レールの輸送といえば,長物車に積み込んで機関車で牽引して作業現場まで輸送し,そこで取り卸して…というのが古今東西,変わりない通り相場であった.
 その常識が一変したのは,平成20/2008年春にJR東海が登場させたキヤ97系“気動車”.とれいん誌では,平成21/2009年2月号(通巻410号)で詳しく紹介しているが,両先頭車とレールを載せる長物車の一部にエンジンを搭載し,“動力分散式”としたのが特徴.また,ブレーキ扱いを機関車の自動ブレーキから電磁直通ブレーキとして,ふだんは機関車を運転することのない乗務員でも違和感なく乗務することができるようにした,ということも見逃せない特徴である.
 なぜ,そういうことになるかといえば,旅客会社では,夜行列車を中心とする客車列車は減少の一途.新たに,レール輸送などだけのために機関車を保有するのは効率が悪い.ましてや,JR東日本のEF510-500をのぞけば,すべての機関車が国鉄時代に製造されたものであるから,置き替えの必要性が高まっている…でも,需要は….
 ということで,実際,JR東海ではこのキヤ97系の導入によって,保有機関車をなくすことができたのである.
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4編成が製造された,定尺レール用のトップナンバー,キヤ97-1とキヤ97-101.平成20/2008-4-7 名古屋車両区 写真:前里 孝


ロングレール用は1セットのみ製作され,キヤ97-201と202,中間動力車のキヤ96-1~6と中間付随車キサヤ96-1~5があって,13輛編成を組む.
 外観の特徴は,レール積載部分の強度を確保するために,コンテナ車の台枠を天地反転させたような台枠.コンテナ車のような通常の魚腹構造では,エンジンなどを吊るスペースがない,ということからの採用.まさに“逆転の発想”ということができるだろう.

あれから10年.他のJRでもこの方式の採用が囁かれつつも,なかなか実体が明らかにならなかったのだけれど,一昨日,9月5日に,JR東日本が“東北地区へのレール輸送用新型気動車の投入について”というリリースを,定例の社長会見に際して発表したのだった.
 形式はキヤE195系.本文中に,はっきりと“東海旅客鉄道株式会社が開発し…”と明記されている通り,キヤ97系がベース,というより,読み進めていくうちに,ほとんどそのままであることが理解できる.製造は……公表されていないが,日本車両であることに,間違いはないだろう.
定尺編成図SSS
キヤ97-1+キヤ97-101と同等の25m定尺レール輸送用編成.1輛の全長は17.4m,全幅は2.93m,全高さは3.89mと発表されている.写真:JR東日本


最高速度は95km/h.キヤ97の110km/hより15km遅い.東海道本線を駆けなければならないキヤ97との違いだろうか.
 幅はキヤ97の2.8mに比べてわずかに広い.その差がどこに起因するのかは未発表である.
キヤE195ロングss
ロングレール用先頭車.レールの積み卸しのために運転室が櫓状になっているのもキヤ97-201・202と同じ.全長は17.4m,全幅は2.8m.全高さは4.80mと発表されている.全高さは4.08mではないだろうか…….写真:JR東日本

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キヤ96-6.床下は動力装置でギッシリ.黄色の太い角柱はエンジンの排気管.平成23/2011-2-19 西浜松 写真:前里 孝
ロング編成図SSS-02
ロングレール用の中間部分.こちらもキヤ97系とほぼ同じ仕様であるようだ.中央の車輛は付随車キサヤE194で,作業用の機器類を床上に設備している.写真:JR東日本


ロングレール用の編成は,
キヤE195+キサヤE194+キヤE194+キヤE194+キヤE194+キサヤE194+キヤE194+キヤE194+キヤE194+キサヤE194+キヤE195
の11輛.キヤ97系に比べて2輛少ないのは,キヤ97系が200mレール輸送を目的としているのに対して,キヤE195系では150mレールの輸送を目的としているからである.
 その他,キヤ97系と大きく異なってくるのが,耐寒装備.床下機器点検蓋の二重パッキン化などとされているが,どんな機器が,どんな形で装備されることになるのか.そしてさらに,基本的なところでは,エンジンなどはキヤ97系と同等なのか,あるいはJR東日本独自の形式となるのか.台車は完成予想図ではC-DT66やC-TR254と同じように見えるのだけれど……興味津々.

さて,このキヤE195系.まずは量産先行車としてロングレール用を1編成と,定尺レール用1編成を製造するという.時期は2017年冬以降.地域は仙台を中心とする東北地区との発表.
 そこから類推すると,現車は秋のうちに落成することだろう.配置は,仙台地区で気動車を擁するのは小牛田だから,多分,小牛田ということになる.

そして…これが実用化された暁には,残り少なくなったED75の命運が…….当然のことながら,多くのDE10も,運命を共にすることになるのだろう.行方を見守りたいものである.

※2017.09.08:編成一部修正
※2017.09.15:ED75の残数訂正