今から32年前の秋,一人でトルコ共和国を旅した.目的はもちろん鉄道,それもまだ現役で残っていた蒸気機関車を見に行くこと.
その時の
模様は,月刊だった時代の“レイル”の昭和54/1979年1月号と2月号に記しているから,記憶のある方もおられるかもしれない.実はつい先日も,京都
の大先輩であるSさんから“あんたのトルコでの話しを聞いてから,ずっと行きたかったんだけど,ようやく行ってきたよ”という嬉しいお話しもうかがった.
もっとも,Sさんの主目的は鉄道ではなかったようだが.
出かける前から戻ってくるまで,いろいろと,今では考えられない苦労をしながらの旅だったが,それもこれも,すべてはいい思い出.
現
地に到着後もなかなか本線を走る蒸気機関車に巡り合えず,ようやく捉まえたのがこの情景.古代遺跡エフェスのそばのセルチュクという駅からカムリクという
駅までの峠に,後補機を従えて挑むクルップ製1E1機.背後は古代のアヤスルック要塞跡.線路端を歩いているうちにみつけたポイント.数年後,同じ絵柄の
写真を,日本やドイツの本で見かけるようになった.1978-10-18
この時の旅でただ一つ心残りなのは,イスタンブール
の町を歩くことができなかったこと.最初の予定では,安全を期してイスタンブールに一泊してから,パキスタン航空のカラチ行きに乗るつもりをしていたのだ
が,セルチュクの風景があまりにもすばらしかったので,急遽予定を変更して現地泊を延長,イスタンブール空港での慌ただしい乗り換えとなったから.
“蒸気機関車は引退してしまうけど,アヤソフィアもトプカプもなくなりはしない”という負け惜しみのもとに,再訪を誓ったのだった.
しかし現実は,いまだにトルコの地を踏むことができないでいる.欧州への旅で立ち寄る空港や町中でトルコ航空の飛行機や営業所を見るたびに思いは募り,1987年に日本便が就航したときにも“こんどこそ”と思いはしたのだが.
ところがつい先日,“トルコ航空、レイルヨーロッパ、地球の歩き方が共同開発 個人旅行者のための「新プロジェクト」を発表”という案内が舞い込んだのだった.
なるほど,単なる乗り継ぎではなく,魅力たっぷりの町イスタンブールを楽しんでから欧州各地へ……というのがこのプランのコンセプト.
なるほど魅力的.現在,成田からの便はイスタンブールへの到着が夜だから,乗り継ぎを兼ねて宿泊し,トルコの香りに触れてから欧州各地へ旅立ってもらおうというわけである.
イスタンブールのホテルはもちろん,欧州での最初の一夜のホテル代も,料金に含まれているし,到着後,2日間のレールパスも,込み(1人での申し込みや26歳以上だと若干の追加が必要だが).
さてその料金.シーズンや曜日にもよるが,103,000円から153,000円という.
販売形態は,旅行業界の用語でいう“募集型企画旅行”.基本プランから自分好みへのアレンジも“手配旅行”として可能であるという.
そしてこのプランは,トルコ航空ではなく,旅行ガイドブック“地球の歩き方”が,ウェブサイト“欧州自由区”で展開する.大阪と新宿にある“旅プラザ”窓口でも相談に乗ってもらうことができる.
もうひとつ,僕たちにとって見逃せない魅力は,2日分だけではあるが欧州内の“レールパス”が料金に含まれていること.この部分は,本誌読者ならお馴染みの“レイルヨーロッパ”との提携で実現したという.
そしてさらにもうひとつ.それは,やはり旅行業界用語でいう“オープンジョー”対応であること.例えばイスタンブールからはヴィーンへ飛び,オーストリア
の最新特急に乗ってミュンヘンへ.イスタンブールからはミュンヘンからトルコ航空機で……ということも可能なのである.
今回のプランの関係3社代表.写真左からレイルヨーロッパの加々美恵理さん,トルコ航空東京支社支社長トゥーバ トプタン ヤブズさん,地球の歩き方の奥 健さん.
流暢な日本語を操るトゥーバ トプタン ヤブズさんに昔のことなどお話したところ,“1978年なんて,よくあの時代に一人でトルコを旅行されましたね”と.“イスタンブールを知らない?それはもったいない!ぜひぜひいらっしゃい!いいところよ”とも.
さて,僕の願いは,いつ叶うだろうか.