※報道公開のプログラムが盛り沢山だったので,いつもの約倍の長さです.ご注意ください.

昨日の午前,相模鉄道20000系電車の報道公開が催された.生憎の天候ではあったが,たくさんのTV局を含めて,大勢の報道陣が同社のかしわ台車両センターに馳せ参じた.
 最初は検修庫内でのプレゼンテーション.関根雅人車両課長から,この電車の特徴が詳しく語られた.
A8D_0095
新型車紹介中の関根雅人車両課長.日立製作所笠戸での製作状況から甲種輸送列車で厚木,かしわ台へ到着するまでのドキュメンタリーから始まり,その後,各部の特徴説明へと移った.

A8A_0134
続いて検修庫前で現車のお目見え.案内役は滝澤秀之代表取締役社長と,相模鉄道のマスコットキャラクター“そうにゃん”.
車輛の詳しい観察は,かしわ台車両センターから厚木操車場に会場を移しての実施だった.このブログの読者には,既に昨年11月16日に“相模鉄道20000系 いま”としてお伝えしているから,ご存じの場所である.
A8A_0276
海老名方から見た編成全景.アルミやステンレスの無塗装が主流を占める関東の私鉄にあって,全面塗装,それもこれほど濃い色を使っているというのは異例ともいえるデザインポリシーといえる.ちなみに行先・列車種別表示装置は前面も側面も1/1,000秒でも文字欠けが出ない優れもの.


では,プレゼンテーションや配布資料から,この電車の概要をお伝えしよう.

まず構体断面から.想定されている乗り入れ先が東急電鉄の東横線と目黒ということで,最も小さい目黒線に準拠,その結果車体幅は2,770㎜.レール上面から屋根頂部までが3,625㎜,最大高さは空調装置頂部までで,4,065㎜.全長は先頭車が20,470㎜で中間車が20,000㎜.車体側面は,いわゆる裾絞りのないストレートとなった.
 東急線への乗り入れのためには,前面に非常用の貫通路が必要となるわけだが,これは車掌側にオフセットして設置した.運転室の機器配置は,相鉄線内と東急線とで異なる部分があるので,例えばマスコン・ブレーキハンドルは両手操作式T形を採用している.

車体の基本的構造は,日立製作所の“A-Train”を採用したアルミ合金によるダブルスキン構造,接合は摩擦撹拌接合を採用.
 車体本体に標準設計を採用した分,内装と前面形状のデザインに力を注いだという.
 前面はこれまでにない造形を実現するためにコンピューターを最大限活用した三次元削り出しからプレス,そして手作業による叩き出しまで駆使している.最大の特徴は前面の曲面ガラスと印象的なライトケースなどによって,優美なデザインを実現し,貫通扉の存在を感じさせない仕上がりを得ている.

走り装置は,主制御装置が日立製1C-4M方式インバータ制御,主電動機は全密閉タイプの三相かご形で定格出力190kW.継手はTD継手式.電動空気圧縮機は形式からクノール製と知れる.情報伝達方式はイーサネット方式のSynaptra…ちょっと聞き慣れない名前だ.新方式だろうか.
A8A_0217
客室全景.空調装置の風洞を工夫して中央部を高くした独特のデザイン.ラインフローファンを枕木方向に配した辺りは,東京地下鉄10000系や西武鉄道30000系など,同じ日立製電車との共通性がある.腰掛や袖仕切りは標準設計品にこだわらない独自デザインを採用し,個性を演出している.


客室デザインは,そもそも色遣いをグレー系に統一したのが大胆だし,照明は時間帯によって昼光色や電球色に変化させつつ運転する.各部にガラスや金属を採用しているのも特徴.車体幅が相模鉄道標準タイプより狭いのをフォローするように務められている.
 そうそう,客室壁面には,9000系以来の復活となる,鏡が取り付けられた.沿線の人にとっては,相鉄電車に欠かせないアクセサリーだと再認識して採用なのだという.
 車椅子スペースや優先席は全車に設置.優先席は山側と海側とで座面の高さを変えて,乗客の体格に応じて選択できるような工夫もある.
 暑い時や寒い時に側扉の開閉を選択できるよう,個別ドアスイッチも採用された.
 天井には枕木方向に広告用の液晶画面を設置している.
DSCN7155
昨日は運転室の公開はなかったが,仕切窓から垣間見た機器配置をお目にかけよう.マスコン・ブレーキはT字の両手操作式.


この日の報道公開は電車だけではなくて,この電車が走るべき新しい路線についてのガイドも含まれていた.新路線のキーポイントとなる新駅“羽沢横浜国大前”である.
 関東地方の読者なら,駅の名前からその位置を連想される方も少なくないかもしれない.東海道貨物線の途中にある横浜羽沢駅に隣接しているのである.
 相鉄線の西谷(にしや)からこの駅まで約2.7キロ.ここから約10キロで東横線の日吉に達し,途中には新横浜駅も設けられることになっている.
MAP
相模鉄道と東急電鉄とJR東日本の三者が関係する新線路線地図.提供:相模鉄道

DSCN7184
横浜羽沢駅の真ん中に架かる陸橋から西谷方を見る.左端が東海道貨物線,通路を挟んで右が羽沢横浜国大駅の駅舎.

DSCN7186
振り返って東京方を見る.横浜羽沢駅の外れ付近で東海道貨物線から離れて新線は新横浜を経由,日吉で東急線と合流することになる.開業予定は平成34年度(というのは存在し得ないことが確定しているが)下期であるという.今から4年後のことである.
 東横線からその先,どこまで行くことになるのか…….夢は副都心線経由で東武東上線や西武池袋線へということになるわけだが.


地図から読み取ることができる通り,羽沢横浜国大駅の東京方では,東海道貨物線に合流する線路も敷かれる.列車は新鶴見…新川崎から大崎へと向かい,埼京線へ乗り入れることになる.開業予定は平成31年下期というから,もうあと2年を切っている.
 むしろ,こちらの方が開業予定が早い.どうするのか?
 20000系を使う?? 答は“否”.車両限界も東急線とは大きく異なっているので,別形式車…12000系か?…が製造されることになっている.それではなぜ20000系がこんなに早く製造されたのか.
 それは,これまでの相鉄線電車とは規格が大きく異なるため,さまざまな検証を行なう必要があることから,先行したということである.併せて,7000系電車1編成をこの電車で置き替える旨が発表されている.
 そしてこの20000系電車は2月11日から営業運転を開始する予定.その後,量産に向けての熟成が進められることになる.

JRへの直通電車は,では相鉄10000系や11000系,はたまたJR東日本E235系のバリエーション展開となるのだろうか…….夢は膨らむばかり.