来年春から営業運転を開始する予定のJR東日本“TRAIN SUITE 四季島”.その一部車輛について,外観が報道公開された.
 この“四季島”は,既にとれいん本誌の“いちぶんのいち情報室”でも概要をお知らせしているとおり,電気モーターと発電機+ディーゼルエンジンのハイブリッド車輛で,10輛固定編成.
 これまでにない斬新な外観デザインや内装への興味ももちろんのことながら,系列…形式名がどのようになるのかに,大いに関心を抱いていた.
 それで昨日,川崎重工で製作を担当している7輛のうちの2輛の外観について昨日24日, 同社の兵庫工場で報道公開が実施されることになったので,来住憲司さんに取材に出向いていただいた.
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公開された2輛.10号車の展望車と9号車のスイート車.どちらも電動車である.展望車の定員は0,スイートの定員は6.なんとも贅沢なものである.展望車は座席を指定席として販売しないという意味であって,自由に利用できる,6名分の座席が用意されている.

真っ先に目に入ったのは,運転室横に記された保安装置の一覧…というのは,あまりにも趣味に走りすぎ? でもまぁ,ここの読者の皆さんなら,大なり小なり,同じであろうと思うが.
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これまでには見られなかった造形.スカートを切り込んだ形のスノウプロウも独得.乗務員室側窓は,画面右側は開閉可能のようである.その下の部分はハーフミラータイプのガラスで列車直前下方の視界確保用だろうか.

乗務員扉の横に記されている保安装置は,C,P,Ps,Dn(nは正しくは小さい大文字).CはDS-ATC,PはATS-P,PsはATS-Ps.そしてDnはJR北海道のデジタル式ATS-Dnのこと.新幹線が使うATCと合わせて,少なくとも北海道内への営業運転は規定方針ということになる.そのために,電気方式は直流1,500V,交流20kV 50/60Hz,交流25kV 50Hzの4電源を備えている.
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展望室の窓の形も,まったく鉄道車輛の概念を打ち破ったデザイン.屋根上にはディーゼルエンジン用のラジエターファンやグリルが見える.台車は形式はDT83のようである.

2輛目のスイート車の展望車方にはパンタグラフが備えられているが,この日は畳まれたままであり,アームは丸パイプタイプということ以外,形式などをうかがい知ることはできなかった.こちらの台車形式はDT84.これまでのJR東日本の新型電車では,車体重量によってバネ定数を変更し,異なる形式を与えることが多いので,これもそのうちのひとつだろうか.
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9号車“スイート車”の全景.窓配置から定員2名の部屋が3室と知れる.ができる.それにしても3枚の大きな窓はともかく,たくさん開けられた小さな窓の内部はどのようになっているのだろうか.かつての1等寝台(A寝台)や581・583系寝台車の上段にあった“覗き窓”とも違うような気がするが.さて

側窓のほかにも,側扉がJR東日本としては久し振りのスゥイング式プラグドアであることや,前照燈のデザイン,ワイパーの配置など興味を惹かれるパーツがたくさん….はやく全貌を見てみたいものである.
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おそらくは特注品のLEDを使った前照燈.ハイビームの時には,右側のLEDも発光するのだろうか.

さて注目の形式.車体側面にはなんらの記載もなく,妻板の裾にE001-8とE001-9という数字が記されているに過ぎなかった.展望車はおそらくE001-10なのだろう.
 取材に際しての太田 朝道 JR東日本常務執行役員鉄道事業本部運輸車両部長への聞き取り取材では,“四季島”と同様の電気モーターと発電機+ディーゼルエンジンによるハイブリッド車輛は,JR東日本としては他に投入の予定がない.とのことであり,他形式と混同誤認する可能性がないとの判断で,車輛記号を省略したのだと思われる.
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9号車のとなり,8号車の妻板裾に記されたE001-8.こちらも9号車と同じスイート車である.きっと1号車からE001-1,2号車がE001-2…と続くのだろう.写真5点:来住憲司

ちなみに,当日配布された資料によれば“四季島”の編成は次の通り.
1号車“展望車”=定員0名(6名分座席),予定重量64.1t,主変換装置,主電動機,補助電源装置,エンジン・発電機.
2号車“スイート”=6名,55.4t,パンタグラフ,主変圧器,主変換装置,主電動機.
3号車“スイート”=6名,51.3t,パンタグラフ,主変換装置,主電動機.
4号車“スイート(バリアフリー)=6名,49.5t,補助電源装置.
5号車“ラウンジ”=0名(18名分座席),44.6t.ハイデッキ.
6号車“ダイニング”=0名(18名分座席),50.1t,ハイデッキ.
7号車“四季島スイート”・デラックススイート”=4名,50.5t.
8号車“スイート”=6名,51.8t,パンタグラフ,主変換装置,主電動機.
9号車“スイート”=6名,55.5t,パンタグラフ,主変圧器,主変換装置,主電動機.
10号車“展望車”=0名(6名分座席),63.9t,主変換装置,主電動機,補助電源装置,エンジン・発電機.

製作担当は,1~4号車と8~10号車が川崎重工,5~7号車が総合車両製作所である.

今後,9月上旬にはJR東日本管内で川崎重工製の7輛による試運転を開始し,10月上旬には総合車両製作所製の3輛を加えたフル編成での試運転を開始するとのことである.

※2016.08.25:スケジュール追記.一部語句修正