もう2週間も前にのことになってしまったが,11月22日の午前,JR東日本の田端新幹線保守基地で,線路設備やレールの状況をモニタリングする車輛が報道公開された.
もっとも,この場合,法規上の車輛ではなく,扱いとしては保守用機械であるわけだが,僕たちにとっては,制度上はともかくとして,線路の上を走れば,なんでも“車輛”である.
JR東日本の在来線では,既に各線区で営業用車輛の床下にモニタリング機器を取り付けて線路設備やレール周辺の状況をモニタリングするシステムが構築されている.それらについては本誌の2018年9月号(通巻525号)で詳しくご紹介したのをご記憶の方も多いだろう.
そののシステムが,新幹線でも本格的に稼働しはじめるのだそうだ.
“スマートメンテナンス”と呼ぶこのシステムは,人力に頼っていた……いや,そのノウハウもとても大切で貴重なものなのだが……各種設備の状態確認を,より高頻度に高精度でモニタリングする,というのが目的.
導入されたのは2輛で,レールモニタリングを担当する“SMART-Green”と,枕木などの状態を点検,検査する“SMART-Red”の2輛である.
左がレールそのものの状態を確認する“SMART-Green”で,分岐器部分を含む枕木や犬釘(正しくはレール締結装置と呼ぶべきだろうが)をモニタリングする“SMART-Red”.
2輛とも車体そのものは同形で,新潟市に本社を置く松山重車輌工業の検測車用車体の標準タイプのひとつ.
保守用車総合データベース(貴重なデータが集積された,すごいウェブサイトである)によれば,車端部のデッキへ出入りするために運転室前面に出入り口が設けられているのが,JR東日本新幹線向けの特徴なのだという.
“SMART-Green”は銘板によれば車種はレール探傷車.2023年1月製で製造番号は102974,自重は48tだという.形式はMJK MS0255.
一方の“SMART-Red”はMS0256-1という形式で,2024年2月製.製造番号は102985.自重は47t.線路設備モニタリング車とある.
“SMART-Green”.そういえば車体に固有の形式というか車号というか,そういう表記は見当たらなかった.JR東日本の新幹線では唯一の存在となるようだから,“SMART-Green”あるいは単に“緑”とか呼ばれるのだろうか.ちなみにこの写真に写っている新青森方が前位だそうである.
“SMART-Green”にはボギー台車間に2軸の台車が取り付けられ,その小径写真間に超音波レール探傷装置が取り付けられている.解説するのはJR東日本新幹線統括本部新幹線設備部保線ユニットの手代木卓也マネージャー.
この探傷当地の両側にはレールの凹凸を測定する装置があり,ボギー台車のすぐ内側にはレール頭頂部撮影装置とレール断面摩耗測定装置が備えられている.
西大寺測70㎞での測定が可能で,38‰の登坂性能があり,その勾配途中で停車しても転動することのない性能を備えている.実運用時には“SMART-Red”と連結して協調運転を実施することになっている.
“SMART-Red”.こちらは車体に“SMART-Red 1”と数字が記されている.来年度末までに4輛が導入される予定だというから,呼び分ける必要があるわけだ.
こちらは東京方ボギー台車の横に軌道材料モニタリング装置を取り付けている.東京方ボギー台車の中には分岐器のモニタリング装置を取り付け,新青森方車端部には点群データ取得装置というのがあって,屋根とデッキにライトなどが取り付けられている.
赤い光と白い光を線路に放ちながら走る“SMART-Red”.僕にとっては,線路設備モニタリング装置装備車を追いかけた時以来,お馴染みの光景.東急電車でも同じ装置を搭載している編成がある.
“SMART-Red”の新青森方.デッキと屋根のライト類が物々しい.デッキ上のライトに“DMA”という銘板がある.実運用時にはこの編成で走行するのだそうである.
“DMA”をキーワード検索(便利な世の中になったものである)したら,イタリアの計測機器メーカーがヒットした.点群データ取得装置というのは,軌道中心間隔や限界支障のデータを取得する装置のことだそうだが,それがこのイタリアのメーカーの製品なのだろう.
さてこの“SMART-Red”と“SMART-Green”,12月から本格的に運用が始まっている.“Red”は今年度終わりごろから東北品幹線の東京と白石蔵王の間,続いて白石蔵王以北の新青森まで,来年度半ばからは上越・北陸新幹線の大宮と新潟及び上越妙高の間で運用される.
“Green”は既に昨年度からJR東日本の新幹線全線で実用されている.
そして測定データを効率よく処理,確認,判断するためのシステムとして“S-RAMos+”も今年度“Red”の本格運用ド同時に稼働することになっている.
なお,これらのシステムによる検測や取得データの処理は,JR東日本のグループ会社である日本線路技術が担当する.また車輛も同社の保有となる.
終電後,始発までの間にしか動かないはずだから,実際に働いているシーンを見るのはなかなか難しいことだろう.でも,もしかしたら昼間,どこかの保守基地で休んでいるかもしれない.遭遇したら,その日はきっと,いいことがあるに違いない.
もっとも,この場合,法規上の車輛ではなく,扱いとしては保守用機械であるわけだが,僕たちにとっては,制度上はともかくとして,線路の上を走れば,なんでも“車輛”である.
JR東日本の在来線では,既に各線区で営業用車輛の床下にモニタリング機器を取り付けて線路設備やレール周辺の状況をモニタリングするシステムが構築されている.それらについては本誌の2018年9月号(通巻525号)で詳しくご紹介したのをご記憶の方も多いだろう.
そののシステムが,新幹線でも本格的に稼働しはじめるのだそうだ.
“スマートメンテナンス”と呼ぶこのシステムは,人力に頼っていた……いや,そのノウハウもとても大切で貴重なものなのだが……各種設備の状態確認を,より高頻度に高精度でモニタリングする,というのが目的.
導入されたのは2輛で,レールモニタリングを担当する“SMART-Green”と,枕木などの状態を点検,検査する“SMART-Red”の2輛である.
左がレールそのものの状態を確認する“SMART-Green”で,分岐器部分を含む枕木や犬釘(正しくはレール締結装置と呼ぶべきだろうが)をモニタリングする“SMART-Red”.
2輛とも車体そのものは同形で,新潟市に本社を置く松山重車輌工業の検測車用車体の標準タイプのひとつ.
保守用車総合データベース(貴重なデータが集積された,すごいウェブサイトである)によれば,車端部のデッキへ出入りするために運転室前面に出入り口が設けられているのが,JR東日本新幹線向けの特徴なのだという.
“SMART-Green”は銘板によれば車種はレール探傷車.2023年1月製で製造番号は102974,自重は48tだという.形式はMJK MS0255.
一方の“SMART-Red”はMS0256-1という形式で,2024年2月製.製造番号は102985.自重は47t.線路設備モニタリング車とある.
“SMART-Green”.そういえば車体に固有の形式というか車号というか,そういう表記は見当たらなかった.JR東日本の新幹線では唯一の存在となるようだから,“SMART-Green”あるいは単に“緑”とか呼ばれるのだろうか.ちなみにこの写真に写っている新青森方が前位だそうである.
“SMART-Green”にはボギー台車間に2軸の台車が取り付けられ,その小径写真間に超音波レール探傷装置が取り付けられている.解説するのはJR東日本新幹線統括本部新幹線設備部保線ユニットの手代木卓也マネージャー.
この探傷当地の両側にはレールの凹凸を測定する装置があり,ボギー台車のすぐ内側にはレール頭頂部撮影装置とレール断面摩耗測定装置が備えられている.
西大寺測70㎞での測定が可能で,38‰の登坂性能があり,その勾配途中で停車しても転動することのない性能を備えている.実運用時には“SMART-Red”と連結して協調運転を実施することになっている.
“SMART-Red”.こちらは車体に“SMART-Red 1”と数字が記されている.来年度末までに4輛が導入される予定だというから,呼び分ける必要があるわけだ.
こちらは東京方ボギー台車の横に軌道材料モニタリング装置を取り付けている.東京方ボギー台車の中には分岐器のモニタリング装置を取り付け,新青森方車端部には点群データ取得装置というのがあって,屋根とデッキにライトなどが取り付けられている.
赤い光と白い光を線路に放ちながら走る“SMART-Red”.僕にとっては,線路設備モニタリング装置装備車を追いかけた時以来,お馴染みの光景.東急電車でも同じ装置を搭載している編成がある.
“SMART-Red”の新青森方.デッキと屋根のライト類が物々しい.デッキ上のライトに“DMA”という銘板がある.実運用時にはこの編成で走行するのだそうである.
“DMA”をキーワード検索(便利な世の中になったものである)したら,イタリアの計測機器メーカーがヒットした.点群データ取得装置というのは,軌道中心間隔や限界支障のデータを取得する装置のことだそうだが,それがこのイタリアのメーカーの製品なのだろう.
さてこの“SMART-Red”と“SMART-Green”,12月から本格的に運用が始まっている.“Red”は今年度終わりごろから東北品幹線の東京と白石蔵王の間,続いて白石蔵王以北の新青森まで,来年度半ばからは上越・北陸新幹線の大宮と新潟及び上越妙高の間で運用される.
“Green”は既に昨年度からJR東日本の新幹線全線で実用されている.
そして測定データを効率よく処理,確認,判断するためのシステムとして“S-RAMos+”も今年度“Red”の本格運用ド同時に稼働することになっている.
なお,これらのシステムによる検測や取得データの処理は,JR東日本のグループ会社である日本線路技術が担当する.また車輛も同社の保有となる.
終電後,始発までの間にしか動かないはずだから,実際に働いているシーンを見るのはなかなか難しいことだろう.でも,もしかしたら昼間,どこかの保守基地で休んでいるかもしれない.遭遇したら,その日はきっと,いいことがあるに違いない.