今週末は,10回目を迎えた夏の鉄道模型の祭典,JAMコンベンションである.僕も土曜日と日曜日には会場に詰めて,ライブスチームをはじめとする各方面の撮影取材である.併せて,この会場を訪問された顔なじみのお客様や旧友などに会うことができる,貴重なチャンスでもある.
さて,その寸前である8月18日に始まった表題の写真展.撮影者は高島史於(たかしま ふみお)さん.舞台と旅が主な守備範囲のフォトグラファー.2002年秋の西スイス方面プレストリップにご一緒したのが縁で,個人的にずっとお付き合い下さっている.しばしば写真展を催されるのが羨ましく,案内をいただくたびに,鑑賞と勉強のためにお邪魔している次第.
今回のテーマは,高島さんが広報大使に就任されている,韓国の仁川広域市の情景.仁川といえば,近頃は空港がオープンしたことで,一般にも名前が知られるようになったが,我々には水仁線というナロー路線の終点として馴染みぶかい.
写真展の構想を韓国文化院に説明したところ,“仁川と対になるような日本の情景を,ぜひ展示してほしい”という提案があり,ならば,と加えられたのが,高島さんが20年以上も撮り続けられてきた日本海の港町,射水市.射水といえば思い浮かぶのは,なんといっても富山地方鉄道の射水線.富山新港の建設によって東西に分断された上,東半分は30年も前に廃線となってしまったものの,西半分は加越能鉄道の高岡市内線として生き残り,今は“万葉線”の名前で近代化推進中であることは,みなさんご存じの通り.
とはいえ,今回の写真展のテーマは“鉄道”ではない.
“万葉線”の電車も情景の一部として登場はする.いわゆる鉄道好きの目とは異なった捉え方が新鮮.
会場は東京・四谷四丁目にある韓国文化院.今年春に新築されたばかり韓国大使館に併設のギャラリー.広い会場一杯に展開された120点の写真のうち,半分は仁川,半分が射水市を捉えた作品なのだが,共通点の多さに驚かされる.古くからの漁港に水揚げされる豊かな海産物,近年のダイナミックな造形の建築物,歴史的な趣きのある建物,表情豊かな人々…….それらのすべてが,高島さんの目を通してこの会場に繰り広げられている.
仁川の海から得られる魚介類が,実においしそうに撮影されていた.“目がお腹をすかして”とは,高島さんが初めて仁川を訪れた日の,最初の食事を撮影した写真に添えられたキャプション.実にいい言葉だ.
おいしさも美しさも画面から溢れ出ている数々の写真を見ているうちに,“韓国行きたい病”が,もしかしたら発症したかもしれない.KTXもセマウルも,消滅間近といわれる水仁線の廃線跡めぐりもよい.文化院の朴徳奎(パク トッキュ)さんによれば,最近は鉄道情景の撮影許可手続きも簡単になったというし.
とりあえずは,黄海の海の幸を味わうだけでもいいかもしれない…….
オープニングパーティーで“仁川訪問年”のタスキをかけて挨拶する高島史於さん.写真撮影に対する情熱は,僕などとても足下にも及ばない.
四谷での展示は8月22日まで.残念ながらあと2日しかない.けれど,射水市の作品は東京・有楽町のいきいき富山館で,9月9日から27日まで展示されるし,射水市では高周波文化ホールで9月20日から10月6日まで開催されることになっている.
注:ここに掲載した写真は,事前に許可を得て撮影したものです.