2月19日,東京地下鉄の広報からメディアツアーのお誘いがあって,同社の深川車両基地で一日“遊んで”きた.
 その趣旨は,車輛の基地の仕事を報道関係者に公開して,広く一般の人々に,ふだん目にする機会が少ない“鉄道の仕事”を理解してもらおう…….ということだと思う.
 だから,“遊んで”とはいうものの,朝9時からお昼を挟んで夕刻まで,スケジュールはびっしりと詰まっていた.
 盛り沢山のメニューすべてを,このブログで紹介するのはいささか荷が重い.そこで,今回は,この日に体験できたことを,朝から夕方まで,順にご紹介.さらなるエピソードや感想などは,また次のお楽しみということにしたい.

ちなみに深川車両基地.車両管理所と深川工場,深川検車区を含んだ施設の名称である.用地面積は86,860平方メートル.管理所と工場の建物面積が13,968平方メートル,検車区の建物面積が6,155平方メートルとのことである.留置能力は行徳分室の130輛を合わせて430輛.
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最初は車体洗浄風景の観察.洗車線にやってきたのは,15000系第2編成.この日は10輛全部の内装と,西船橋方5輛の外装の洗浄が行なわれた.


西船橋方といったって,光の当たり方が逆じゃないかと思ったそこの貴方は,鋭い.でも,これで正しいのである.なぜならばこの深川車両基地は,東陽町駅の東側で本線から分岐して,右回りでぐるっと180度回転したところにあるのだから.レイルのNo.83をお持ちならば,その5頁に地図が掲載されているので,ご覧いただきたい.
 レイルで東京地下鉄を取り扱ったことがあったっけ?と思った貴方も,正しい.直接的には“昭和50年代の越中島貨物線”がこの時のテーマであって,地下鉄の車輛基地は,その隣に位置していたから,地図に記されているというわけである.
 そういえばこの見学の日にも,遠くから機関車の気笛が聞こえてたような気がする.現在はレールセンターとなっている貨物駅に列車がやってきたのだろうか.

閑話休題.一行が次に向かった先は,昨年落成したばかりだという真新しい検査建屋へ.
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冷暖房完備の新検査建屋で僕たちを待ち受けていたのは,月検査中の15000系第8編成.


月検査とは,3ヵ月を超えない期間での在姿状態での検査のこと.それより短い10日以内ごとの検査が列車検査略して“列検”.このふたつが検車区でのお仕事.
 4年を超えない機関または60万キロ以内に実施されるのが重要部検査.その次は8年以内に行なわれる全般検査ということになる.このふたつは工場でのお仕事となる.

で,工場へ…の前に,車内広告の付け替え作業を見学.向かった先には07系第5編成が.かつては有楽町線から西武池袋線に乗り入れてきて,よくお世話になった電車.久し振りに間近で見ることができた.

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時には折り返し待ちの電車車内で見かける光景ではあるが,両手にポスターをもって,一気に両面2枚ずつ取り替えてしまう技には,常に感心されられてしまう.



午後一番の見学は,腰掛座面と背摺りの取り外し作業.車外へ運び出されたシートは別の場所で丁寧に洗浄される.
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その取り外し光景.これも実に手際よい作業で,あっという間にシートはフレームだけになる.


そしていよいよ,この日のハイライト,車体職場での“台抜き”.“台”ってなんだろうと思ったら,それは台車のことであった.車体上げと呼ぶ工場もあるようで,このあたりの呼び方も,各鉄道会社にアンケートをとってみたら,興味深い結果が出るかもしれない…….
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定位置についた15000系第6編成の1号車.2基の15t天井走行クレーンで吊り上げ,隣りの作業スペースへ移動する.

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ウマの上に載ったら,この深川工場で検査修繕する部品と,他の場所…例えば千住工場で検査修繕する部品に振り分けて順番に機器を取り外す.


作業が完了し,定められた位置にクレーンがきっちりと片付けられる.一日の終わりである.汗と埃にまみれた身体を綺麗にする場所が,工場にはちゃんと用意されている.
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それが,ここ.終業後の僅かな時間帯に大勢が入浴する必要があるものだから,このような広さが必要になるわけである…….


というところで,僕たちも快い疲れとともに,深川をあとにしたのであった.
※2018.02.26:留置能力数訂正