東京のJR各駅には,本当にたくさんの古レールが生きている.中央・総武緩行線の各駅も例外ではない.御茶ノ水駅のそれは,6月30日のここでお伝えしたとおり,駅改良工事のあおりで大幅に数を減らしつつある.その他の駅でも同様の現象は起きていて,ふたつ西側の飯田橋駅でも,急曲線上にあるホームを解消するために,西側への移動が計画され,すでに工事たけなわ.
 飯田橋駅西側の階段は,実は脚が美しいアーチを描く古レール製であり,いつかどのようにかして観察しようと思っていたのだけれど,なにしろ“取り付く島がない”とはまさにこのこと.原宿の宮廷ホーム上屋と同じぐらいに立ち入り困難な場所にあるものだから,ずっと叶えられないでいた.
 そうこうしているうちに工事はどんどん進み,9月末に気がついた時には,新階段へと移行されてしまい,階段そのものは既に存在していなかった.
 やむなく,せめて,というわけで,辛うじて残っていた脚を新しい跨線橋から撮影したのが,お目に掛ける写真である.
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飯田橋駅西口の旧本屋と通路.連続したアーチが美しかった.目黒の白金桟道にも勝るのではないかと思うほどに.

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新階段及び新跨線橋と旧階段と旧跨線橋との関係はこのとおり.上屋の柱にもたくさんの古レールが.残念なことに,塗装が厚くなりすぎて銘を読み取ることは難しいが.

この階段の切り替えはどのような方法で?といえば,9月15日のここでご紹介した西武鉄道新宿線中井駅のケースとは全く逆,床や階段のない新通路の建設を進めておき,階段を組み立てて吊り上げておき,ある日の深夜に“えいっ”と降ろせば出来上がり……という仕掛けだったようである.

10月に入って早々の別の日,久し振りに秋葉原でお昼ご飯のチャンスがあり,機会があるたびに通っていたとんかつ屋さんに向かってみたら…….
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入口に貼り紙があって,“五十一年間という永きに亘り,皆様に親しまれ愛されて……九月二十八日をもって……”.


なんとなく嫌な予感もあって,一目散に向かったのだけれど,一足遅きに失したようであった.なくなるのは古レールばかりではないということ.
 ならばと向かったのは,少し北側,蔵前橋通りを渡ってすぐのところの洋食屋.そういえば“洋食屋”というのも,数を減らしつつあるように感じるのは気のせいではなさそうである.
 おいしいチキンカツをいただいて次の目的地へ向かうために秋葉原の駅へ.9月29日のここで“AKB”という3文字コードが与えられたと紹介したばかりだが,ここで新しい発見があった.それは生きている古レール.

昭和7/1932年完成の両国とお茶の水の間の高架橋とともに建設された総武本線秋葉原駅.すべて新品の鉄構製と思いこんでいたから,意外なことであった.詳しい方々にとっては“いまさら”には違いないのだろ受けれど.
 場所はといえば,山手線内回りと京浜東北線北行きホームの神田方階段.山手線ホーム2キロの里程標があるあたり,山手線の電車でいえば4号車3番ドアにほど近い,総武本線千葉方面行きホームへの階段である.
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総武本線ホームから山手線ホームへの階段.その屋根がアーチであることに気づいて近寄ってみたら,やはり柱はレール,だった.

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4本写っている梁のうち,奥の2本はI型鋼製のようだが,手前の2本は明らかにレール.とりわけ手前の1本には,なにやら銘のような刻みが見えるが,よくもとはできなかった.


少しずつ失われつつある古レールだけれど,自分自身にとっては新発見,ということも,まだまだあることが判って,ちょっと嬉しくなった秋の日の午後だった.