もう20年以上も前のことだが,“とれいん”誌では積極的にフリーランス車輛について,デザインや実際の作品を積極的に採り上げていた.黒岩さんに戦時型計画蒸機の図面からイラストを起こしてもらったこともある.山口益生さんには,新京阪の名古屋延長計画が具体化していたらどんな電車が登場しただろうかと,実際に残された資料を基にして技術的にも破綻のない電車を構築していただいた上,図面とイラストも描いていただいた.
 自分でも,50系客車にエンジンを積んで気動車に仕立てたらどうなる?という作品を(実物のPDCよりずっと前に!)製作してみたり,京阪電車が淀屋橋から梅田に乗り入れたらどんな電車が必要になるか?と考えて東急7000系ベースの新型車を製作してみたりしたことがある.
 最近は読者の皆さんからのアプローチも少なく,もうフリーランスは流行らないのかと,ちょっと残念な僕である.
 ところが実物の世界ではこのところ,メーカー主導の電車が大手私鉄にも続々と登場し,例えば東武鉄道と西武鉄道が同系のデザインを持つ電車を投入するなど,かつては想像もできなかった現象が各地で起こっている.
 相模鉄道の10000系もその動きのひとつだった.JR東日本のE231系をベースにし,必要な部分を相模鉄道化した電車であった.そして本日5月28日,その第二弾としてE233系をベースにして相模鉄道化した11000系という電車が披露された.
 手法は10000系とほぼ同じだが,今回は,10000系から11000系への発展という要素も加わっているから,フリーランスモデラーにはさらに興味深い出来事といえよう.
 発表によればベースはE233系の中央快速電車用であり,そこから耐寒装備などを省き,一方では車内情報モニターの大型化など京浜東北線用装備を付け加えたという.相鉄化は,先頭形状のリデザインを筆頭に,誘導無線装置の付加,客室デザインのアレンジなどすぐ気づく部分から,細かく観察しないと気づかないところまで幅広く行なわれている.
 それに加えて,今回投入の2編成のうち第2編成は,海老名方5輛がJR東日本の新津車両製作所製であり,屋根のビードの入り方が新津製E233系と同じとなっている.これなども,モデラーの制作意欲を掻き立てる話題ではないだろうか.
 ということで,6月発売の7月号,お楽しみに!

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かしわ台電車基地で10000系と顔を合わせた11000系.この角度からは第1編成と第2編成の外観上の相違点は見られない

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海老名方から見た第1編成の全景.Tc1+M6+M5+T2+T1+M4+M3+M2+Tc2の組成は中央快速用E233系と同じ.

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女性専用車は4号車(横浜方から4輛目.モハ11300)に設定.吊り手や荷物棚の取り付け高さが他社の一般部より低い.

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E233系に準ずるが相鉄化も行なわれている運転室.画面右下の緑色の箱は無線電話装置,左の緑の箱は列車選別装置.いずれも数年後にはシステムが更新される予定で不要となるので,とりあえず発生品を取り付けている.