小学館の“入門百科シリーズ”は昭和40~50年代生まれの人にはなじみ深いのではないでしょうか?図書館や小学校の図書室には必ず置いてあって、同級生たちも好きな分野の本を探して借りていました。私もよほど興味のないモノ以外はほぼ借りました。特にお気に入りがあれば、親にねだって本屋で買ってもらったものです。
その中でも特に好きだったのが、写真の7冊です。これらは残念ながら当時から持っていたものではありません。大人になってから懐かしくて購入したものです。私の母親は「おかあさん、捨てるの大好き!」が口癖で、私の宝物を容赦なく捨てました。おかげでNゲージ、ラジコン、プラモデル、漫画本、児童文庫等々、ほとんど残っていません・・・ っと、この恨み節はまた別の機会に。
さて、30代~40代前半の人には懐かしいであろう“入門シリーズ”ですが、今読んでも結構面白いです。この7冊は昔、布団の中でワクワクしながら読んだものですから、どの頁も記憶に残っています。ただし、書いてある内容はいい加減に覚えているものや、間違って覚えているものが多い。それがいま読めば、大人の知識で正確に理解できます。これがとても面白い!
また、編集者視点でも読めるので、「あ、ここ表現をあやふやにしてごまかしている」とか、「これはライターが暴走している」とか、「イラストレーターが内容を理解していない(笑)」とか、まぁツッコミどころもあって、それも面白いですね。しかし一方、どのように子供に理解させれば良いか苦労している跡も沢山あり、編集はさぞ、大変だったのではないでしょうか。当時はインターネットなんかありません。多くの子は好きな本を何度も何度も読み返しました。その本がきっかけで一生の趣味や仕事を決めた子もいると思います。責任重大です。大変な仕事ですよね。
最後に子供の頃好きだった頁、ベスト3を紹介したいと思います。どれも私に多大な影響を与えた頁です(笑)
第3位 『シリーズ53 鉄道なんでも入門』塚本雅啓 監修(小学館刊)
P7 “近郊用電車 -通勤・通学の足-”
鉄道ジャーナル編集部 塚本雅啓監修の入門本です。車輛の種類から、歴史、形式記号の付け方、鉄道ABCこれがいちばん(例:いちばん収入の多い駅、世界一の橋りょう等)が豊富な写真とイラストで解説されています。巻頭カラーの近郊用電車の頁は特にお気に入りでした。
第2位 『妖怪なんでも入門』水木しげる 著(小学館刊)
P58 “どろたぼう”
現代日本人の妖怪像を作り上げたといっても過言ではない水木しげる翁の名著です。私はふとんの中でこれを読んでは「こえ~、眠れね~」ページをペラっとめくり、「うわ、こえ~」と怯えていました。当然、そのあと母親に「いつまで起きてんだ!」と怒られるのですが・・・ その中でも特に怖かったのが、この“どろたぼう”。なまけものの子どものために、田んぼを売られた人の怨念が“どろたぼう”となって現れるらしい。「田んぼを返せ!田んぼを返せ!」うう、今でも怖い・・・
第1位 『まんが入門』赤塚不二夫 著(小学館刊)
P77 “デフォルメのしかたを覚えよう”
ギャグマンガのカリスマも入門シリーズに参加していたんです。故・赤塚氏の破天荒ぶりは誌面にもいかんなく発揮されており、読んでいる方が心配になるくらいです。特に面白いのがP77の“デフォルメのしかたを覚えよう”です。白目をむいてムンクの“叫び”のような表情をした男(たぶん、アジャパーでしょうが・・・)を、写実的なデッサンからマンガ表現へとデフォルメしていくさまを4ステップで紹介しています。4コマ目が一番大事なカットなのでしょうが、作者は絶対に1コマ目で笑わせようとしています。私も大爆笑したことを覚えています。いや、今でも爆笑ものですが・・・ 赤塚先生は偉大でした。