3週続けて欧州の話題.今回は毎年恒例のニュルンベルク・シュピールヴァレンメッセ,いわゆる“ニュルンベルク・メッセ”の話題.

毎年,秋になるとニュルンベルク玩具見本市組合の社長が来日し,出展者や来場者を誘致するためのプレゼンテーションが催されている.このブログでも昨年秋の模様をお伝えしている.
 今年は,前回までの日本代表部が交替してはじめての開催ということもあり,どのようになるのか,いつも以上に興味津々で出かけた.10月14日のことである.
 会場はこれまでの赤坂から六本木へ,そしてビルの地下から51階へと移動した.それだけではなくテーブルの配置などまで全て違っていて,窓口が変更されたのだということを実感させられたのだった.

と,いう周辺事情はさておき,肝心のプレス・コンファレンスはどうだったのか.
  組合の社長(変な日本語だが,適当な訳語が見つからない)であるエルンスト・キックさんのプレゼンテーション……数年前から正式には“対話”を意味する “Dialog”と称されているのだが……は,ニュルンベルク玩具見本市の現状と将来展望が余すところなく語られ,もう何年も現地を訪問していない僕に も,よく理解できるものだった.

MT-20101021-01
エルンスト・キックさん.5月に続いて来日で,その時には“今年の夏の始まりの東京へようこそ!”と挨拶したが,10月の今回は“終わりのない夏の東京へ,ようこそ!”だった.

そ れによれば,2008年から2009年にかけての世界の玩具市場は3.6%の売上増を記録しており2010年にはさらに上昇するだろうとのこと.上昇率が 高いのは中国大陸を中心とするアジア,オセアニア,そしてブラジルを中心とする南米であるという.唯一マイナスなのは北米だが,下降率は減少しており,基 調としては“回復”であるという.
 ということで,今後の玩具全体の情勢についてはどちらかといえば楽観的であり,とりわけ中国大陸やインド,南米では市場の大いなる成長を見込むことができるだろうという見解であった.

ではドイツの鉄道模型市場はどうか.僕の質問に対してキックさんの答えは,ドイツの模型市場は全体として2008年から2009年にかけて2%の上昇を示しており,堅調であると.ちなみに2011年のメッセには120社の鉄道模型メーカーが出展の予定とのことである.
 数年前に連続したメーカーの破綻騒ぎのその後については,次のように述べられた.
 まず,フライシュマンは新会社に移行して順調な操業を続けている.
 メルクリンは,昨年の決算で黒字を記録した.従って,新たな投資家を探し求める必要は,ほぼなくなった.
 ファーラーは,やはり破産の申し立てを行なったけれども,その後順調に再建が進んでいる.
 それよりも問題は生産拠点としての中国大陸の事情である.もっとも大きな問題は製造コストの急上昇である.
  さらに加えて今年の夏にはSanda Kan(山打根) Industrial(1973年創業の玩具製造会社)が,世界中の多くの模型メーカーから受けていた製造委託契約のうち,親会社のケーダー社(2008 年秋に買収)以外のほとんどを破棄してしまった.その結果,例えばメルクリンでは,同社に発注していた製品の製造計画を,根本的に組み立てなおす必要が生 じた.結論としてはドイツで全体の60%を,ハンガリーで残り40%を生産することにしたそうである.
 とのことであった.

さて2011年のメッセは,2月3日から8日までの6日間の開催.工事中だった中央ゲートの工事も終え,容れ物も中身も新鮮な見本市が期待できるという.どんな新製品が飛び出してくるか,今から大いに楽しみにしたい.

MT-20101021-02
すっかりお馴染みの,木馬のロゴ.

MT-20101021-03
会場全体図.ホール11とホール1の間のスペースが地下鉄駅に隣接の中央ゲート.鉄道模型はホール4aで展開される.Photo:Spielwarenmesse eG Nürnberg