今週の月曜日,デビューが近づく近鉄80000系電車“ひのとり”を撮影してきた……このところ毎週月曜日といえば撮影取材.先週はJR東日本のE261系,その前の1月20日は京急ミュージアムだった…….

この近鉄80000系電車,既に昨年の11月19日と20日には第1回目の報道公開が高安車庫で実施され,その模様は本誌の新年号でお目にかけたから,既に多くの方が概要をご存じのことと思う.けれど,その折にはまだ完全には出来上がっていなくて,例えば編成外観全体の撮影は叶わなかったし,なにより,僕が高安に出向くことができなかった(!)
 だから,僕としては今回が初見参ということになるわけだ.前夜に宿を取っていた名張の駅で,なにやら見慣れないシルエットが……目を凝らしてみたら,“ひのとり”ではないか!これが僕のこの電車との初遭遇となった.
 日付けが変って2月3日の朝,集合場所である青山町の駅へ向かう前,行き掛けの駄賃よろしく,三本松駅から南へ,宇陀川の対岸の山から近鉄の線路を見下ろことができそうだと気がついて登ってみた.
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そこは,後追いながらも10輛編成の上本町行き快速急行も見事に一望できる場所だった.惜しむらくは,近年急増しているという鹿との衝撃を防ぐための柵が線路端にめぐらされていて,足元がちょっとすっきりしないことだろうか.

閑話休題.お昼に青山町駅で集合し,向かった先の車庫には,80000系第2編成が待っていた.
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最初に撮影したのがこの写真.デザインを担当したGKインダストリアルデザインの“ぐっと加速する姿勢を強調した”というフォルムを表現しようと工夫してみた.

日の出から昼前ぐらいまではよく晴れていたのに,このころから雲が増えはじめ,日射しは目まぐるしく変った.それとともに車体の色もさまざまに変化する.どれが本当の色なのかと悩むことになるのだが,それは,光の当たり方によって色が変化することを計算したデザイナーの狙いどおり,ということでもある.
 撮影行程が車外から車内へと進んでしばらく経った頃,窓越しにちょっとあたたかそうな,柔らかい光が見えてきた.それっというわけで車外へ移動すると,再び雲がやってきて…….写真撮影を趣味にしている方ならきっと遭遇したことがあるだろう,“お約束”ともいえる,不思議な現象である.

インテリアの概要は新年号でもお目にかけた.叶わなかったのは床下の機器類を含む外観の細部だった.僕の目についたのは,三菱電機製ハイブリッドSiC素子適用の主制御装置箱である.
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各電動車の北側床下に取り付けられた主制御装置箱.特徴は,放熱部分のキセが黒く塗られていることである.これは新京成電鉄80000形でも見ることができる,三菱電機製主制御装置箱に共通の仕様であるようだ.
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パンタグラフはモ80200とモ80500の大阪方及びモ80400の名古屋方に1期ずつ搭載している.写真はモ80500形である.南側の母線ヒューズ箱と北側の主ヒューズ箱は共通でモ80200とモ80500はその間に補助ヒューズ箱を取り付けている.気になるのがヒューズ箱とパンタグラフの間に見える円筒形の部品.いわずと知れた避雷器なのだが,これまでの近鉄では,避雷器は床下と決まっていた.大きな変化といえるだろう.

転落防止外幌は23000系のような背の高いゴム板でも,通勤車に見られる尖った棒状でもない,短冊形のゴム板である.妻板のディテールが観察しやすい…ということは,模型でも作り込み甲斐があるというものだ.

異例ともいえる長時間の取材時間だったが,気がつけばもう終了の時刻が近づいた.締めくくりは,現役車輛との出逢い風景スナップとなった.
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伊勢志摩ライナー”や“アーバンライナー”などが次々と通過して行く中で,ひときわ僕の印象に残ったのが“新スナックカー”12200系との邂逅だった.

新幹線開業で落ち込んだ名阪間直通需要を挽回すべく,また大阪万博に向けての輸送力増強を目的として華々しくデビューした12200系も,登場後50年を経過した.特急車としては異例の長寿だが,それもいよいよ先が見えてきた.21000系“アーバンライナー”が80000系に置き替えられて乙特急に転用されれば,押し出されて引退するのは必定である.こちらの,これからの動向も大いに気にしたいところである.

さて,この80000系“ひのとり”は,今月発売の3月号MODELERS FILEで,A;Trainの吉田健太郎さんの手による折り込み詳細図面をはじめとして,微に入り細を穿ってご紹介の予定である.新年号で予告した,岡本真和さんが逸早く製作された作品も,模型化図面を含めて掲載となる.ただいま編集部は,追い込み作業の真っ盛り.大いに期待してお待ちいただければ幸いである.

※2020.02.07:主制御装置箱の色について記述修正
※2020.02.19:とれいん3月号へのリンクを追加