いつもどおり,この稿を書いている今日は,10月に発売予定のレイル No.116の追い込み真っ盛り.7月にお届けしたNo.115の作業が,なんだかはるか昔のことだったように感じる.

さて,そのレイル No.115は,題名の通り,色とりどりのテーマの取り合わせで,“特大大盛”状態であった.
 最初はJR貨物の2車体交直流機EH500.東京郊外で国鉄型電気機関車のウォッチを続けてこられたふちい萬麗さんの,EH500が登場してからの記録である.
 わが国鉄としてはEH10以来の2車体機.交直流としては初めてというユニークさとともに,東北本線や青函トンネルでのED75やED79の重連運転を解消することを目的として開発された…….試作機がお目見えしてから量産が始まるまでの長い時間,量産が始まってから次々と登場した,さまざまなバリエーション.
 それらを追い回した日々のことは,なんだかつい昨日…とはいわないまでも一昨日のできごとのような気がする.
 けれど時の流れはいつも通りに冷徹で,気がつけば四半世紀近い時間が流れているのだった.
 製造時のバリエーションの他,経年によるディテールの変化も子細に述べられていて,この機關車の最近の状況をまとめて知ることができる,貴重な資料としてお役立ていただけるものと思う.
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僕がデジタルカメラで撮影した,(恐らくは)最初のEH500.E655系の公式試運転の日,東鷲宮と栗橋の間である.ふちいさんがおっしゃる“北斗星”牽引に備えてのヘッドマーク掛けを,盛んに取り付けていた頃である.平成19/2007-7-24

なお今回ふちいさんは,EH500以前の“東芝”製電気機関車であるEF58やEF65,ED75などにも言及されている.

続くは8620,いわずと知れた,大正期に大量産された旅客列車陽蒸気機関車である.
 なにしろ数は多いし使用範囲は全国に及ぶ,さらに活躍期間は半世紀以上…JR九州での動態保存機58654を勘定に入れれば1世紀!
 このような機関車を一挙に,完璧な形で述べることは,実質的に不可能である.でも,断片的にでも手元に集まった資料を公開することによって,さらに新事実が掘り出されたり,これまでの情報の誤りが発見されることもある.そこが趣味の面白さであって,相手を非難するようなことさえしなければ,みんなで楽しく,探求の度合いを深めることができるのだ.
 それを実践されたのが高見彰彦さん.なにしろ国鉄現役蒸機にはまったく縁のない世代なのだそうだが,だからこそというべきか,これまでの先入観にとらわれない考察を展開されているのが,とても興味深い.
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昭和の御大礼に際して御召列車をけん引した78678の晴れ姿.台紙に貼られた密着焼き写真で,職員や関係者への記念品と思われる.同様の台紙付き写真はほかの地区でもたくさん制作されている.所蔵:森本 寿

なお,8620から派生して和歌山線五条駅へと話題が飛び,同駅の転車台の変遷についても触れられている.その中で,昨年たまたま訪問した折に僕が撮影した,駅構内の各景を添えさせていただいる.

三番目は西 和之さんの“OVERALLROOF”.耳馴染みのない言葉かもしれないが,要は,大屋根.関西ならば阪急梅田駅や南海難波駅…….関東ならばどこだろう……地上時代の東急渋谷駅は該当するのか?
 西さんが採り上げられたのは,僕には意外な駅ばかりだった.私鉄の大ターミナルというのはひとつだけで,他は中規模私鉄の始終点ばかり.その中でもさらに意外だったのは,たった一つの“大ターミナル”である阪和電鉄(!)天王寺駅だった.今回いわれてみるまでは,あれが“大屋根”であるという認識,全くなかったのだ.
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深夜か早朝かと思うほど,みごとに人がいない,天王寺駅阪和線ホームと大屋根.ここではオリジナルのカラーでお目にかけよう.写真:西 和之

そして締めくくりは,荒井友光作品集の第5回目.名古屋駅とその周辺で見かけた客車の中から,木造車と買収者と,そして戦災復旧車をピックアップしてみた.もちろん,“まっとうな”客車もたくさん撮影しておられるのだけれど,あえて編者の好みを前面に押し出しての選択であった.もっとも,解説をお願いした藤田吾郎さんからは,紛れ込ませておいたマイ38などは“不適格(?)”ととして除外されてしまったから,僕の好みなど,まだまだまっとうなのかもしれない(本当か?).
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戦災復旧客車の中で見ることができなかったのが,これ.国電の叩き直しは何輛か遭遇しているが,半流線形の妻板を持つグループには,ついにお目にかかることができなかった.写真はクハ55131を復旧したオハ71からスユニ7252に改造された車輛である.このブログのためにトリミングを変えてみたら,隣につながるのは2軸ボギーのTR71台車を履いた,二重屋根の2・3等合造車である.名古屋 昭和33/1958年5月5日 写真:荒井友光
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今回登場する客車の中で,もっとも古そうなのがこれ.明治41/1908年新橋工場製ボギー車.もっとも撮影は昭和29/1954年だから,車齢は50年に達していない.現在では半世紀を越した電車が大手私鉄でたくさん走っている…木造車と全金属製車とでは比較にならないけれど.写真:荒井友光

ということで,現代から明治後期までの車輛や建築物が勢揃いしているレイル No.115.ちょっとでも興味を持ってくださった方は,お見逃しなく全国の有名書店や模型店,またはe-shumi.jpでお求めくださいますよう,お願いいたします.