東急電鉄に3020系電車が登場した.
 最近の東急電車でお馴染みの“20番代”を付けたこの電車,3000番代ということから目黒線(元の目蒲線の北半分)用だということがわかる.
 本誌の“甲種・特大運行情報”でお伝えした通り,4月に最初の1編成8輛が総合車両製作所横浜事業所で落成し,5月と7月に1編成ずつ,合計3編成24輛が長津田へ輸送されている.
 その後,自社線内での性能試験に始まって,東京地下鉄東京都交通局埼玉高速鉄道での試運転などが深夜時間帯に実施された.そして8月10日に,長津田検車区で鉄道趣味出版社向けにお披露目が行なわれたのである.
 この日に公開されたのは第1編成の6輛…製造されたのは8輛なのに,なぜ?というのは,当然の疑問である.そもそも現在の目黒線列車は6輛編成.それなのに8輛編成で新造された理由は,3月26日付けで東急電鉄から“目黒線の混雑緩和と快適性向上を実施 当社で保有車輛の8輛編成化による輸送力増強と新型車輛3020系の導入”というタイトルで明らかにされている.
 それによれば,まずは現在の目黒線で6輛編成として営業運転に使い,令和4年度下期に予定されている相模鉄道との直通運転に際して,2年間留置しておいた2輛を加えて8輛編成化する,ということのようである.
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目黒方から見た3020系第1編成.車号は手前から3121+3221+3321+3621+3721+3821.中間車はすべて電動車である.

見て判る通り,田園都市線向け2020系や大井町線向け6020系と同じコンセプトによる車輛である.だから台車をはじめ,主制御装置も補助電源装置も,電動空気圧縮機も形式は同じである.
 外観で2020径や6020系と異なるのは,アクセントとしてあしらわれているラインカラーの水色ストライプ.
 なお,抜かれた2輛はいずれも付随車で,形式はサハ3420とサハ3520である.
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客室も2020系や6020系と同じデザインで色遣いも共通である.荷物棚部分の幕板への液晶モニターがないから,6020系と同じ,ということになるだろうか.

そして運転室.基本操作部分は2020系や6020系と同じだが,保安装置は6020系の多段式ATS-Pに対して,目黒線仕様の統合型保安装置が搭載されている.
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T字形ワンハンドルの,すっかり見慣れた運転室風景.

保安装置は,目黒線,都営三田線,東京地下鉄南北線,そして埼玉高速鉄道のATC-Pのほか,相模鉄道のATS-Pが含まれている.さらに都営三田線と東京地下鉄南北線,埼玉高速鉄道のATOや目黒線のTASCにも対応可能である.

と,いうことでこの3020系は,秋から営業運転開始の予定である.相互直通運転が始まるまでの間に,在来の3000系13本と5080系10本の合計23本の8輛編成化を行ない.地上側ではホームドアの8輛編成対応工事を実施することになっている.

検車区をあとにしての帰り道……昨年4月号でのMODELERS FILE記事化時点では営業運転の姿を掲載できなかった2020系を一目見ようと出向いたのが,つくし野とすずかけ台の間の大築堤.今のところはまだ主役である8500系の記録をしながら待つことしばし,
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軽やかな足どりで中央林間へ向かう各停としてやってきたのは,第5編成だった.画面奥がつくし野駅である.

これから数年後には,その陣容が一変しているだろう東急電鉄.いつもは副都心線経由で乗り入れてくる東横線系統の車輛ばかりがお馴染みの僕だが,たまには多摩丘陵へも足をのばして記録にいそしまなければと,思いを新たにした夏の午後だった.