事務所の地元である江古田駅のことは,改造工事着手から完成に至るまで,何度も繰り返してここで記してきた.今は駅前とその周辺で整備の真っ盛り.つい先日も,南口のアスファルト舗装部分が急速に石を敷き詰めたオシャレな路面に変身して驚いた.
  江古田駅は,改造によってホームが延伸され,10輛編成が停車できるようになったわけだが,その結果,東京都内の池袋線で8輛編成しか停まることができな い駅は,椎名町駅だけとなった.それで,椎名町駅はどうなるのかと注目していたら,江古田駅の工事完了とほぼ同時に,駅の池袋方の踏切りを移設し,併せて 橋上駅に改造する工事が始まった.なにしろホームの両側に踏切りがあって,そのままではホームをのばす余地がまったくなかったものだから,どういう手法が 採られるのか注目していたのである.
 橋上駅部分は昨年のうちに完成して,今はホーム上屋更新と池袋方へのホーム延長工事が実施されているところ.
 この駅のホーム上屋にも,かつての江古田駅と同様,多くの古レールが使われていたので,それがどうなるのか,おおいに気になっていた.
 近い上に,出掛けるときには,しばしば通るのにもかかわらず,では降りて観察してというと,なかなか時間が取れなかったのだけれど,今日の夕方,ようやく少しばかりの時間を盗み出して観察することができたのだった.
  あれほど随所に存在した古レールも,元の駅事務所付近は構造物そのものが一新されたので完全に消滅.跨線橋も旧いものは放棄されて新造となったので,その 柱として使われていたレールも消滅.上屋の柱も池袋方は事務所や跨線橋の更新に伴って新規に制作されたので失われ,僅かにホームの所沢方の何本かに見いだ すことができたに過ぎなかった.

MT-20120315-01
ホームの池袋方端部.立っているのが所沢方面行き,向う側が池袋行き.こちら側はほぼ完成している.向う側の,途切れているあたりに,かつては踏切りがあった.それが,道路橋の向う側に移設されたので,延伸が可能になったというわけである.

MT-20120315-02
池袋行きホームの所沢方.かろうじて残った古レールの柱.塗装が更新されていたので,“もしかしたら残るのか?”と期待を抱かせる.もっとも,その塗装更新の結果として,銘は以前にも増して判読しづらくなっていた.

MT-20120315-03
2本のホームともに,新造の上屋と旧来の上屋の途中に,こんな構造物が作られつつあった.なんだか左側のレールが使われている,古い上屋が残りそうな雰囲気ではないか.写真は池袋行きホーム.

MT-20120315-04
僅かに読み取ることができたうちの1本.テネシー製.他には何本かのGHHの文字が判読できた.

この辺り,詳しくは本誌2005年1月号の西武鉄道特集108頁に“RailArt 西武沿線は古レールの宝箱”という記事があるので,お持ちの方はご参照いただければ幸い(残念ながら売り切れです).
  “いつでも行ける”は,“いつまでも行けない”と同義であるのだが,工事の進捗具合で気になっていることがあった.それは,この駅をよく利用している,ウ チの平井から“工事の仮囲いを使って,昔の椎名町駅の写真展をやっているよ”と聞かされていたから.仮囲いを使っているということは,その部分が完成に近 づけば撤去されるということである.

MT-20120315-05
なんとか間に合った“写真展”.橋上駅部分の,階段工事の囲いが会場だった.昭和40年頃の風景が多いけれど,中には,この駅のホームが島式1本だった昭和30年頃の写真も何枚か含まれていた.これは,はじめて見る光景.

駅の工事もさることながら,さり気なく展示された貴重な写真におおいに惹かれる,椎名町駅だった.興味のある方は,早めに訪問されるのがいいだろう.