現在,東日本鉄道文化財団の旧新橋停車場鉄道歴史展示室では,企画展“情景作家-昭和のミニチュア-”が開催されている.その全容は当社の平野が,4月8日付けのここでご紹介しているし,本誌の5月号にも記事を組んだので,既にご覧になっている方も多いだろう.
 幸いにして来場者数は好調に推移し,全体を纏められた,“さかつうギャラリー”坂本憲二さんの丁寧な対応のお蔭もあって,実際に訪問された方の評価も高いようである.
  僕もオープニング当日に伺って,久し振りに“摂津鉄道”との対面を果したのだけれど,“レイアウト制作に完成はない”という,古くからの格言(?)のまま に,入念な手入れが施された摂津鉄道の倉本駅と蔵本村を堪能したのだけれど,ある日,どこからともなく(!),作者である坂本 衛さんが会場に見えるよ! という情報がもたらされたので,5月下旬の日曜日,汐留まで馳せ参じたという次第.

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倉本駅から見た蔵本村.この情景は,僕にとって日本の山村風景の原点でもある.

約 束の時刻ぴったりにご家族とともに会場に到着された坂本 衛さんは,相変わらずお元気で,久し振りの再会を喜んでくださった.実はこの企画展のスタート時 点で,東日本鉄道文化財団からアドバイスを求められ,それに対して提案したことのひとつが“摂津鉄道を展示したら?”であり,最初に坂本 衛さんに打診し たのが僕だった,という経緯がある.だから,快くお引き受けくださったお礼を申し上げたかった,という“用件”もあったのである.

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自作を眺める坂本 衛さん.愛しいわが子を眺めるような眼差しが,とても印象的だった

昭 和30年代後半から40年代にかけての鉄道模型趣味誌が,当時の少年に与えた影響はとてつもなく大きい.そのひとつが,坂本 衛さんの鉄道設備の解説記事 と摂津鉄道の建設記だった.それから約50年を経た今,こうやって作品を間近に観察し,さらに,作者と親しくお話ができるだなんて,あのころには,とても 叶うとは思えない,夢だった.いや,今でも夢を見ているような,気がしないでもない.

話はやや余談となるが,あの頃,もうひとつ教えられることが多かったのが,河田耕一さんによる,一連のシーナリーやストラクチャーの紹介記事だった.今年は,それらのうちの“冬の島ヶ原”をレイル86号に再録するという,これまた夢のようなことが実現した.

まぁ,こんなことやっているものだから,あちこちで皆さんから“なんだか仕事してる感じじゃないよねぇ”“遊んでるよね”といわれてしまうのだろう.すみません.

さて,“情景作家 -昭和のミニチュア-”展は,7月21日まで.終了まで,まだひと月以上ある.時間を作って“摂津鉄道”に接し,“模型ごころ”の濃度を高めていただきたいと思う.
 また6月初旬には,諸星昭弘さん,戸塚恵子さん,山田卓二さんの作品のうち一部が展示替えとなった.だから,既に訪問したという人も,ぜひ再訪を.ちなみに展示替えの模様は,文化財団のスタッフブログで見ることができる.

※鉄道歴史展示室は撮影禁止です.ここに掲載した写真は,予め許可を得て撮影したものです.