レイル75号”をご覧いただいた方ならご承知の通り,東日本鉄道文化財団が運営する旧新橋停車場歴史展示室では,去る8月3日から企画展“日光道中”を開催している.レイル75号に,この企画展の担当学芸員である河野真理子さんから一文を寄せていただいたこともあって,さっそく訪問してきた.
 この歴史展示室ではここ数年,意欲的な企画展が続いていて,レイル編集部でも平成20/2008年12月から3月までの“トレインマーク展”や,ちょうど1年前の“特急“燕”とその時代展”では,若干のお手伝いをさせていただいた.
 “燕”展の様子は,始まって間もないこのブログでも紹介したから,記憶に残っている方もおられることだろう.
 さてでは今回は……

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“いつもの”入口が開くと目の前の壁面に展開するのは,“鉄道以前”の日光道中に関する数多くの展示物.もっとも,フロア中央に鎮座するのは,クモハ157とキハ44800の1/15スケールモデル,東武鉄道1720系の1/20スケールモデルである

壁面の展示物をじっくりと眺めていけば,そもそも“日光とは……”から,東照宮以前の日光の様子,江戸時代の人々の日光への旅の模様が丹念に説かれている.多数の貴重な資料と併せ見ることで,観覧者はたちまちのうちに,いっぱしの日光通に成り上がることができるという寸法.
 少々頭の中が煮えて来るあたりで,“日光を見ずして結構という勿れ”の発祥についての考察など,息抜きも用意周到.

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展示室の奥から入口方向を見る.画面右側の壁面が,近現代の“鉄道による日光道中”のセクション.画面手前のケースには益子焼の“汽車土瓶”の数々が展示されている.大正期の製品で,近年になって益子の窯跡から発掘したものだという.

鉄道関係の資料は,明治期から大正,昭和,そして現代の“レトロ日光線”に至るまでが高い密度で展示されている.中でもレイル75号に掲載した黒岩さん撮影による昭和20~30年代の日光線風景の原画は,じっくりと味わっていただきたいところである.ちなみに僕自身が興味ぶかかったのは,大正元/1912年の日光線ダイヤグラムであった.

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非冷房時代の姿と塗色を現代に伝える,クモハ157の貴重な展示模型.キハ44800とともに鉄道博物館の常設展示品を,特に借り出したとのこと.

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もちろん東武鉄道関係の展示品も,東武博物館と花上嘉成さんの協力を得て,貴重な品々が揃えられた.

この企画展は11月21日まで開催されている.観覧可能時間は11時から18時(ただし入館は閉館15分前まで).休館日は祝祭日を除く毎週月曜日.なお,充実した内容の図録が用意されているのはいつものとおり(税込み700円).

注:展示室内は撮影禁止です.ここに掲載した写真は,事前に東日本鉄道文化財団の許可を得て撮影したものです.