京阪電車が,今月の15日に開業100周年を迎える.今年はほかにも嵐電……京福電鉄とか山陽電鉄とか,阪急電鉄も開業100周年.
 京阪電車といえば“テレビカー”.加えて中吊り広告のない客室に転換式クロスシート.半世紀以上もセールスポイントになってきたのだが,開業100周年を迎えて大きく変化し始めた,
 それは“テレビカーの廃止”.ニュースリリースとしては既に昨年のうちに発表されていたわけだが,このほど最初の編成が落成し,去る28日から一般営業を開始した.

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一般営業の初日,中書島と淀の間を走る8000系第10編成.外観的には,一昨年来進められている,新塗装編成と同じようにもみえるのだが…….写真:村林 篤

テレビ受像機の撤去とともに,車端部がロングシート化されたことも大きな話題.ロングシートといっても,写真を見れば判る通り,背摺りも高くて立派なシート.まるで昔の鉄道作業局や鉄道院の優等客車のように豪華.“京阪ロマンスカー”の矜持を守ったというところだろうか.

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元のテレビカーは4号車8750形.その京都方には受像機とともに電話室が設けられていたが,今回,きれいさっぱり撤去された.寝屋川車庫 平成22/2010年3月23日 写真:村林 篤

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ロングシートのクローズアップ.肘掛けの内側にも表布が張られているのが判るだろうか.明治大正期の優等客車の腰掛を思わせる,現代では日本一豪華なロングシート.寝屋川車庫 平成22/2010年3月23日 写真:村林 篤

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8750形8760の外観.車端部の側窓下部がブラックアウトされているのがわかるだろうか.ロングシートの高い背摺りが表から見えないようにすると,こうなるわけである.寝屋川車庫 平成22/2010年3月23日 写真:来住憲司

とにかく僕が生まれたときとほぼ同時期から“テレビカー”は僕のすぐ近くに存在したわけで,その,京阪電車の象徴でもある車輛がなくなるというのは,とても淋しい.淋しいけれども,これが,昭和2/1927年に登場した日本初のロマンスカー1550号型以来の伝統を護りつづけるための,最善の方策なのだろう.

さてあと2週間で開業100周年となる京阪電車.この一世紀の間に淀川左岸を走り続けた電車たちの中から,1550号型ロマンスカーに端を発する“京阪ロマンスカー”の歴史を集大成した“京阪ロマンスカー史”が,レイルの73号74号として発売される.
 膨大な写真や資料,詳しい解説によって構成されたこの“京阪ロマンスカー史”.京阪電車を取り巻く人々の情熱と思い入れによって出来上がった.京阪ファンにはもちろんのこと,日本の電車を好きな方全てに,絶対の自信をもってお薦めしたい.
 上巻73号は4月中旬,下巻は5月中旬に完成予定.各3,000円+税(総額各3,150円).今から楽しみにお待ちくださいませ.

※2010年5月20日,レイル74号へのリンク追加