“鉄道”というものを趣味の対象としていると,知らず知らずのうちに興味の対象が拡がっていって,地理や機械や電気や歴史の類は当然のこととして, 物理化学全般,鉱工業,民俗,植物,農林業,気象,文学,そして政治までも……あらゆる森羅万象に関心の触手を伸ばしていることに,ある時,気づかされる ことになる.

そんな関連事象の中でも,やっぱり“人が作ったもの”には大いに目が向く.“煉瓦”もそのひとつ.鉄道線路から離れた街の中で も,煉瓦はたくさんある.数え切れない.中には,ごく最近になって,構造材としてではなく意匠として煉瓦を使って新築した住宅まである.そんな,煉瓦造り の家や塀などに行き当たったら,新しい古いは問わず,よほどの急用でもない限り,しばし足を止めることになる.

僕にとって東京の中で身近な煉瓦といえば,文京区にある“六義園(りくぎえん)”.最初に見たのは40年以上も前のこと.すぐ近くにある出版社の交友社へ行く際に,駒込駅からの通り道になるから.
  六義園そのものは江戸時代,五代将軍・徳川綱吉の時代に築かれた庭園を,明治時代に三菱の創業家である岩崎家が再整備,昭和になって東京市に寄贈されたも の.東京では,枝垂れ桜が美しい庭園として有名な存在.もっとも,僕が興味関心を持つのは外周の塀.なんだか積み方がお洒落というか,不思議なのだ.どこ がかといえば,地面から真ん中よりやや上までは長手積みなのに,途中に少し出っ張った小口積みの段があり,その上はアメリカ積みのような…….
  調べてみたら,この煉瓦は明治時代のものではなくて,昭和20年代に公園として整備するに際して築かれたのだという.ならば,この不思議な積み方も納得で きるというもの.昭和20年代になっても煉瓦塀が新しく作られていたというのは,この塀を調べていて,初めて知ったことである.

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駒込の駅から山手線の線路の内側にずっと続く六義園の煉瓦塀.お洒落というか,不思議な積み方である

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角地には休憩できるスペースが設けられているが,その植込みの部分は,正真正銘のイギリス積みである.おそらくは本体とは構築された年代が異なるのだろう.

そして,ほんのつい最近,六義園と同じ文京区で煉瓦塀を“発見”した.存在そのものは,もう10年以上前から知っていたのだけれど,今回発見したのは,その積み方.

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実に綺麗なドイツ積み…小口積みの煉瓦塀.鈍角になった角の部分の処理が,ちょっと難しいのと,門柱の両脇に部分的にブロック状のコンクリートが挟まっているのが不思議.

かくのごとく,線路が見えないところを歩いているつもりでも,まったく安心できないのが,鉄道の趣味.まったく奥が深いことである.