10月の“C55とC57を愛でる写真展”,11月の“北辺のローカル私鉄”に続いて,同じフォトギャラリーUCでの写真展である.今度は猪井貴志さんの“鉄道日和”.
 猪井さんといえば,今は亡き真島満秀さんの事務所で重鎮として活躍,真島さんとは全く異なったカメラアイで,独自のファンを掴んできたフォトグラファーである.

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会場入り口に掲げられた最初の写真.古い桜の大木の影に包み込まれるように走る気動車の姿は,猪井さんの優しさが湧き出ている1枚だと思う.

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いつもの(?)コーナー.今回は観覧者がいない瞬間を狙ってみた.どの写真からも,その場の空気が伝わってくる.“臨場感”…“空気感”…言葉にはでいない,“なにか”が.それを実感するためには,会場に足を運ぶしか,ない.

写 真って,なんだろうと,いつも思っている.僕が撮る写真は,あくまでも記録.鉄道写真の多くは,そうだろう.世の中の風景写真だって,ほとんどは記録写真 である.鉄道写真は風景写真の一ジャンルであるとも,いえる.その時代時代の情景を記録に留めるのが,写真の大きな役割だ,とは,僕が先生とも親とも思っ ている西尾克三郎さんから,僕が少年のころに聞かされた,大事な言葉のひとつである.
 では鉄道写真や風景写真に芸術性はないのかといえば,そん なことはない,とも思う. 車輛を記録するための,いわゆる形式写真だって,その車輛が格好よく写っていれば,それはある意味,芸術写真だし,芸術性を 狙った風景写真…スナップだって,記録性を込めることは,いくらだって,できるわけだし.
 ただ,常々思っているのは,最初から“藝術”を謳っている写真と鉄道写真とは,同じ“写真”を名乗っていても,根本は異なるものだ,ということ.その考えの根拠は,西尾さんの言葉,である.

猪井さんの写真は,その記録と芸術性が上手く融合している,好例のひとつだと,僕は思う.

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大好きなお酒を片手に,もっともお気に入りの写真の前で,ポーズ.この笑顔こそが,猪井さんの写真の“すべて”かもしれない.

写真展 鉄道日和
12月2日(月)から12月20日まで 10時から18時まで
土日及び祝祭日が休館
電話:03-3833-7641
フォトギャラリーUC

最寄り駅は山手線の御徒町,大江戸線の上野御徒町,千代田線の湯島,または銀座線の上野広小路.

※ここに掲載した会場風景は,ブログへの掲載のため事前に許可を得て撮影したものです.