は既に何冊も刊行されているから,いまさら“総特集!”と銘打つのは,正直なところ二番煎じの誹りを受けかねないと危惧した.
 手持ちの公式写真も,既に何度も公開されているものが多い.
 けれど,鮮明な印刷で,できるだけ大きく掲載することによって“レイルらしさ”を演出できるかもしれないとも思った.
 そこで,藤田吾郎さんの解説と,形式図をふんだんに添えることにした.これだけで前頁の4割,40ページを占めることになった.
 20系客車そのものの解説については,20年前なら星 晃さんや黒岩保美さんにお願いするところだけれど,残念なことに,今はもう叶わないこと.そこで考えたのが,アマチュアの目で見た現役時代の20系客車を語っていただくことだった.
 藤田さんからご紹介いただいたのが秋元克広さんと西野寿章さん.お二方とも,極めて強い20系への思い入れを持っておられて……ということは,本文をお読みいただくしか,理解の方法はないと思う.
 それにしても秋元さんの“帯の高さの違い”は,これまで,まったく言及されたことのない事実だと思う.あと20年早く気づいていれば黒岩さんに“どうして?”と確かめることができたのに……天国への直通電話が欲しい.
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食堂車の椅子を求めて秋田へ…….よくぞ写真に記録されていたものである.写真左は日本車輌製の椅子,右が日立製のナシ20で使われていたと思われる,背もたれが木製の椅子.写真:西野寿章

20系の運用については,レイルでは既にお馴染みの三宅俊彦さんにお願いした.これも,誕生から終焉までの全てを追い求めると,それだけで1冊の本になってしまう.ということで,誕生から昭和40年頃…常磐線でC62が“ゆうづる”を牽くことになった辺りまで…に的を絞り,その分,詳しく解説していただいた.
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編成図などの資料に止まらず,貴重なシーンもたくさんご提供くださった.写真は“はくつる”を牽引するED71.写真:三宅俊彦

高橋卓郎さんは,僕より,ほんの少し年代が下がった昭和40年代後半の“鉄道少年”時代の思い出を語ってくださった.いや,僕だって,その数年前には大阪駅や京都駅でEF65 500番代牽引の“あかつき”を憧れの目で眺めていたのだから,いまとなっては,同年代といって差し支えはないのかもしれない.
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東京駅で機関車付け替えを眺める鉄道少年たち.写真:高橋卓郎

僕より少し歳上の方…三宅さんもそうではあるのだが…が捉えた20系客車は,早川昭文さんが披露してくださった.
 お願いした時点では,“20系なんて,熱心に追い掛けてなかったからなぁ”“機関車ではなくて列車の後ろ向きの写真が欲しいって,そんなん,ほとんど撮ってないよ”というご反応だったのだけれど,ネガを拝見してみたら……北から南まで,三宅さんと,本島三良さんの写真を合わせることによって,ほぼ完璧に“20系寝台特急”の写真集ができあがってしまったのである.
 まさに“ご謙遜が過ぎます”である.

中でも僕が痺れてしまった1枚が
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パンタグラフを振りかざして終着目指す“みずほ”である.写真:早川昭文

実は僕自身は,パンタグラフ付きのカニ22を,みることができなかったのである.実に悔しい思いのまま半世紀が過ぎたのだが,この“レイル”によって,ようやく念願が叶った.

と,いうことで,なんのことはない,自分自身の“憧れ”“悔しさ”,そして思い出を詰め込んだのが,このレイルNo.110だったということになる.

しかし,それを実現することができたのは,すべて,協力してくださった大勢の人々のご厚意と,評価してくださった読者の皆様の“おかげ様で”である.ありがとうございます.

これからもより一層ご愛顧賜りますよう,よろしくお願いします.