世の中にフォトグラファーを名乗る人は数え切れないほどいる.僕だって,考えようによってはその範疇に入るかもしれない.
 写真というのが目的なのか手段なのか,それによって産み出される作品が大きく異なっているのはあたりまえ.
 “模型を作るときの参考のために”で始まった僕の写真は,どちらかといえば記録が主になるし,“写真を撮る”ということから始まった人の作品は,どちらかといえば,抽象画か半抽象画的に仕上がることが多いと思う.
 今,僕がいる東京・銀座のキヤノンギャラリーに展開された25点の作品は,そのどれもが,極めて物語性に満ちている.僕にはとても撮れないだろうと,端から諦めてしまう絵ばかりである.
 会場中央に据えられたソファーに座り,周囲の1枚1枚に圧倒されながら,この文章を書いている次第.
 とにかく多くを語る必要はない.“とれいん”読者にとって,山崎さんの名前は,あるいは馴染みが薄いかもしれない.でも,だからこそ,6月10日までの間に,少しでも多くの人に会場へ足を運んでいただきたい,そんな写真展である.

……と,そのあとでおいしい酒に酔い痴れて,会場での満足感をたっぷりと残したまま……いや,むしろ増幅させて帰宅,すぐさまこれをアップロードしている僕であった.

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会場は照明を落しているから,夜景を中心とした,陰影に満ちあふれる作品が,より一層引き立っている.会場内のスナップ写真は,事前に許可をいただいて撮影したのはいうまでもない.

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山崎さん自身にとっても,たぶん,一番印象的だったのだろう,一番大きく引き伸ばされていた,斜陽に映える“カシオペア”(画面左端).こんな情景,何度同じ場所に通っても得られるものではない.とにかく“一瞬”を切り取る力がフォトグラファーの腕.

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会場では山崎さんの著書も販売中.照れ隠しに戯けた表情をする本人が掲げ持つのは,夜景を集めた写真集“夜感鉄道”(えい出版社刊 定価:本体1,800円+税).なお,会期中は原則としてずっと会場につめているという.人となりに触れる,絶好のチャンス.

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こちらは自伝的エッセイ“僕はこうして鉄道カメラマンになった”(クラッセ刊 定価:本体1,600円+税).