一昨日,東急車輛から南海電鉄向けの電車が出場した.この情報は,本誌の2月号“甲種・特大運行情報”でお伝えしているので,すでにご存じの方も多 いかと思う.僕も追いかけて,と,思っていたら,土屋隆司さんが,南武線の尻手の駅で信号待ちの間に撮影された写真を送ってくださったので.写真を“読 み”ながら,ご紹介する次第.

この12000系という電車,もちろん主要諸元などはまだ発表されていないが,南海電鉄のウェブサイトでは,1月17日付けで“新型特急「サザン」12000系を導入します”と題するニュースリリースが発表されている(トップ頁からインフォメーション一覧表示→2011年01月分).
 それによれば,今回は4輛編成2本を製作,営業運転開始は秋頃が予定されている.
 デザインコンセプトは,“ミナミへ新しい波を起こす”とされる.
  客室では,まず,家電メーカーシャープが開発した“プラズマクラスター”技術を採用して客室でのウイルスの作用を抑え,カビなどを分解,また除去して客室 空間をより快適にしているという.腰掛けには大きなテーブルとAC電源を備えてビジネスユースに対応.座面の幅も10000系より25mm拡大して居住性 も向上…….とある.さらには無水小便器を採用して節水に取り組んでいるという.
 外観イラストでは,どうやら通勤車8000系をベースにしていることがうかがわれる.なお8000系は,本誌平成21/2009年10月号のMODELERS FILEで詳しく紹介している.

さて,東急車輛を出てきた8輛の12000系は,まず新鶴見信号場へ向かい,折り返して川崎貨物駅へ.そこでもう一度方向を変えて一路東海道を西へ.昨日の深夜には大阪環状線の西半分をぐるっと回って天王寺から王寺を経由し,本日の早朝,無事に和歌山市に到着した.
 寄せられた写真はその途上,南武線の尻手駅での停車中に撮影されたものである.

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モハ12001.灘波方の先頭車.4号車と記されている.以降,順に12801+12851+12101.両端が電動車で中間は付随車のようである.これは通勤車8000系と同じ構成で,そういえば床下機器配置も似ているようにみえる.

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顔.8000系より丸味が強く,窓や尾燈ケースの形などに工夫を凝らして優等車らしい表情を形づくっている.反対側の先頭車モハ12101の貫通扉にはヘッドサイン表示装置が取り付けられている.灘波方には一般車が併結されるから,表示装置は省略されたのだろう.

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各社の腰板中央に記されたロゴ.南海電鉄ウェブサイトの完成予想図には描かれていない.写真はモハ12001で,真下には主制御装置が見える.外観は8000系と同じで,だとすれば日立製ということになるのだが.

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和歌山方先頭車モハ12102の連結面寄り側面.トイレなどが設備されている部分の外板には,オレンジで大阪湾の海岸線を,ブルーで関西空港線を含む南海線 の路線をデザインしたマークが描かれている.パンタグラフは東洋電機製シングルアーム.台車は住友金属製で8000系と同じSS177MとSS177T. クーラーもキセが8000系と同じ形に見える.

ということで,報道公開が待ち遠しい電車である.しかし営業運転開始が秋の予定ということは,お披露目まで,少し間があくかもしれない.さて,どうなりますことか.