東武鉄道の地下鉄日比谷線乗入れ用20000系列電車が70000系に置き替えられるというのは,とれいん本誌の2015年8月号(通巻488号)MODELERS FILE“東武20000系列に迫る”や,昨年4月7日のここでの“東武鉄道70000系電車 お披露目”などでお伝えしているから,ご存じの方も多いと思う.
 それで,注目されていたのが,その20000系列の去就について.
 本誌の6月号“いちぶんのいち情報室”で,その計画概要をお伝えしたが,今日の午前中,南栗橋車両管区春日部支所(かつての春日部電車区)で報道関係者向けのお披露目が行なわれ,その詳細が明らかになった.
 配布資料によれば,20000系列の両先頭車と中間電動車を活用した4輛編成で,ワンマン運転に対応するだけではなく,内外装を一新している.

車体前面と窓下には“SL大樹”のイメージカラーである濃紺色のラインに黄色を組み合わせてほどよいコントラストを持たせている.扉位置の視認性向上を兼ねて黄色のストライプを戸袋部に配している.
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きょう公開されたのは,浅草方先頭車がクハ21422の編成だった.両先頭車が20000型,中間がインバータ制御の20070型という組み合わせである.

この20400型は,種車によって4種類が登場することになっている.最初は4輛全部がインバータ制御の3扉車である20070型を元にした20410,次が,中間がインバータ制御の3扉車で先頭がチョッパ制御だった20000型3扉車の組み合わせである20420.3番目は,5扉車組み込みの先頭車と中間車を使った20430.そして最後がチョッパ制御編成の20000型先頭車とインバータ制御の3扉編成だった20050型の中間車を使った20440.
 5扉車編成といっても,活用される中間車は3扉仕様だから問題ないとして,先頭車は5扉のまま使うのだろうか……いの一番に質問してみたら,
“内装は,ちょっと見には側扉がなかったような仕上げを行ないますし,外観的にも,元の扉を残すようなことはせず,扉部全体を塞いだ上で側窓を新設します”とのことだった.なにしろステンレス鋼製車体だから,鋼製車体の改造のように完全に埋めこむようなことは難しいだろうが,どんな見栄えになるのか,大いに楽しみである.

編成は,浅草方からクハ21400+モハ22400+モハ23400+クハ24400で,種車によって十の位の数字が1から4まで割り当てられる.0は存在しない.

主要機器であるインバータ主制御装置は,オーバーホールなどは行なっているものの,基本的にはそのまま使われる.補助電源装置(SIV)も同様である.
 両先頭車には電動空気圧縮機が新設されている.
 パンタグラフは浅草方から2輛めの22400系式に搭載…主制御装置もこの車輛に取り付け…ているが,数は1基から2基に増えている.
 もうひとつ,車輛情報制御装置として日立製のSynaptraを採用しているのが,新しい.

車体回りでは前照燈がコイト電工製の花形LEDタイプに取り替えられている.ケースの枠も新品である.
 行先・列車種別表示装置はフルカラーLEDとなった.コイト電工製のセレクトカラータイプを使っており,少なくとも1/500秒程度のシャッター速度では文字が欠けることはない.
 接客設備としては,東武初の個別ドア開閉スイッチを採用しているのが特筆される.車内情報表示装置は液晶に交換された.そのほか内張りや床材,腰掛けなども一新されている.デザインは最新の70000系がベースであるとのこと.
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客室全景.内張りや腰掛が一新されていて,まるで新車を見るようである.照明は蛍光燈のままだが,これも別メニューでのLED化は検討されているとのことである.画面左側の側扉横にはドア個別開閉スイッチが見える.

そして運転室.ワンマン対応機器の新設は当然のこととして,運転台のコンソール全体を一新して,さらにブレーキ・マスコンハンドルを横軸の左手操作式に変更している.まるで新車である.
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クハ24422の運転室.すべてが新しい.ハンドルは左手操作式のL形になり,メーターナセルは新調である.右手のモニターには,日立製の車輛情報制御装置であるSynaptraの内容が表示される.
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4号車,クハ21422の車内銘板.昭和63/1988年アルナ工機の新造銘板に,改造銘板が加わった.今回の工事は日立製作所と津覇車輌のコンビで実施され,銘板にも両社の名前が記されている.ちなみに,この編成の中間車は平成9/1997年の東急車輛製である.

営業運転開始は今年9月からの予定である.当面の使用線区は宇都宮線.配置が南栗橋の本区なので,南栗橋と新栃木の間でも営業運転が行なわれる.
 そして,最初に記した4つのバージョンすべてが,今年度に落成する予定の6編成に含まれることになっている.
 待ち遠しいことである.

※“型”,“系列”.“系式”などの言葉は原則として配布資料の表記に従った.

※2018.07.21:一部語句修正