パソコンの前に縛りつけられているか,慌ただしく外出するか,そのどちらかしかないという毎日を過ごしているうちに,暦は早くも節分…立春を過ぎてしまった.
そんな日々の中,1月25日朝には群馬県の渋川市街地の一角に立つことになった.
その広場には仮設の舞台が設けられ,別の一角には音楽バンドの準備も始まった.道路との柵には“おかえりなさいチンチン電車”のたれ幕が.
渋川でチンチン電車といえば,いわゆる伊香保電車しかない.けれど,廃線は今からもう60年近くも前のこと.車輛だって,廃止からしばらくの間はガソリン
スタンドの事務所になっていたりしたものだが,もう長い間,渋川市内の平形医院で待合室などに活用されている27号しかないはず.それも譲り受けたのは車
体だけ.
はて? と思った人が多いだろう.
……と,10時半過ぎ,大型低床トレーラーに載せられて登場したのは,紛うことなき27号.しかも台車付き.
会場の賑わいは最高潮に達した.
一角に設けられた仮設建屋では壁面を使って伊香保電車の写真展が開催され,その中には,わがレイル10号の表紙も含まれていた.建物の中では伊香保電車の思い出を語る講演会も開催される模様.
特設会場に到着した伊香保電車27号.会場となった渋川ネイブルスクエアに面した道路は,かつて伊香保への線路が敷かれていた.坂道を少し下った交叉点の名前は“四つ角”.停留所の名前としても使われていた.
披露会場の一角に設けられた仮設建屋の壁面で開催されていた伊香保電車の写真展.出入口には講演会の案内看板が.
やってきた27号.実は渋川市が伊香保温泉活性化事業の一環として,平形医院から車体を譲り受け,台車を合体させての復原工事を進めていたものである.この日,めでたく工事が一段落して現地へ運び込まれる途中でのお披露目となった次第である.
この事業には,実は僕も,ほんの少しだけながらお役に立つことができたものだから,晴れ姿を早く見たくて,早朝から渋川へ駆け付けたというわけである.
この日のイベントについて,事前の広報はほとんどなかったから,馳せ参じたのはほとんどが地元の人だったのだが,前日になって群馬県のウェブサイトや一部の新聞のインターネット版で報じられ,N社のTさんはじめ,顔見知りのファンとも数人,お目にかかることになった.その情報収集力と熱心さには頭が下がる.
記念写真撮影に興じる地元の人たち.組み合わせられた台車は.厳密にいえばオリジナルとは異なる形式だが,奇しくも……ということで全く無縁の台車ではない.
そして昔の線路跡を辿って無事に伊香保温泉街へ到着した27号.これからクレーンで吊られ,既に敷かれた線路の上に下ろされる.
渋川市では,やってきた27号の周辺整備を4月下旬までに完成させる予定.それまでにはポールは装着され,客室もさらに整備される.完成の日が楽しみである.
この保存に際しての動きは,深く関与された方によって,4月末の披露の後に詳しくレポートしていただけることになっている.お楽しみに.