9月8日のエントリで,東京駅丸の内駅舎の復原工事計画についての,JR東日本からのリリースをご紹介した.
 現物を見ることができるのはいつになるのだろうと,わくわくしていたら,昨日,鉄道趣味月刊誌を含む報道関係者に工事現場が公開されたので,喜び勇んで出かけてきた.

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現場事務所から眺めた南口と中央口.この報道公開のために防護ネットが一部取り外されているのが判るだろうか.

最 初に案内されたのが南口のドーム内部.しっかりした足場が組まれているから,全体を眺めるというわけにはいかないが,むしろその足場に登って数々の装飾を 間近で見ることができるというのは,まことに得がたいチャンスだった.中でも興味深かったのは,南東向き壁面を飾るレリーフの一部で,オリジナルと複製品 を混合して使用していたこと.
 オリジナルが石膏製であるのに対し,複製品は石膏にガラス繊維を混ぜたGRGと呼ばれる材料を使っている.完成時 には着色されることになっているけれど,両者の色を揃えることはせず,あえて色の違いを見せて“オリジナル”を強調するのだそうである.面白い試みだと 思った.
 防護ネット越しで,なおかつ極く一部分ながら,ドーム頂部とその装飾も垣間見ることもできた.
 ちなみに,現時点での工事進捗率は約70パーセントととのこと.

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黒ずんている部分がオリジナル,白いのが複製品.オリジナルは傷みが激しく,僅かな数を,南口ドームの南東面に使うことができただけだそうである.

まだ取り付けられていない装飾や,現場に近づいて観察することのできない部分については,1階に展示スペースを特設して公開するという力の入りよう.
 そのハイライトはやはりよく幅2メートルに及ぶ大鷲と天然スレート,そして銅製の装飾付き屋根板だろう.

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大鷲のこの迫力は,完成後に1階の床面から見上げても感じることはできないだろう.煉瓦壁がバックという演出もすばらしかった.画面右に見えるのは干支のレ リーフの原型の一部.ちなみにオリジナルは石膏製だったが,今回の複製品は繊維強化プラスチック(FRP)製とのこと.

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東日本大震災の被害を受けて一時は採用が危ぶまれた宮城県産の天然スレート2種と,スペイン産の天然スレート.一番右が雄勝産の新品で中央口部に使用.中が登米産の戦災復旧時のオリジナルを活用したもので南北ドーム部に使用.左がスペイン産でその他の部分に使われる.

石材は花崗岩(御影石)が茨城県笠間市稲田の産,いわゆる稲田白御影石.新調した化粧煉瓦は愛知県の常滑製とのことである.
 煉瓦といえば,必要やむを得ず撤去された煉瓦の一塊も展示されており,中に埋め込まれた鉄骨や化粧煉瓦の貼り方,化粧目地などをつぶさに観察することもできた.
 銅板は厚さ0.4mm,もちろん手加工でさまざまな形に仕上げられている.花弁のようなふくらみのある飾りには木製の芯を入れ,強度を確保している.既に葺き終わった銅屋根は,今のところまさに“赤銅色”に輝いているが,10~20年で綺麗な緑青色に“仕上がる”予定.

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そして文字通りの縁の下の力持ち.ゴム製の免震装置と,そのアシストをつとめるダンパー.免震ゴム装置は大小352ヵ所に,ダンパーは152本が設置されている.ちなみにダンパーはすべてカヤバ製.

ということで,ますます完成が待ち遠しくなった東京駅丸の内駅舎であった.

※2011.09.30:進捗率追記.スレート使用場所誤記修正.