昨日から,千葉の幕張メッセで“第4回 鉄道技術展”が開催されている.主催はフジサンケイ ビジネスアイ(日本工業新聞社).平成22/2010年に始まったこの催し,いままではスケジュールが合わず,いつもあちこちから案内をもらっているにもかかわらず,行くことができなかった.
  規模は回を重ねるにつれて大きくなり,今回は約450もの企業や団体が出展.とりわけ目を惹くのが,ドイツ鉄道産業界から29もの会社が参加すること.さ らにドイツ鉄道工業協会副会長による記者会見も行なわれるということで,何とか(むりやり)仕事の都合をつけて,9時半のオープニングセレモニーから初参 加.

※今回はいつもと比べ約2倍の長さです.ご注意ください.

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会場内のドイツパビリオンで行なわれた,経営学修士 アンドレアス ベッカー(Dipl.-Kfm. Andreas BECKER)氏による記者会見.ドイツ鉄道産業界の現状報告とともに,ドイツと日本の鉄道の印象比較などが語られた.

具 体的には,このドイツのドイツ鉄道工業協会の加盟社は中堅企業が主体だが,産業全体の基盤を支えている重要な会社が多いこと.2013年のドイツ鉄道産業 界の総売上げは約100億ユーロ(約1兆3500億円)でありそのうちの約半分が輸出で残りの半分が国内需要であること.
 日本の鉄道で“少し”羨ましいのは,列車の遅延が極めて少ないという事実.日本の鉄道事業者などにお願いしたいのは,ドイツ企業とのおつきあいに際しては,予め,クレーム対応などについても細かくルールを相談して決め,責任の分担を契約で明確にして欲しいこと…….
 ドイツ鉄道が中国製の鉄道関係資材を購入する…中国への市場開放…を示唆したことについてどう思うか,という僕の質問に対しては,
“市 場開放そのものについては,なんら反対する理由を持っていないが,前提は,それが公正な競争のもとで実施されることである.開放に際して政治的な,例えば 輸出に際してその国の政府からの補助金やそれに類する政策が実施されるとすれば,それは公正な競争とはいえない.それはさらに,安全性を確保できないとい う可能性にも繋がるだろう.
 という回答だった.

会場内には,お馴染みの会社から,これまでは触れる機会のなかった分野の会社までさまざま.とても1日では全部を回りきれない…….印象に残った4件をご紹介することとする.
まず,7月のUIC世界高速鉄道会議では模型が展示された川崎重工のFRP製台車“ef WING”.今回はなにやらおめかしを施された現物が会場に持ち込まれていた.

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“すわ新型?”と思ったが,軸箱周辺などがおめかしされて印象が変化していたのだった.今年度は熊本電鉄のもと東京地下鉄1000系用2輛分が納入されることが決まっているが,“その次”も,大いに期待される,“ef WING”である.

現物といえば,三菱重工埼玉新都市交通向けの最新型2020系を会場内に展示.車内も開放された側扉から一望することができた.

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三菱重工製の埼玉新都市交通向け最新型2020系.東京の日暮里舎人ライナー用新型車とデザインに共通点が多いのも,同然のことだろう.車外妻板の銘板は早くも“2016年”となっていた.

一方,車輛模型が展示されていたのは近畿車輌.20m 級両運転台の次世代省エネルギー型バッテリー電車“HARMO”である.3年前に登場した“Smart BEST”が2輛ユニットだったのに対して,閑散線区での運転に好適の仕様とした.機器類の軽量化と小型化に力を注いで実現.床下に吊ることができなかっ た機器については屋根上に分散している.
 なお,近畿車輌のバッテリー電車の特徴はといえば,大容量バッテリーと制御機器を核とした電車システムだが,パンタグラフとエンジン発電機の両方を搭載しており,バッテリーへの給電方式を運用に応じて選択可能である,という点にある.

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近 畿車輛のバッテリー電車“HARMO”の模型.システムとしてはJR東日本のEV-E301系と近似性が強いが,同社ではあえてハイブリッドとは称してい ない.両運転台車では,大型車椅子対応トイレ設置などのため,乗車定員を確保するのが難しくなっているが,かといって2輛編成では輸送力過剰という線区も あるということで開発された.現車は,そう遠からぬうちに姿を見せるだろうか.

出展社の中に“音楽館” の名前を見つけたときは,とても意外だったが,展示ブースを訪問して納得と驚きが.それは,“音楽館製のホームドア”が展示稼動していたこと.最新の 103系シミュレーターと連携して作動する展示なのだが,横バー式のそれは,バーに足を掛ける輩をどうするのかとか,ドアの隙間から子供がすり抜けないか とかなどの問題はあるものの,それらを承知の上で“ないよりはずっとよいでしょう”という向谷 実さんの気持ちを具現化したこのホームドア,これまでより も安価で軽量なホームドアであることは間違いない.小規模な鉄道事業者にアピールしていきたいとのことであった.

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音楽館製のホームドア.横バー式が最大の特徴.戸袋部も透明にして,ホームと車輛との間の視界を遮らないようにしている.そのことで軽量化が実現し,既存ホームへの補強工事も少なくて済む.さらにシステムも簡便にし,導入コストを抑えている.

写真の掲載可能数が尽きた.
ドイツパビリオンの中には液体変速機で有名なフォイトターボ社も 含まれていて,同社の密連の実物が展示されており,現物を目の前にして日本法人のスタッフからその構造などを説明していただいたのだけれど,まだまだ不思 議な点が少なくない……そうそう,この連結器はScharfenberg-Schakuというのだが,そのカタカナ表記は“シャルフェンベルク”だった.日本法人でも散々悩んだ末の結論とのことなので,今後は僕も,そのように記そうと思う.

新日鐵住金では防音車輪と弾性車輪との違いを改めて教えてもらった.てつでん東邦電気工業では踏切警報燈の新バリエーションを発見できた.不二電機工業では近年の車側知らせ燈や尾燈レンズがなぜ透明になったのか,あるいは同社製側扉開閉知らせ燈の赤い色は色弱の人にも判別しやすい色に工夫されていることを教わった.栃木屋では床下機器箱のロック機構設計の苦労をうかがった.ユタカ製作所では,ジャンパ栓や電気連結器開発のエピソード(の,ごく一部)を聞かせていただいた.
 同時開催の“橋梁・トンネル技術展”は,かろうじて一回りしたところで閉場時間となってしまった.

この“第4回 鉄道技術展”.会期は明日13日まで.趣味人対象の催しではないが,来場資格に制限はない.入場料は2,000円で,ウェブで事前登録すれば無料となる.
 音楽館のホームドアとドイツパビリオンについては,レールアンドテック出版の“鉄道車両と技術”最新号に詳しく掲載されている.興味のある方は,ぜひ.

※2015.11.13:近畿車輌“HARMO”に関して加筆修正.

※なお,ここに掲載した写真は,報道用として撮影したものです.