10月は,先週のここでお伝えした,川上杜人さんの写真集のほかに,もうひとつの新刊が完成した.それがレイル84 江若鉄道である.
 江若鉄道といえば,昭和44/1969年の10月末まで,琵琶湖の西岸を大津から近江今津まで走っていた私鉄.昨年秋に開催された,江若鉄道のレイアウトセクションお披露目会に際して集まった同好の士から“模型だけでなく実物についても《レイル》で纏めようじゃないか”と提案があり,それがちょうど1年たって,出来上がったというわけである.
  その同好の士とは,江若鉄道の現役時代を知る,同志社大学鉄道同好会OBのみなさんのこと.文章を湯口 徹さん,藤本哲男さん,西村雅幸さん,福田静二さ んが執筆,写真は執筆者のほかにも大勢の方から協力を得られた.加えて通史は大津市歴史博物館の学芸員,木津 勝さんがまとめられた.
 そしてそれらを福田さんが一手に纏めてくださったのだった.

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巻頭を飾る,福田さん撮影によるキハ11とハフ7による近江今津行き列車.江若鉄道といえば気動車,江若の気動車といえば正面3枚窓の半流線形.これが,多 くの人々にとっての江若鉄道の印象ではなかろうか.撮影場所は 白鬚浜と高島町の間.この区間の線路敷きは湖西線に活用されており,今もなお好撮影地とし て多くのファンでにぎわっている.昭和44/1969年10月4日

僕と江若鉄道との関わりは,前出のブログにも記した通り,さほど深いものはない.ただ,廃止直後の三井寺下機関区で見た光景は,わずかな時間のできごとにもかかわらず,40年以上を経た今も,強く印象に残っている.

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写真は昭和15/1940年の三井寺下で給炭中の元鉄道省1070形1107.蒸気機関車もユニークな“品揃え”だった.写真:大橋一央

江 若鉄道には,気動車,蒸気機関車,ディーゼル機関車,客車,それぞれにユニークな車輛が勢揃いしていた.開業当初の車輛については極めて写真に乏しいのだ けれど,今回は写真のみならず,図面資料も湯口さんの秘蔵資料から,1・2号機と3号機の組立図,そして数多くの客車竣功図表をご提供いただいて掲載して いる.
 とりわけ客車は,30年以上前に湯口さんが写真複写されていた,開業に際して用意された2軸車の青焼き組立図を,編集部で白黒反転の上で 補整仕上げを行ない,線画として掲載した.これらは機関車組立図とともに,本邦初公開である.ちょっとでも図面に興味のある方なら必見の貴重資料だろう.

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そしてつい先週,西村雅幸さんは浜大津駅周辺のレイアウトセクションを完成させ,昨年と同じ会場で披露された.詳しい写真と記事は近日中の“とれいん”をお待ちいただくとして,とりあえず,今週末にも公開されるので,都合の合う方は,ぜひ現地へお出かけいただきたいと思う.

-鉄道模型走行会-
【日時】11月3・4日 10時から18時まで
【入場】200円(一律)
【場所】スカイプラザ浜大津6階 リスニングルーム"響"
◆毎年恒例のHOゲージ鉄道模型走行会
◆江若、京阪浜大津駅のある懐かしい町並みを再現した精巧なジオラマを展示(製作:同志社大学鉄道同好会OB 西村雅幸氏)
◆宮田氏によるジオラマも展示(11月3・4日のみ)

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