一昨年の汽車会社製蒸気機関車230形233,昨年の東京地下鉄道1001と鉄道院ナデ6141に続き,今年の3月に新たな国重要文化財としてED4010とED161を指定するよう答申があった.
 蒸気機関車,電車に続いて電気機関車というわけである.いずれも国産車というところに意義があり,喜ばしいことだと思う次第.
 この号では,小野田滋さんにそのED40形とED16形について,指定への意義や来歴などを解説していただくつもりで進めていたのだが,小野田さんから,“それぞれについてより詳しく解説したい”とのご提案があり,このNo.107では,ED40の新造から鉄道省時代の状況解説に絞り込んでの稿をいただくことになった.ED40については,今までほとんど公開されることのなかった,大宮工場での落成時の写真や横川での活躍中の姿などを存分に,しかもできるだけ大きなサイズで掲載することによって,隅々まで知っていただくことができたものと思う.
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新造時の大宮工場で撮影されたと思われる写真のうちの1枚.機械室の扉を全部開いた姿は,なかなかお目に掛かることができなかったものである.画面一面に存在する斑点は,印画紙のキズではなく,原板に生じた瑕あるいは染みの類ではないかと思う.これを除去するのは困難至極であり,またオリジナリティを失う危険が高いので断念し,あえてそのままお目にかけている次第.写真:鉄道院 所蔵:レイル編集部

ということで,解説はED40に特化することになったけれど,ED16についても,落成から第2次世界大戦中までの鉄道省時代の姿を,解説に先がけてお目に掛けることにした.西尾克三郎さんが撮影された,八王子での形式写真や上越線で列車を牽いて活躍する姿など,こちらもED40に負けないぐらいの迫力たっぷりのグラフ構成として,その功績を称えることにしたのだった.
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第七利根川橋梁を渡る上越線上り旅客列車.列車が通過し終わったところの踏切の向こうに見える道路橋が,トラス橋であることには気づいていて,編集中に“もしや”とは思ったものである.そうしたら,発売後すぐに“あれは…”とご指摘をいただいた.その顛末については10月発売予定のNo.108のお楽しみ…….湯檜曽-水上 昭和11/1936年8月14日 写真:西尾克三郎

ED40もED16も,昭和30年代以降の大阪育ちである僕には縁の薄い機関車だった.でも,近所の模型店に飾ってあった鉄道模型社のED16を眺め続けていた記憶はある.
 東京に住むようになってすぐに出掛けたのは五日市線.鉄橋を渡る貨物列車を撮影した記憶がある.後に,西国立の駅のホームから機関区が一望できることを知って,休日に組立暗箱を担いで出掛けた記憶もある.でも,青梅線を走るED16の姿は,ついに記録しないままに終わってしまった.
 そのあたりは,次の次であるNo.109でのお楽しみ……

さて,今年は青函トンネル開通30周年の年だった.同時に瀬戸大橋も30周年だった.青函トンネルは新幹線開業のこともあって一般のTVなどでも採り上げた番組があったが,瀬戸大橋については…少なくとも関東では…地味な扱いに終始したように思う.そこで,ということでもないのだが,岡山在住の西 和之さんから寄せられた,構想段階の瀬戸大橋の図面や工事中の状況をご紹介した.
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223系“マリンライナー”が駈ける瀬戸大橋近影.西さんが写真撮影にも並々ならぬセンスをお持ちであることはレイルNo.88“高梁川をめぐる鉄道”でも披露されているから,レイル読者なら既にご存じのことであろう.平成30/2018年4月19日 写真:西 和之

続いては,かつて汽車会社に勤務されていた冨家正方さんが,高田 寛さんに宛てて出された手紙のご紹介.レイルNo.106“誕生から50年のEF66・EF90”を読んだ高田さんが“そういえば”ということで寄せてくださったものである.あの独特のデザインの成立過程の一端が,このお手紙から明らかになった.冨家さんが汽車会社に入社して最初の仕事だったという,南海電鉄C10000を片上鉄道C13に改造する話も興味深い.それにちなんで,C13の改造落成写真をお目に掛けている.カウキャッチャー付きの姿は珍しいだろう.

最後は回を重ねて第10回となった,公式写真に見る国鉄客車.10回目ということで,今回のテーマは10系客車.オロネ10やナハ10など,僕たちの年代には全国各地の急行に組み込まれていた晴れの姿が懐かしい顔触れが勢揃いしている.
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10系客車の花,オロネ10.デッキの開戸を折り戸に改造すれば20系に…なると思った若かりし頃の僕である.写真所蔵:レイル編集部

ということで,早くも発売から2ヵ月が経過したレイルNo.107のご紹介だった.10月発売予定のNo.108も作業は大詰めを迎えている.引き続いてご愛顧のほど,よろしくお願いします.