今から50年前,伊豆半島東海岸に新しい鉄道が開通した.伊豆急行がそれで,国鉄伊東線の伊東からほぼ海岸線に沿って下田まで,約45kmの路線だった.
 開業に際しては,会社名に“鉄道”とつかない鉄道会社であることなど,さまざま話題になったようだが,子供心に衝撃的な印象を受けたのは,なんといっても電車の色.

形 態的には,前頭部は貫通扉付きで貫通路上部に2基の前照燈という東急車輛標準デザイン.幅も天地も大きな2段窓と,できるだけ両端に寄せられた片開きド ア.室内は固定向かい合わせながらも戸袋部分を除いてクロスシートを配置…….国鉄の153系を私鉄でモディファイしたらこうなった,という全体コンセプ トに加え,オーシャンブルーと称するブルー濃淡の塗り分けは,その頃の日本の鉄道では,とてつもなく斬新なカラーリングだった.
 と,これらは後年,あちこちから仕入れた知識ではある.

伊 豆急行では,より積極的な観光客誘致を目的として,昭和60/1985年に2100系“リゾート21”を登場させた.足廻りは100系の活用品ながら,海 の眺望を重視した座席配置とそれに合わせて車体の両側で全く異なる窓配置が採用され,さらには超大型の前面窓による前面展望と,伊豆観光の旗手にふさわし いデザインが,世間の度肝を抜いたものである.
 リゾート21は3次車から完全新製となって東京駅への乗り入れもスタート,さらに第5編成まで製造されたのは,みなさんよくご存じのこと.

歳月の経つのは早いもの.今年は伊豆急行開業50周年,リゾート21登場26周年である.
 リゾート21も最初の2編成は廃車となって,行く末が危ぶまれていたが,このたび,第3編成がその名も“リゾートドルフィン号”として面目を一新,本日そのお披露目が行なわれた次第.
 どこが“ドルフィン”なのかといえば,その外部塗色.なんと100系のオーシャンブルー濃淡が甦ったのだった.

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まったくなんの違和感もなくオーシャンブルー濃淡を纏ったリゾート21の第3編成.伊豆高原車庫での撮影時には,はかったようにJR東日本の185系緑ストライプ編成がやってきて並んだ.参加者一同,一瞬“ここはどこ?わたしは?”状態になったものである.

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よく手入れの行き届いた車内は,レトロ感を演出するために照明を電球色の蛍光燈に取り替えた他は,基本的に従来のまま.しかし壁面を利用して写真展示スペースが新設され,その第1回目として“懐かしい昭和の写真展(鉄道編)”が各車に掲示されている.今後,一定のサイクルで次々と新たなテーマにより写真展が催される予定

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下田駅にて伊東方先頭車を見る.展望室の側面には“IZUKYU 伊豆急”の文字のほか,躍動するイルカが描かれた.イルカは3号車下田寄りトイレ部にも描かれている.なお,正面車体裾バンパー部にも,ロゴが描かれるかもしれない.いつごろどのように…はお楽しみに.

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6号車2109の山側.山側は窓が通常の大きさなので,より100系の面影が強い.伊豆急行本社でも,車庫に姿を見せた塗り替え最初の中間車を見ても,気づかない人が少なくなかったというほどに.

そんな伊豆急行100系は,その後の増備や更新を経て,約10年前の平成14/2002年に営業運転から引退した.
 しかしトップナンバークモハ101は東急車輛に保存予定車として譲渡された.さらにクモハ103は,構内の入換作業に便利な両運転台ということで車籍も抜かれずに現在まで活躍してきた.
 今回の開通50周年記念事業では,なんとこの“本家ハワイアンブルー電車”も,東京,新宿,武蔵小杉,川崎,横浜,大船発着の日帰りツアー用として本線に復活することになった.きょうの時点ではまだ作業中で,写真はまだ発表しないでね,ということで,公開はもうちょっと我慢.ツアーは11月5日から催行.

ところで完成した“ドルフィンリゾート”だが,一般へのデビューは10月22日. 朝9時53分に伊東駅を発車して伊豆高原,伊豆熱川,伊豆稲取,河津に停車して伊豆急下田着が1053分.12時4分に折り返し発車して河津,伊豆稲取, 伊豆熱川に停車して伊豆高原着が12時54分という行程.快速列車なので普通運賃だけで乗車可能.社内では“リゾートドルフィン号ピンバッジ(定価500 円)”やリバイバル“冷凍みかん”などを販売.また,河津と伊豆急下田の間で乗車証明書を配布するとのこと.伊豆急下田折り返し街の間には撮影会も開催さ れる.
 10月29日(土)にも同様のイベント列車を運転(撮影会はなし).その後は熱海-伊豆急下田の間の普通電車として運転されることになっている.運転日などは伊豆急行のウェブサイトに掲載されるとのことである.