2022年の11月,東京のベイサイドエリア,豊洲の一角に明治の英国製蒸気機関車が姿を現わした.元鉄道院400形403,西武鉄道4号機関車である.
これは芝浦工業大学附属中学高等学校が開学100周年記念事業の一環として西武鉄道から譲り受け,整備保存したものである.
レイルNo.125では,この機関車の誕生から保存に至るまでの経歴と保存整備の模様を,丹念な記録と貴重な写真の数々とともに掲載した.
執筆は学校の100周年事業検討委員会.文責は“レイル”読者にはお馴染みの藤田吾郎さんである.
お披露目の日.この日の様子は,11月17日付のここでもご案内した.
当日は,絵に描いたような秋晴れで,保存場所の方角に起因する影の処理のみならず,大勢の来場者に囲まれていたため,式典の雰囲気を記録する写真撮影に専念したことである.その中で,背景の高層マンションと明治の機関車とのコントラストの妙を切り取ることができたカットを,表紙にした.
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“形式写真”撮影には,現場の様子から,薄日の日の午後が好適と考え,出直したのが3日後の午後だった.今さらながら,表紙写真の説明に記された11月15日という日付は間違いで,12日に訂正させていただく.
それにしても,いただいた稿に添えられた写真で驚いたのが,トップに大きく掲載された武蔵境駅での入換風景写真.
西武鉄道4号機が,元気よく貨車の入換作業に勤しむ姿を活写したこの写真,高架複々線化前の武蔵境駅の情景記録写真としても貴重な1カットと思う.昭和30/1955年前後の撮影で,撮影者は鈴木靖人さん.
鈴木靖人さんといえば,客車を中心とする車輛写真をたくさん撮っておられて,そちらの印象が強い読者も多いことだろう.けれど,うちの社の“形式シリーズ”をお持ちの方なら,迫力溢れる列車写真も少なからず撮影しておられるということを,ご存じだろう.
けれどそれにしても,こんなにのどけき風景をモノしておられたとは…….
修復中の写真は,僕がお願いして追加提供していただいた.
台枠を下から見上げた様子や煙室内部,側水槽の上面,先従輪のラジアル軸箱などは,整備が完了した今となっては,観察のしようがない.
キャブの床下.左右のシャフトはブレーキ軸.軸の中央に取り付けられたクランクには蒸気ブレーキのシリンダーが見える.こんなにはっきりと蒸気ブレーキのシリンダーを見たのは,僕は初めてかもしれない.写真:芝浦工業大学拡大附属中学高等学校100周年事業検討会
そして撮影者が不明でレイル編集部で所蔵している,昭和12/1937年の5号機の姿を収録した.ガラス乾板の状態が極めて悪く,この機会にデジタル化……も兼ねている.
北多磨駅で列車の先頭に立つ5号機.連結された客車は,本来は電車のクハ600形.彼岸輸送のために狩り出されていた.機関車も本来は川越機関庫の配置であり,応援のためにやってきたものである.昭和12/1937年3月18日 11時30分 写真所蔵:レイル編集部
このほか,西尾克三郎さんが組立暗箱で撮影の5号機も掲載した.それにしても西尾さんの写真,逆光なのにディテールがきっちりと描写されていて,とても敵わないと,改めて思うところである.
続くは同じ西武鉄道ながら,もと多摩湖鉄道の100周年を祝う,ふちい萬麗さんの稿.
数年以上前からお預かりしていたのだが,今回の5号機保存完成に合わせての掲載とさせていただいた.
綿密な調査と,地元の利を活かしての写真記録によって纏められたこの稿は,身近な鉄道路線の調査研究の大切さを,再認識させられる仕上がりである.
平成5/1993年1970年代前半の西武多摩湖線国分寺駅.まだ旧形国電が残っていた.先頭はクモハ371.現在は改札口へ続く通路に変貌している.写真:ふちい萬麗
この稿には,ごらんの払下国電のほか,西武鉄道プロパーの701系や101系など,昭和から平成に掛けて多摩湖線で活躍した電車が,ふんだんに出演する.西武山口線の井笠や頸城,台湾製糖のコッペルも,数え切れないほど登場している.歴史探究とは別に,懐旧の年に駆られる読者もあることだろう.
※稿の中で46頁下に掲載の2枚の写真について,説明と写真が入れ違ってしまった.4月発売のNo.126で正しい組み合わせを掲載の予定です.
そしてヒギンズさん.今回の解説は関田克孝さんにお願いした.
駿遠線を含む静岡鉄道各線を中心に,遠州鉄道,大井川鉄道,岳南鉄道,大雄山線を含む伊豆箱根鉄道,そして実際は神奈川県の鉄道ながら箱根登山鉄道,山梨県ながら富士急行も,今回の範囲に加わっている.
その中から1枚を選ぶのは至難の業だが,裏表紙には遠州鉄道秋葉線を登場させたので,ここでは静岡鉄道清水市内線の情景をお目に掛けることにしよう.
静岡清水線の新清水駅駅前.陸橋は東海道本線を乗り越す国道149号線の陸橋.電車は,モハ66だが,それより目を惹くのは大きな大きな大人用の自転車に“三角乗り”で挑もうとしている少年の姿である.新清水-仲浜町 昭和33/1958年8月 写真:J.W.HIGGINS
ということで,No.125は関東と静岡に特化された.
次は……まもなく予告が発表される通り,北陸に特化である.4月21日頃発売予定.乞うご期待!
これは芝浦工業大学附属中学高等学校が開学100周年記念事業の一環として西武鉄道から譲り受け,整備保存したものである.
レイルNo.125では,この機関車の誕生から保存に至るまでの経歴と保存整備の模様を,丹念な記録と貴重な写真の数々とともに掲載した.
執筆は学校の100周年事業検討委員会.文責は“レイル”読者にはお馴染みの藤田吾郎さんである.
お披露目の日.この日の様子は,11月17日付のここでもご案内した.
当日は,絵に描いたような秋晴れで,保存場所の方角に起因する影の処理のみならず,大勢の来場者に囲まれていたため,式典の雰囲気を記録する写真撮影に専念したことである.その中で,背景の高層マンションと明治の機関車とのコントラストの妙を切り取ることができたカットを,表紙にした.
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“形式写真”撮影には,現場の様子から,薄日の日の午後が好適と考え,出直したのが3日後の午後だった.今さらながら,表紙写真の説明に記された11月15日という日付は間違いで,12日に訂正させていただく.
それにしても,いただいた稿に添えられた写真で驚いたのが,トップに大きく掲載された武蔵境駅での入換風景写真.
西武鉄道4号機が,元気よく貨車の入換作業に勤しむ姿を活写したこの写真,高架複々線化前の武蔵境駅の情景記録写真としても貴重な1カットと思う.昭和30/1955年前後の撮影で,撮影者は鈴木靖人さん.
鈴木靖人さんといえば,客車を中心とする車輛写真をたくさん撮っておられて,そちらの印象が強い読者も多いことだろう.けれど,うちの社の“形式シリーズ”をお持ちの方なら,迫力溢れる列車写真も少なからず撮影しておられるということを,ご存じだろう.
けれどそれにしても,こんなにのどけき風景をモノしておられたとは…….
修復中の写真は,僕がお願いして追加提供していただいた.
台枠を下から見上げた様子や煙室内部,側水槽の上面,先従輪のラジアル軸箱などは,整備が完了した今となっては,観察のしようがない.
キャブの床下.左右のシャフトはブレーキ軸.軸の中央に取り付けられたクランクには蒸気ブレーキのシリンダーが見える.こんなにはっきりと蒸気ブレーキのシリンダーを見たのは,僕は初めてかもしれない.写真:芝浦工業大学拡大附属中学高等学校100周年事業検討会
そして撮影者が不明でレイル編集部で所蔵している,昭和12/1937年の5号機の姿を収録した.ガラス乾板の状態が極めて悪く,この機会にデジタル化……も兼ねている.
北多磨駅で列車の先頭に立つ5号機.連結された客車は,本来は電車のクハ600形.彼岸輸送のために狩り出されていた.機関車も本来は川越機関庫の配置であり,応援のためにやってきたものである.昭和12/1937年3月18日 11時30分 写真所蔵:レイル編集部
このほか,西尾克三郎さんが組立暗箱で撮影の5号機も掲載した.それにしても西尾さんの写真,逆光なのにディテールがきっちりと描写されていて,とても敵わないと,改めて思うところである.
続くは同じ西武鉄道ながら,もと多摩湖鉄道の100周年を祝う,ふちい萬麗さんの稿.
数年以上前からお預かりしていたのだが,今回の5号機保存完成に合わせての掲載とさせていただいた.
綿密な調査と,地元の利を活かしての写真記録によって纏められたこの稿は,身近な鉄道路線の調査研究の大切さを,再認識させられる仕上がりである.
この稿には,ごらんの払下国電のほか,西武鉄道プロパーの701系や101系など,昭和から平成に掛けて多摩湖線で活躍した電車が,ふんだんに出演する.西武山口線の井笠や頸城,台湾製糖のコッペルも,数え切れないほど登場している.歴史探究とは別に,懐旧の年に駆られる読者もあることだろう.
※稿の中で46頁下に掲載の2枚の写真について,説明と写真が入れ違ってしまった.4月発売のNo.126で正しい組み合わせを掲載の予定です.
そしてヒギンズさん.今回の解説は関田克孝さんにお願いした.
駿遠線を含む静岡鉄道各線を中心に,遠州鉄道,大井川鉄道,岳南鉄道,大雄山線を含む伊豆箱根鉄道,そして実際は神奈川県の鉄道ながら箱根登山鉄道,山梨県ながら富士急行も,今回の範囲に加わっている.
その中から1枚を選ぶのは至難の業だが,裏表紙には遠州鉄道秋葉線を登場させたので,ここでは静岡鉄道清水市内線の情景をお目に掛けることにしよう.
静岡清水線の新清水駅駅前.陸橋は東海道本線を乗り越す国道149号線の陸橋.電車は,モハ66だが,それより目を惹くのは大きな大きな大人用の自転車に“三角乗り”で挑もうとしている少年の姿である.新清水-仲浜町 昭和33/1958年8月 写真:J.W.HIGGINS
ということで,No.125は関東と静岡に特化された.
次は……まもなく予告が発表される通り,北陸に特化である.4月21日頃発売予定.乞うご期待!
※2023.03.23:西武多摩湖線国分寺駅撮影年代修正