いろいろな時事の話題が続いて,ちょっと時間が経ってしまったが,6月下旬にドイツ観光局の局長,ペーター・ブルーメンシュテンゲル(Peter Blumenstengel)さんの引退を惜しむパーティーが企画され,案内をいただいた.発起人にはルフトハンザドイツ航空日本支社長であるオットー・ベンツ(Otto Benz)さんをはじめとするお歴々の名前がズラリ.本当にお邪魔していいのかどうか,ちょっとかなり悩んだのだけれど,結局のところは“恐いもの見たさ(!?)”もあって,参加することにした.
 会場は麻布台の東京アメリカンクラブ.昭和のはじめに設立された,主に米国人のための会員制社交クラブで,名前は随分以前から知っていていたものの,当然のことながら全く縁はなかった.ただ,現在の敷地にはかつて南満洲鉄道東京支社があったということから,好奇心だけは持ち続けていた存在ではあった.
 実は5月末のベルリン観光局プレゼンテーション会 場もこの東京アメリカンクラブだった.その時には,かつて“東京で東西が腹の探り合いをしている”といわれた,ロシア大使館(その頃はソ連であるわけだ が)との位置関係を再確認したかったこともあって,少し早めに現地へ向かい,その成果として,“日本経緯度原点”なる意外な発見もあったりした.

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日本経緯度原点を入り口から見る.背景は,東京アメリカンクラブの敷地の一部を再開発して建設されたマンション.画面の左外にはアフガニスタン大使館がある.経緯度原点の管轄は国土地理院.最近では東北地方太平洋沖地震のあとに位置を修正しているのだという.

前 段が長くなった.この会の正式名称は“ペーターさんに感謝する会”.ドイツ再統合直前の1990年に日本に着任し,以来24年間,ずっと日本とドイツの観 光振興に力を尽くしてこられたわけだから,“感謝”の人たちは本当に大勢いるはず…実際,会場の大ホールは,150人ものお客様で溢れるほどだった.
 主賓のペーターさん.来歴はといえば,1949年にケムニッツの近くで生まれ,まもなく一家でデュセルドルフに“エスケープ”.ヴュルツブルク(Wuerzburg)大学で政治経済修士となる.修了後は国際青年国際交流機構(International Youth Exchange)のツアーオペレーターを経験した後,タイ国際航空の中欧地区セールスマネージャーを12年間勤め,1990年に来日…….常に“旅行”とつきあってきた人といえる.

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開会前,大好きなハンブルクのHOLSTENビールを手に満面笑顔のペーターさん.僕が知らなかったドイツをたくさん教えてくださったことに,とってもとっても感謝.記事の執筆にも大いに反映できている,と,思っているのだが

こ の会は純粋にプライベートな催しなので,だからドレスコードも“スマートカジュアル(…これが難しくて頭を悩ませることにもなるのだけれど……).だか ら,いくつかの挨拶が終わればあとは自由な歓談に…なるはずだったのだけれど,ここで司会進行役を務めるドイツ観光局ディレクターの西山さんからサプライ ズ.
 それは日本旅行業協会(JATA)からの特別表彰.同協会の会長である菊間潤吾さんが,なんとかペーターさんの功績を顕彰したいと考え,同協会の規定を隅から隅まで読み直した末にようやく発見した解釈を基にして実現したのだという.
 顕彰に対するご本人の謝辞では,それまでに語られたエピソードへの“反論”がなされたりして,会場は大いに盛り上がった.
 続いてペーターさんから家族の紹介があり,ご子息からはお父さんに感謝の言葉が贈られ,記念写真撮影会のあと,ようやく“乾杯!”

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“乾杯!”の挨拶に聞き入る参会者.2007年に新築なった東京アメリカンクラブのホールはこんな様子.ただし会員専用の施設はまったく別棟となっている.

セレモニーが終わると,会場は大ベテランから現役若手まで,垣根のない語らいで満たされた.僕にも10数年ぶりの懐かしい再会,まったく新しいが出会いがいくつかあって,やっと馴染むことができた…頃にはもう宴も半ばを過ぎ,そして新しい局長の紹介となった.

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ペーターさんに紹介され,自己紹介する新局長のレイカート・ケッテルハーケ(Rijkert Kettelhake)さん.

ケッテルハーケさん…ペーターさんと呼ぶなら,ここはレイカートさん,だろうか…は,1981年のロンドン事務所を振り出しに,欧州各国の事務所で支局長などを歴任,日本への直前はミラノ事務所所長だったという.
 自己紹介後の僕との個別の会話で,日本勤務は初めてだけれど,だからこそ好奇心溢れる新しい目で日本を観察し,ドイツと日本を,より強く結びつけたいという抱負を語ってくださった.

ドイツ再統一25周年を目前に控え,レイカートさんによる統括のもとでドイツ観光局が,日本の人たちにドイツの鉄道への関心をいかにして高めてくれるのか,大いに期待しているところである.