昨年は8月18日のここでお伝えした,東京雑司が谷の三愚舎ぎゃらりーでの写真展が,今年はあした,8月17日からはじまる.
今回のテーマは,“炭砿(やま)の機関車”.
 炭砿といえば,世界中どこでも,産出される石炭を運搬する手段としての鉄道が欠かせない存在.いつものメンバーである杉 行夫さん,蔵重信隆さん,野口信夫さん,金澤 忠さんの4人が撮影した石炭を運ぶための鉄道の情景を披露しようというのが,今回の趣向.
 メインは台湾北部にあった瑞三炭砿.杉さんが蒸機が主役だった時代を,蔵重さんが衰退期を,そして金澤さんが内燃化されてからの姿を紹介.グループ展ならではの,時代を追ったリレー展示が実現した.

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今年のメインテーマ,瑞三炭砿の写真の数々.手前左が杉さんの作品群.奥に蔵重さんと金澤さんの作品が並ぶ.まだ掲示作業中だったから,実際には様子が少し異なっているかもしれない.

瑞三のとなりにはインドのティポン炭砿.これは野口さんの作品だ.すべての写真からは,昨年の年末から今年の1月に掛けて滞在した野口さんの感動が,生のままで伝わってくる

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インド,アッサム州ティポン炭砿の情景.とれいん誌では都築雅人さんの作品を2008年5月号で紹介しているが,目が変れば風景も違ってくるといういい見本.加えて会場の一隅には野口さんが描いたバグナルの絵も展示されている.

インドの隣りはどこかといえば中国四川省重慶の“グース”.惜しくも今年の初夏に廃止されてしまったそうだが,“煙一筋”だったはずの蔵重さんですらのめり込んでしまう魅力はどの辺にあったのか…….これも作品群を見ていただくのが,答えへのもっとも早い道筋だろう.

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この写真はどこに掲示しようか……悩みつつ作業する蔵重さん.これも写真展の愉しみの一つだろう.

第2室(会場入り口から右の部屋)には,日本国内の運炭鉄道.メインは,野口さん撮影の,我が国鉄最後の蒸機列車と,その前後の夕張線.
 傍らには昭和52/1977年の釧路,太平洋炭砿.ここは日本最後の運炭鉄道として今もなお運転されているが,この写真の“のっぽの電機”は,残念ながら,つい先日,引退してしまった.こちらは金澤さんの作品である.

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第2室に展示された,昭和50/1975年12月の夕張線と,昭和52/1977年の太平洋炭砿.どちらも撮影から35年以上の歳月が経ってしまった.“ついこないだのことのような気がするんだけどなぁ”というのは,“その時代”を実体験した人に共通の感覚だろう.

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飾り付け作業が一段落したところで記念写真.一人でも多くの方に見ていただきたい写真展である.会期は9月2日まで.木曜日は休館である.