いわゆる“北陸新幹線”,気がつけば線路の建設も随分と進み,列車の愛称や運転体系の大枠も発表された.
2月上旬には大宮と長野の間で,JR西日本とJR東日本が共同開発した最初の新幹線電車として意義深い,E7系電車の試乗会も催されて僕も参加した.その模様は本誌の3月号Coffee Cupでお伝えした.
そうこうしているうちに,4月1日にはJR西日本の車両基地である白山総合車両所が設立されて,開業を目指した動きはますます加速している.
そんな中の4月7日,神戸の川崎重工からW7系が船積みされる様子を報道公開するというので,本誌でも来住憲司さんに参加してもらった.
川崎重工はその立地から,専用の岸壁を持っていて,輸出用車輛はもちろん,国内向けでも船が便利なときには,ここから出荷される.在来線での甲種輸送が難
しい新幹線用車輛などは,ほぼすべてが船によって車輛基地の近くの港まで運ばれる.本誌では,JR西日本の500系が博多へ運ばれるときに取材させても
らった記憶があるし,JR東日本のE2系は,到着地である仙台港で待ち受けたことがある.最近の東北新幹線用E5系やE7系も,川崎重工製作分はここから
仙台へ向けて出荷された.
そして今回はW7系というわけである.
クレーンで吊り上げられた12号車.よぉく見れば,ロゴに添えられた社名が,“WEST JAPAN……”当たり前といえば当たり前だが.写真:来住憲司
試
乗記でも記したとおり,E7系とW7系とは,ほとんど瓜二つ.送ってもらった写真を矯めつ眇めつ眺めてみても,ほんとうに同じである.僅かに違うのはロゴ
に添えられた社名表記と,形式がE7でなくてW7になっていること.でも番号区分は同じで,300系や700系では○○番代として区別していた,それも,
ない.ただ,号車ごとの番代区分は異なっていて,たとえば7号車は,E7系ではE725-200だが,W7系ではE725-300という具合.あとは編成
番号がW1となっていること,あたりか.
!編成番号W1といえば“あの”500系の16輛編成当時の編成番号ではないか.道理でE7/W7系の先頭部に500系の面影が残っているわけだ……ではなくて…….でも,なんとなく,JR西日本の人たちの,500系への想いを感じさせてくれるではないか.
探していたら,もうひとつ見つけた.それは妻板に記された所属表記の“金ハク”.金沢支社の白山総合車両所を示しているのは,明らか.そういえば,妻板に号車番号を記しているのは,他ではあまり見かけないかもしれない.写真:来住憲司
逆に“同じ”も見つけた.それは屋根に記された号車番号.
これはJR東日本のE7系にも記されているのを,長野駅で気がついたもので,これまでのJR東日本の新幹線車輛には見かけなかったので,“JR東日本でも
始めたのか”と思ったのだが,W7系にも記されているということは,おそらくはJR西日本の主導で,E7系にも記されたと見るのが妥当だろう.そしてその
目的は,車輛基地での検査時などに号車の確認を容易にする,ということ.とりわけ屋根上点検台からは車体側面の番号表記は読み取ることができないから,こ
の方法が有効になるわけである.
起源は,JR東海で300系の屋根に号車番号を記しはじめた1990年代前半にまで遡る.
本誌の平成
6/1994年10月号“車輛の視点 JR東海/西日本 新幹線300系電車”には,“最近の全般検査入場編成から,屋根に号車番号を示す大きな数字が描
かれるようになった.この数字は車輛の両端山側に,海側から読み取ることができる方向で描かれている.色は黄色である”と記されているから,300系初期
車の新造時にはなくて,その頃に始まったことに,間違いない.
台船に載せられた10号車と11号車.各車端部に白い数字が見えるだろう.写真:来住憲司
と,車輛観察の題材は尽きない…….
この日と9日の2回に分けて船積みされたW7形の第1編成は,間もなく金沢港に到着して陸揚げ,先の白山総合車両所へと搬入されることになる.
本線での試運転が始まるのは夏頃と見込まれている.そして来春には,開業!である.