モデラーな日々 とれいんスタッフブログ

月刊とれいんスタッフの,模型と格闘していたりしていなかったりする日々をお送りします.

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連休明けの1月14日朝,なんとなく思うところがあって,いつもより少し早く家を出て,練馬の駅で待つことしばし……いや,前の日の夕方から動き始めたとの報せがあってのこと,いうのが実際ではある.昨年12月12日付けのここでご紹介した,池添智和さんからの搬入風景写真を見てはいたが,一刻も早く,現車を観察してみたかったのが,ようやく叶うわけである.
 これまで40000系という電車は,優等列車が停まらない練馬区内や豊島区内の西武鉄道池袋線沿線住人にとっては,およそ縁の薄い……乗るチャンスが限られていたから,素直に“朗報”といえるだろう.
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ぴっかぴっかの……40000系.今までならあり得ない,豊島園行きとして僕の目の前に姿を見せたのは,8時7分(カメラ内時計によれば)のこと.一見,なにも変わらないように思えるのだが…….

当然のことながら,折り返しを待ってみる,わけだが,その前にお見送り.
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コンパクトカメラだから,連続撮影は苦手.“ここぞ”と思うタイミングでシャッターを切っていたら,48451という車号の電車に,パンタグラフが見えた.付随車だと思うのだけれど.
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池袋方先頭車の車号は48851.西武40000系ならではの大窓は健在であった.ちなみにLEDは,1/160秒でかろうじて判読可能,それ以上では縦に筋が入って文字が欠けてしまうのは,これまでと同じ.

それで車号だが,飯能方から順に
48151+48251+48351+48451+48551+48651+48751+48851.両端はクハで,48451と48551がサハであった.

そして折り返しの池袋行きでは最後部の運転室を観察.
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これまでの40000系と同じ……に見えるけれど,画面右端の黄色テープには“地下鉄非対応車”という注意書きがある.

そして天井を見上げると……
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ホーム監視用モニターが,ない.配線準備の穴はあけられているが.というか,共通設計であけられているだけかもしれない.というのも…….それから,画面上辺に,ほんの僅か見える,枕木方向に切られた冷風吹き出し口のスリットは,もしかしたらこれまでの40000系ではレール方向だったかもしれない.
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運転室と客室との間の窓下辺にある保安装置切り替えスイッチにはATCと西武の2種類しかない.写真ではレバーの陰に隠れている部分にも,なにも記されていないのは,確認済み.

西武線内でATCを採用しているのは西武有楽町線だけだから,実質的にはATSしか使うことはない.東京地下鉄はCS-ATCとATO,東急はATC-Pだし.

ここまでが朝の観察.夕方,ちょっと早めに事務所を抜け出して,江古田の駅で屋根上の観察.
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48451のパンタグラフ.本体は48251や48651と同じに見えるが,ヒューズ箱は1個だけである.取り付けの理由は,集電容量確保のためか回生失効防止のためか…….

池袋で折り返してくるまでの間に石神井公園へ先行.
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おりしも10輛編成の40000系と並んだ.同じ?ここで初めて気づいた,貫通扉窓下辺になにやら黄色が見える.6000系の地下線非乗り入れ編成と同じ識別?

石神井公園行きだったから,当然,折り返しを待つ.
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補助電源装置は三菱電機製.10輛編成の40000系用と同じであるように見える.
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主制御装置は東芝製.これも従来と同じに見えるが,銘板は小さくて型番を読み取ることはできない.ましてや中身は判らない.48251と48651の2側(反応に向かって左側)に取り付け.

あれ?電動空気圧縮機はどこだ?と思っているうちに,発車していってしまった.

翌日は,昨日と逆に少し遅めに家を出て練馬駅で待ち受けていたら,やっぱり豊島園から姿を見せた.
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まずは貫通扉の窓を観察.やっぱりガラスに黄色テープが貼られている.
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江古田の駅で降りてクローズアップ.ご覧の通りであった.

折り返しを待っていたら,豊島園行きでやってきた.
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ここで念のため弱冷房車の位置を確認.西武線内用8輛編成車と同じ,2号車が指定されている.このことからも,今のところは地下鉄への乗り入れを考慮していないことがわかる.ここで車号の色がこれまでの白から,かなり濃い灰色に変更されているのを確かめることができた.これで走っている列車でも編成確認が楽になるだろう.ちなみに台車形式はこれまでの40000系用と同じで,電動車がSS185Mで付随車がSS185T.

もうひと踏ん張り待つ.
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なんのことはない.補助電源装置のすぐ飯能寄りに並んでいるではないか.ということで,48351と48751に取り付け.

でも,これまでの40000系や001系,30000系などとは形が異なっている.同じ三菱でも,阪急2300系や近畿日本鉄道8A系と同じ,型番がURCで始まるシリーズと同じ.そう,西武でも20000系はこのタイプに換装されている
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参考のために,これまでの40000系の電動空気圧縮機をお目に掛けておこう.40152編成の3号車,すなわち40352の2側である.画面中央放熱箱があるのが補助電源装置,その左が電動空気圧縮機である.

ということで,営業列車を,仕事の合間に追い掛けての観察記であった.
 捉まえるのに苦労したし,機器の型番はまだ確認できないけれど,ちょっと楽しい2日間であったのは,間違いない.

※2025.01.17:一部加筆修正

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昨年11月末から,東京世田谷区の砧公園内にある世田谷美術館で,“東急 暮らしと街の文化”展が開催されている.
 東急大特集である,とれいん誌の新年号編集真っ盛りに届いた案内に,偶然のなせる業を,大いに感じざるを得なかった.ましてや,まもなく発売となるレイルNo.133も,東急文化を象徴するような自由が丘とその周辺に的を絞った特集の,これもまた編集作業たけなわだったのだから…….

で,1月5日,元日の自由が丘に続いて世田谷美術館にお邪魔してきた.
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入り口.広大な砧公園の一角に設けられた美術館は,主張しすぎず,でも個性的なデザインの建物で,公園を散策するだけの人々にも,強力な吸引力を発揮している.オープンは昭和61/1986年.

ちなみに公園は昭和32/1957年に開園している.もとは紀元2600年記念事業として整備されたものだという.戦時中は防空緑地,戦後は都営のゴルフ場であったらしい.
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企画展会場で出迎えてくれるのは玉電のレール.東横百貨店西館の解体工事の際に発見されたものだそうである.玉電の渋谷駅に敷かれていたもの.銘は読めない.
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続いては台車3種.KS-33とTS-301 とTS-701である.使われていたのはデハ3700形,初代デハ5000形,初代7000形……とは,申し上げるまでもないことだろう.

さて本論.
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巨大な看板?表札?の奥にちらりと見えるのは,東急電車の昔の駅を再現したレイアウトセクションと電車そのものの模型,そしてバスの模型の一群である.これらはいずれも,電車とバスの博物館の収蔵品.周囲で放映されているのは,東急電車各線の前面展望など.

そして次の部屋には……
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車体組立図に“各型車輌用た車輪車軸及電動機型式一覧表”に座付連結器図にB型(改造)パンタグラフ分解図(其ノ1)に…….なんとマニアックな.モデラーには垂涎の資料が惜しげもなく展示されている.

ここまでが第1章.常識的な範囲ならば撮影してもかまわないエリアだった.続く第2章以降は撮影禁止の札が掲示されている.
 テーマは“街の時を拓く―東急の街づくり―”.

東横沿線では田園調布の住宅開発が全国的に有名だが,実はそれだけでなく,東京の各地で組織的な住宅開発が行なわれた.
 それらの中でも最大規模の土地整理事業が自由が丘や緑が丘周辺なのだという.その資料のオリジナルが展示されている……“玉川全円耕地整理”といい,現在の東玉川,玉川田園調布,奥沢,尾山台,等々力,中町,野毛,上野毛,玉川台,用が,上用賀,玉川,瀬田……面積は世田谷区の1/4を占める.
 実はレイルNo.133では,深尾 丘さんが,その成り立ちや推移などを詳しく語ってくださっているのだ.もう随分前からが温めておられたテーマで,ある程度見極めがついたのが昨年のこと,なんとかとれいん誌の東急特集と時を揃えて仕上げてくださったのだった.それがなんと,美術館での企画展とも,時期が一致するとは…….
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これがその“玉川全円耕地整理図”.取材ということで特にお許しをいただいて撮影したもの.撮影者の腕の影が図面にかかっているのはご愛敬…….
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こちらは田園調布関連の史資料.“田園都市歓迎趣意書”や田園調布案内など.画面左端にちらっと映り込んでいるのは,田園都市会社の社紋が鋳出されたマンホールのふた.

昭和30年代からの田園都市線線路延長と軌を一にした住宅地開発の原点が,この周辺の事業にあることは間違いないことを,余所者の素人にも明確に分からせてくれる展示であった.

企画展はこのあと,沿線在住の芸術家による絵画や彫刻などの展示が続く.田園調布や等々力,奥沢あたりに建築された住宅群も作品の一つとして扱われているのが興味深い.
 僕には師岡宏次や桑原甲子雄が撮影した昭和10年代の渋谷駅前風景などに,ひときわ惹かれた.
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デザインされた個人住宅の写真と現代美術作品が同列に並ぶ展示.正面奥の小さな4枚の写真は弦巻にあった岡本太郎のアトリエ.撮影は土門 拳.

ここまでが第3章で,最終章は“文化を拓き、育てる”.
 武蔵工業大学(現在の東京都市大学),五島プラネタリウム,多摩川園と能楽堂,五島美術館,東横ホール,Bunkamura,多摩川スピードウェイ,田園コロシアム…….
 すべてをじっくりと展覧し,そしてブログで紹介すると,気の遠くなるほどの時間とスペースが必要になる.
 興味と関心のある方は,ぜひとも砧公園へ! ちょっと足をのばして玉電砧線跡探索をセットにするのも一興かもしれない.
 会期は2月2日まで.まだまだ時間はある!
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出口では“ありがとうデヤ7200”のヘッドマークと“のるるん”がお見送り.
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そして最後の最後にはミュージアムショップが待ち受けている.2023年に限定刊行された東急100年史が,ここでなら,まだ購入可能である.クレジットカードも,使うことができる.

そうだ! 240頁に及ぶ立派な図録も用意されている.頒価は税込みで2,860円.

さらに,そうだ! 今度の土曜日日曜日,1月11日には14時から15時30分まで,レクチャー(2)“東急の車両設計に携わって”が開催される.講師は,僕たちにはおなじみの東急電車オーソリティ,荻原俊夫さん.当日先着順に受け付け.

※本文中にも記した通り,展示室の大部分は撮影禁止です.サインに充分注意してください.ここに掲載した写真は,取材用として事前に許可をいただいて撮影したものです.

※2025.01.10:荻原さんのレクチャー開催日,曜日を修正


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このところ毎年恒例となっている,元日の初詣と呑み初め(!?).
 昨年は豪徳寺参りと,北陸と栃木のお酒だった.

年明け早々,大地震と航空機事故と火災に見舞われた三が日だった.今年の日本は,いまのところ,おおむね平穏無事のようである.なんとかこのままずっと平和であってほしい.

さて昨日はどこへ行ったのかといえば,京王線小田急線から南へ下がって東横線.いや,東横線といえば去年のとりわけ後半には散々に通った路線である.その成果は,とれいん誌の1月号(おかげさまでの50周年記念号)で披露させていただいた.もうご覧いただいた方も多いだろう.
 だったらほかの沿線がよいんじゃないかと,一瞬だけ頭をよぎった.過ぎったけれど,次の瞬間には“でも,自由が丘に通ったといっても,駅の周辺の線路端をぐるっと回っただけじゃないか”とも思った.たしかに,氏神様である熊野神社も九品仏……浄真寺も,まった影すら見ていない.今日は電車を抜きにして自由が丘を訪問してみよう.
 最寄り駅に向けて出かけたのは,昼の12時半過ぎであった.
 やってきた電車は各停の元町・中華街行き5160編成だった.急ぐ旅でもなしということで,そのまま副都心線から東横線に入って…….
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降りてから続行の“F ライナー”を待っていたら姿を見せたのは西武6000系6115編成だった.画面左に見えるのが自由が丘デパート,サンリキ,ひかり街と続く自由が丘駅前(横というべきか?)ショッピングモール.
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続いて渋谷に向かう4106編成の和光市行き急行を見送る.列車の左に大きく掲げられている“サンリキ”の看板を撮りたかったのが,ようやく果たすことができた.

さて,改札を出て向かったのはほぼ真北にのびる道.ちょっと先を右に曲がれば熊野神社……のはずが,そこは裏手であった.なんのことはない,自由が丘デパートの前の通りを線路沿いに歩いて自由通り(自由が丘駅周辺に建てられている歴史看板には平成16/2004年に命名されたのだと受け取れる記述があるが,もっと昔から自由通りと呼んでいたような……)の踏切横で左に曲がればすぐ.であった.いかに,線路以外を眺めていなかったかが知れる“方向音痴”であった.
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地域の氏神様と思っていたら,いや実際そうなのだが,思いのほかに行列が,長かった.幸いにして快晴で風もなかったので,おとなしく待つことに.

近年は,“普通の”氏神様にも初詣の人々が訪れ(いや,僕もその一人ではあるのだけれど),思いもかけない混雑に遭遇する.江古田にある浅間神社だって,かつては正月でも静かだったのに,境内にある富士塚が話題になって以来,すごい行列のようである.

参道の途中には,自由が丘や緑が丘一帯の耕地整理を強力に推し進め,スムーズな東横線開通に寄与したという栗山久次郎翁の像が.像そのものは昭和12/1937年の建立で,その50年を記念したという顕彰碑が脇に寄り添っている.
 とれいん誌では5050系と1000系がテーマだったはずなのに,なんで地域のことにこだわるのかって?
 その理由は,もうちょっとお待ちいただければ理解していただけるだろう……いや,とれいん誌にはもう予告している.今月発売予定のレイルNo.133のメインテーマが“自由が丘”なのである.
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社殿.由来書きに拠れば,少なくとも寛政8/1796年までには建立されていたという.東京神社庁の紹介欄には鎌倉時代には存在したという意味の記述もあるが,実際には,よく判らないということのようである.

さて,次に向かったのが浄真寺.僕たちには九品仏という,余所者には難読の,でもそれが故に印象に残る大井町線の駅名で知られる存在.自由が丘駅の旧名が九品仏ということもあって,訪ねてみることにしたのだった.
 ということで最寄り駅は九品仏なのだが,自由が丘の駅に戻ってひと駅電車に乗るぐらいなら,散歩がてら歩いたって,たいしたことはない.このあたり一帯の起伏を身をもって体験することもできるし.もっともその場合には,近年では貴重となった(?)ドアカットを体験することはできないが.
 実際,元のトモエ学園横を通って東門まで,所要時間は15分ほどであった.
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本堂.でもこのお寺にお参りする際には,向かい合って建つ3棟の仏堂……下品堂,上品堂,中品堂に収められた9体の阿弥陀様の表情やしぐさをじっくりと鑑賞するのが肝要と思う.
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陽が西に傾いてくると冷えてきた.自由が丘駅前の喫茶店で暖をとってから改札を入ったら,もう5時前だった.どうやって家に戻ろうかと思案していたら,目の前を東武の9000系第2編成が回送で渋谷方面に向けて通過して行った.

続いて到着したのは急行の渋谷行き.副都心線に乗り換えようと思ったら,反対側のホームで待っていたのは,なんとその9102編成!小竹向原で有楽町線から姿を見せたのは東京地下鉄10000系.ということで,ついに西武電車に乗ることのない旅となった.

さて,これも恒例(?)の今年のお酒.なにしろ去年は春に岡山出雲,夏には大阪奈良,そして秋には再びの出雲信州上田福島を訪れた.いずれも忘れ難い体験をしたが,唯一,地元のお酒を買って帰ることができなかったのが上田.ということで,折りよく酒屋さんの棚で,僕を待ってくれていたのが,お目に掛ける“月吉野(つきよしの) 赤 辛口純米酒”.
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上田市中野にある若林醸造という酒蔵の純米酒.おだやかな,癖の少ない飲み味であった.

買い求めてから調べてみたら,上田電鉄中野駅が最寄り……ほとんど駅前で,主に地元産の米を使い,10年前には自前の麹を使っての醸造を復活……地道に酒造りに勤しむ小さな酒蔵だという.
 次に上田へ出かけたときには,時間を作って立ち寄ってみたくなった.
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“厄”が寄ってこないように,そして食べることに困らないようにとの願いを込めて,九品仏浄真寺でいただいた絵馬とお札.なにしろ今年の我が家は年男とと年女の2人暮らしだから

ということで始まった令和7年.今年はどこの,どんなできごとをお伝えできるだろうか.車輛では既に京成3200形,東武80000系,西武40000系8輛編成,阪急2000系,伊予鉄7000系が出来上がっている.近鉄の最新一般車は大阪線用のお目見えが間もなくだろう.そういえば東急8637編成は?

楽しみの種は尽きない.

どうぞ変わらずお引き立てくださいますよう,お願いします.


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とれいん2025年1月号は,もうご覧いただけただろうか.200頁を超す超特大号の,ほぼ全てが東急電車で埋め尽くされている.
 僕は例によってMODELERS FILEを担当したのだけれど,そのテーマは,西武池袋線沿線住民にもなじみ深い5050系と,9000系に次ぐ古参の存在となった1000系の各譲渡先での活躍振り.
 5050系は,実はこれまでも何度か扱おうと思ったことがある.でも,少なくとも母体となっている田園都市線の5000系を含めた全体としては,バリエーションが豊かでありすぎて,とても僕の手には負えない.では身近な存在である5050系に限れば……とは思うものの,断片的には観察しているものの,全体像はつかみきれない.
 そんな中,解説をお引き受けくださったのが金子智治さん.鉄道友の会の会報である“RAIL FAN”誌で東急電車の年次報告を続けておられるオーソリティである.
 そこに,本誌ならではの真横や屋根上写真,そして東急電鉄から提供していただいた資料などを組み合わせて,堂々32頁のMODELERS FILEに仕上がった次第.

もうひとつの1000系譲渡車は,実は東急電鉄に残る1000系のバリエーションを網羅して,各地に譲渡された車輛たちをトピックスとして採り上げる予定であった.
 ところが取材を始めてみたら,譲渡車のバリエーションがとても興味深い展開であることを再認識してしまい.主客転倒してしまったのである.
 そのようなことであるから,実際にはもっとも変化に富んでいるはずの伊賀鉄道へは取材にお邪魔することかなわずになってしまった.でも,いつも助けていただいている土屋隆司さんご撮影の写真と,かつて伊賀鉄道から提供してもらった写真で,なんとか,全ての編成を揃えることができた.

ということで,9月には手始めとして一畑電車を訪問することになった.
 この鉄道はC57やD51を追って山陰に通い詰めていたころ,何度か訪問したことがある.今は弘南鉄道にいるED222の牽く貨物列車も,かろうじて走行風景を捉えることができた.まだ電化当初の古豪が主力だった時代である.山陰から蒸機の煙が消えてからは足が遠のいてしまったけれど,京王電鉄の5000系が譲渡されて間もない頃に再訪している.
 でも,今回はそれ以来のことだから,ほぼ20年振りということになる.それにしても,273系取材でこの春に20年ぶりの再訪を果たした出雲に,同じ年の秋にまた旅することになろうとは,思いもよらぬことであった.

今は雲州平田という名前となった,かつての平田市の駅に到着したのは9月13日のお昼前.東急1000系や新造車7000系の投入の経緯など興味深いお話を聞かせていただいたあと,昼食をはさんで午後からの撮影取材が予定されていた.
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雲州平田の車庫は,建物などは記憶のままだけれど,居並ぶ電車は全て,初めての出会いである.
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検修庫の横の建屋にひっそりとたたずんでいたこの電車,デハニ53だけが,僕の知っている一畑電車だった.
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なにより目新しいのがこの電車,7000系である.JR四国7000系電車の車体をベースにしてオリジナル仕様の機器類を組み合わせた,模型的にいえば“キットメーキング”.とても素敵なアレンジであると,現車を見て再認識したことである.来年にはマイナーチェンジしてデュアルシートを備えた8000系もデビューする.
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雲州平田の車庫に欠かせない歴史的アクセサリー.蔦に覆われた煉瓦造りの給水塔である.当然のことながら電化前の施設だから,今は大井川鐵道の新金谷駅前にある“プラザロコ”に展示されている“いずも”も,この給水タンクから水を注がれていたわけである.感慨一入.

車庫での写真撮影は,線路を跨ぐ橋は数が少ないということで,屋根上はパンタグラフの点検台から撮影させていただくなど,みなさんの協力のおかげで無事に終了.その頃には,9月半ばの出雲だというのにジリジリと暑さを振りまいていた太陽も西に傾いていた.

そして翌日は沿線での撮影.ロケハンを兼ねて,松江しんじ湖温泉まで一往復……してる間にもうお昼.まだ降りたことのなかった一畑口でスイッチバックと廃線跡を,ちらっと観察.
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草むした線路敷きと古色蒼然の古レール製架線柱.それに対してダンパ式の架線張力調整装置のモダンさが絶妙の取り合わせ.画面奥が一畑薬師である.
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駆け足で川跡へ向かい.1000系の3並びを捕まえる.本文で何とか使いたかったのだけれど,限られたスペースでは,叶わなかった.
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そして,ずっと気になっていた川跡駅ホーム上屋の古レールを観察.年を経るに従って塗装が厚くて銘の確認が難しくなっている昨今だが,これは鮮明である.でも,ボーフム(BOCHUM) 1880年??? 明治13年である.

一畑軽便鉄道の最初の開業が大正2/1913年のことだから,自前の古レールであるはずがない.ではどこから持ってきたのか? 最初の機関車はコッペル製だから,ドイツ製品を扱っていた商社が古レールも輸入して供給?うむ.

ほかにも1906年とも読める銘もあったが,これも正体不明…….
 などと楽しく悩んでいるうちに,出雲市から乗るべき特急“やくも28号”の発車時刻が迫ってしまった.
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玉造温泉を過ぎて乃木までの間,ついさっきまでいた宍道湖の対岸を眺めていたら,後方から“またおいで”といわんばかりの日射しが…….


というところで,今年のブログはおしまい.1年間,ご愛読をありがとうございました.新しい年も,どうかご支援賜りますよう.
 皆様のもとに,平穏な新年が到来することを,心からお祈り申し上げます.



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参加規定は例年通り
“2024年12月31日23時55分から2025年1月1日0時05分までの最低10分間,鉄道模型を走らせながら年を越そう!”というものです.
ゲージ,運転方法は自由です.年をまたいで走らせた車輛,ゲージ,線路の形態を編集部宛に郵便, FAX,もしくは電子メールでレポートして下さい.写真も歓迎いたします.

画像点数が多い場合はCD-Rなどに記録してお送り下さい.デジタルデータでの応募要項の詳細, およびそれぞれのアドレスは,とれいん巻末の「各種募集のご案内」をご覧下さい.

 なお,皆様からお送り頂きましたレポートは弊社ウェブサイト「etrain.jp」 (http://www.etrain.jp)内の一コンテンツとして掲載させていただきたいと思いま す.つきましては,弊社ウェブサイトへの掲載の可否をお知らせ下さい.記入のない 場合はウェブ掲載させて頂きます.
 また,ウェブでは名前はイニシャルで掲載させて頂きます.ニックネームや本名希 望の際はその旨をご記入下さい.

是非この機会に思いきりご自慢の模型を走らせながら年越ししませんか!
 皆様からの楽しいレポートをお待ちしております!

●原稿の締切
2025年 1月24日(金)
(当日消印有効)

〒176-0012
東京都練馬区豊玉北 1-1-12
(株)エリエイ 月刊「とれいん」編集部
年越し運転報告 係 
FAX:03-3994-4811
E-mail:info●eriei.co.jp
※●印を@に変換してください.

※昨年(2023年→2024年)の年越し運転レポートは下記サイトよりご覧いただけます。

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